第3巻第4号                    1990/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  あけましておめでとうございます。本年もどうぞDOHCをご愛読下さい。今世紀もあと10年(正確には今年を含めてあと11年)となりました。今世紀中に、まだあと1000冊も本が読めます。何事もなく無事に21世紀が迎えられますように。
 さて、1988年、89年に倣って、前の年に読んだ本の中で一番印象に残ったBEST1を探してみたのですが、「この一冊」というものは見あたりませんでした。そこで、1980年代のBEST1を選ぶことにしました。(毎年の年頭号で The Man of The Yearを選んで表紙にしているアメリカのTime誌も、今年は The Man of The Decade としてゴルバチョフ書記長を選んでいました。)

【1980年代の1冊】 

広瀬 隆『危険な話:チェルノブイリと日本の運命』

1987刊、八月書館、\1600


 (1)チェルノブイリでの原発事故はソ連製の旧式な原発のずさんな管理が原因であると報道されてきたが、実は安全とされているアメリカや日本の原発と同じ安全装置が使われていたこと。(2)チェルノブイリの事故は不当に過小に報道されており、また、事故の被害はむしろこれから大きくなるということ。(3)日本の原発は実は極めて危険な状態に置かれていて、チェルノブイリ級の事故が、明日起こっても不思議ではないこと。そして、38基もある日本の原発のどれが事故を起こしても、チェルノブイリでの被害範囲から考えて、日本全土が汚染されること。(4)ジャーナリズムをも支配している原子力産業大資本が原発の危険性を隠ぺいし、危険性を知りつつ原子力利用を推進していること。の4点について、豊富な資料の裏付けにより、分かりやすく検証がなされています。
  自分と子どもの人生、社会構造と個人、巨大資本とジャーナリズム、ノンフィクションの魅力、環境保護、そして、疑問を持って生きることの必要性など、本当にいろいろと考えさせる本でした。一言で言って、「私の人生を変えた1冊でした。」
 『危険な話』は、1989年には文庫化(新潮文庫『新版:危険な話』\440)されました。また、コミックボックス編『図説:危険な話』(フュージョンプロダクト刊、\1236)という漫画版もあります。まだ、どれも読んでない人には、文庫の『新版:危険な話』を心からおススメします。
 ちなみに、1970年代のBEST1は、R.ドーキンス『生物=生存機械論』(日高敏隆ほか訳、紀伊国屋書店、\2300)です。これも私の生き方を変えた本でした。                    (守 一雄)

【広告】(買ってネ) 

ジョンソン=レアード著『心のシミュレーション』

(海保・中溝・横山・守訳、新曜社、1989刊、\4500)


 出版社や共訳者とケンカしながら訳した本です。ぜひご覧下さい。
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html化1996.5.18