第18巻第2号              2004/11/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)

 
(c)朝日出版社


【これは絶対面白い】

池谷裕二『進化しすぎた脳』

朝日出版社\1500


学生 先生、『DOHC月報』の発行が遅れてますよ。また面白い本が見つからないんですか?

教授 うにゃ、今月はちゃんと本は決まっているんだ。上に書いたとおり、池谷裕二さんの『進化しすぎた脳』を紹介することはもうとっくに決めてある。

学生 じゃ、なんで今月はこんなに発行が遅れてるんですか?

教授 エヘン、実は今度、平安堂書店と信州大学生協が共催で「書評コンクール」というのをやることになって、その審査委員を頼まれているんだ。で、ちょっと応募者の見本になるようなものを書かなくちゃとか考えたりしてたもんでね。

学生 もうすでに本の内容と関係ないことで250字くらい使っちゃって、これじゃ悪い見本にしかなりませんね。

教授 おっと、それじゃ早速、内容の紹介を始めよう。この本の著者池谷氏は『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)というハウツー本のようなタイトルでいて、実は記憶に関する脳神経科学の最先端をわかりやすく解説した本を書いたり、タレント(?)の糸井重里氏と一緒に『海馬 脳は疲れない』(朝日出版社)なんて本を書いたりしてきた。

学生 どちらも、この『DOHC月報』や『信濃毎日新聞』の書評で先生が紹介してましたね。

教授 そう、うまい合いの手だぞ。これらの本もそれぞれ面白かったが、今回の本は前2作を超えている。この本の特徴は、池谷氏が高校生8人に大脳生理学について授業をするというスタイルから生まれてきたことなんだ。高校生相手だからといって、初歩的なことを話すわけではない。随所に「これは先週、『ネイチャー神経科学』という雑誌に載っていた論文なんだけど」「来月『サイエンス』という雑誌で発表する予定なんだ」なんて話題が登場してくる。

学生 第一線の研究者に最先端の研究を説明してもらえるなんて、スッゴイ贅沢な授業ですね。

教授 うん、池谷氏自身も「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と言っているくらいだ。もっとも、この恵まれた高校生は慶應義塾ニューヨーク学院高等部に通っているようなもともと超エリート候補なんだけどね。

学生 うらやましさを通り越して憎らしい気さえしますね。

教授 ま、でもこの本を読めば池谷氏の話を聞いたのと同じことだし、こんな面白い本になったのは彼らが池谷氏を知的に触発したということでもあるんだから、彼らの功績も認めてあげないとね。

学生 うーん、読みたくなってきた。1500円くらいなら投資して、これで書評を書いて応募しちゃおう。しかし、やっぱりこのDOHCは書評のお手本にはできそうもないなあ。

教授 いや、そんなことはないと思うぞ。まず、書評の対象とする本はこの本を選ぶことだけでかなり有利なはずだ。そして、対話体の書評を書くこと、この2つのポイントを取り入れれば、少なくとも審査委員の一人は喜ぶぞー。

学生 ホントかなあ?

教授 じゃ、ホントにこの2点をクリアした応募作があったら「DOHC特別賞」を出すことにしちゃうというのはどうだ。

学生 よっし、じゃあホントに応募しちゃおう。先生、この本借りまーす。

教授 (ふっふっふ、書評の一番の目的は、本を読む気にさせること・・・)

 (守 一雄)


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