第2巻第4号                    1989/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]



 あけましておめでとうございます。本年もどうぞDOHCをご愛読下さい。
 1988年に読んだ本の中でBEST1は何だろうかと考えてみたのですが、「この一冊」というものは見あたりませんでした。それでも、1988年に読んだ108冊のうち、原子力発電に関するものが29冊(27%)と圧倒的でしたから、私にとって、1988年は「原子力発電について読んだ年」であったことは確かです。このきっかけとなった本は、一昨年に読んだ広瀬隆の『危険な話』(八月書館、\1600)でした。そこで、昨年1月のDOHCで1987年のBEST1として紹介しているのですが、あえて2年続けてBEST1とする次第です。まだ読んでない人には、是非読むことを勧めます。村上春樹『ノルウェイの森』や吉本ばなな『キッチン』より、はるかにお奨めです。                    (守 一雄)

【書評】  

石 弘之『地球環境報告』

岩波新書\530


  昨年のトロント・サミットでの「地球環境問題」の提起以来、「二酸化炭素による地球の温暖化」「地球の砂漠化」「酸性雨」「オゾン層の破壊」などがマスコミなどでも広く取り上げられるようになりました。この本では、私たちの住む、かけがえの無い地球「ガイア」が、もうすでに危機的な状況にあることが、分かりやすい語り口で淡々と語られています。とても良い本だと思います。
 ただし、一つ気になることがあります。地球の環境汚染や生態系破壊について詳細に取り上げた本であるにも関わらず、「放射能汚染」「原子力発電」については、奇妙なほど言及がなされず、「あとがき」においてわずかに一言触れているだけなのです。世界的な規模で反原発運動が広がった昨年、日本の原子力白書は「原子力発電が地球の温暖化や酸性雨の原因を作らないクリーンなエネルギーであること」を強調しました。まるで、本書は、この原子力白書を正当づける「背景づくり」をしているかのようなのです。
 最近2冊組で出版された岩波新書『チェルノブイリ』も、原子力推進派の医師によって書かれたものです。そして、訳者の吉本晋一郎氏は、石弘之氏と同じ朝日新聞の編集委員です。「良識派」とされていた岩波書店や朝日新聞社までが原子力シンジケートに「汚染」されていると考えるのは、広瀬隆の本の読みすぎでしょうか?
 ちなみに、火力発電所からでる二酸化炭素を「悪者」にして、原子力発電所からでる放射性廃棄物(「死の灰」)には「目をつぶる」ことが誤りであることは明白です。二酸化炭素それ自体は毒ではないからです。作りすぎないように注意をしたり、植林を進めたりすることにより、人間の英知で「二酸化炭素問題」は解決可能です。しかし、「死の灰」の毒性を減ずることは人間の力では不可能です。死の灰が「(実質的に)無害」になるまでには、何十万年という気の遠くなるような長い時間がかかります。たった1基の原子力発電所が、地球の全人口50億人の致死量の何倍にもあたる量の「死の灰」を毎日作りだしているという事実をあなたは知っていましたか? (守 一雄)
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html化1996.8.26