第19巻第4号                         2006/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)

 新年あけましておめでとうございます。今年もDOHCをどうぞよろしくお願いします。
 昨年の個人的3大ニュースのトップは「あのElizabeth Loftusとシンポジウム」でした。この国際シンポジウムを企画・司会したのは1月早々でしたので、丸1年前ということになりました。5月にはアメリカの心理学会(APS)に現職教員の元大学院生を連れて行きました。そして、50歳を越えてから一念発起して始めた国際誌への論文投稿も、やっと実を結び始め、昨年は3件が公刊され、2件が採択になりました。
 研究の方は順調でしたが、このDOHC月報は発行の遅れが常態化し、今月も遅配です。

 
(c)日経BP社/アスペクト


【これは絶対面白い】

ジョン・バッテル(中谷和男訳)『ザ・サーチ』

日経BP社(\1,890)


ジェフ・ルート/佐々木俊尚『検索エンジン戦争』

アスペクト(\1,575)


 どちらの本もGoogleの話である。「ググる(=Googleで検索して調べる)」という日本語が普通に使われるほどになってしまったこの検索エンジンも日本に登場したのは1999年だったそうだから、まだ7年しか経っていないのだ。こんな便利なものを誰がどうやって作ったのか?なぜ、ただで使えるのか?それこそググってみれば何万ページもの情報が得られるのだが、それでもまとめて読むためには本の方がありがたい。『ザ・サーチ』の方はGoogle誕生から現在、そして将来を展望したもので翻訳書、『検索エンジン』の方は国内のこの業界人による解説で、用語説明も多くわかりやすい。

 Googleに「自分の名前を入れて検索してみる」ことを「見栄の検索(vanity search)」と呼ぶそうで、有名な世論調査によると利用者の4割がやっているという(『ザ・サーチ』p.46の「検索の40%は見栄の検索」というのは誤訳である)。「Vanity」という言葉には「空虚な」「無意味な」という意味もあり、「知らないことについて調べる」という検索の本来の意味から考えると、誰よりもよく知っているはずの自分自身について検索するのは確かに「無意味」なことのように思える。

 しかし、実はそうではない。「見栄の検索」には少なくとも2つの意味がある。一つ目は、自分ではわからない「客観的自己」がわかることである。「自分が他人からはどう見られているのか」がわかる。これは今のようなガラスでできた鏡がなかった大昔に、初めて鏡が発明されたことに匹敵する大発明だと思う。

 「見栄の検索」の2つ目の意味は、これを通して有名度が測定できることだろう。年末年始は雪に閉じこめられて閑だったので、「Googleで見栄の検索をしたときに一番多くのページがヒットする世界一の有名人」は誰だろうと思い、いろいろな人名で試してみた。(さあ、いったい誰でしょう?答えはここをクリック【世界一の有名人】

 有名度を測定する検索には、「“自動車”という検索キーで検索したときに、一番最初にリストされるのはどこのページか」というものも考えられる。実際にやってみたら、答は「トヨタ自動車」だった。これこそが、検索エンジンがビジネスの世界からもっとも注目される理由である。何か特定の商品を購入しようとする消費者(=潜在的購買者)が検索したときに、トップにリストアップされることは商品の購入につながる可能性が極めて高いことを意味するからである。(「大学」では「早稲田大学」、「教育学部」では「岡山大学教育学部」だが、「心理臨床専攻」ならウチがトップにくるぞ。受験生よろしく)

 そこで「どうすれば検索結果の上位にリストアップされるようになるか」を調べて、戦略を練るSEO(Search Engine Optimization)ということがビジネスになる。本によれば、検索エンジンの登場した当初はこのSEOの攻勢のために、検索結果の上位がポルノサイトで埋め尽くされてしまったのだそうだ。こうした攻勢を排除していかに「公正で客観的な検索ランキング」を作るかが検索エンジン開発者に課せられた課題である。スタンフォード大学の大学院生ペイジとブリンによって創始されたベンチャー企業Googleは「邪悪にならない(Don't be Evil)」を社是にしているという。そして、マイクロソフトと違って多くのネットユーザーから好かれているというのも面白いと思った。

(守 一雄)

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