第17巻第11号              2004/8/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 
(c)日本放送出版協会

【これは絶対面白い】

永江 朗『<不良>のための文章術』

NHKブックス(\1,160)


学生  先生、どうして私の読後レポートには「X(exellentマーク)」が付かないんですか?

教授  ま、それは面白くないからだな。本の内容の要約はできているし、自分の主張も書いてはあるが、私を「うーん」と唸らせるところがない。あれでは、やっぱり「A(真面目ないいレポート)」の範囲内だな。「X」はつけられない。

学生  じゃ、「もっと不真面目に書け」ってこと?

教授  そう、それがこの本の言うところの「<不良>」ってヤツだ。「不良」っていっても、カッコ付きだし、「プロ」とルビが振ってある。プロっていうのは、文章を書いておカネをもらうってことだ。それはつまり、読者がおカネを出しても読みたいと思うような文章を書けってことさ。

学生  でも授業のレポートって、先生が読者じゃないですか。先生におカネを出してもらえるようなレポートを書けって言うんですか?

教授  ま、ホントにプロのライターになるんだったら、そうだけど、大学のレポートでも「読者を楽しませるような文章を書く」ってことは大事だぞ、ってことさ。授業をしてレポートの添削をするのは私の仕事だから、君たちを楽しませる義務はむしろ私の方にある。でも、何十人分ものレポートを読むのは正直言ってかなり苦痛だ。特に、同じような内容のレポートが続くとうんざりしてくる。そうした中に、たまに読んで楽しいのが混じっているとウレシクなって「X」をつけるってことなんだな。実際におカネを出すか出さないかではなく、「読者を楽しませるような文章を書く」ってことはどんな文章を書くときにも書き手が心がけるべき重要なポイントだってことさ。教員になったら『学級通信』とかを書くわけだけど、真面目なだけのつまらない文章を書いていたんでは保護者も読んでくれないぞ。

学生  読後レポートは『学級通信』の練習ってことですか。そういえば、この本は、前に先生が紹介していた『<不良>のための読書術』っていう本の続編みたいですね。なんか、あの本、ホントは先生が書いたんじゃないかって感じの本でしたよね。

教授  そうなんだよ、この本もボクが書きたいと思っていたことがそのまま書いてあるような本なんだ。だから、『守の授業のレポートでXを取るための文章術』って本だと思って読むといい。実を言うと、君たちのレポートに「X」とか「A」とかをつけることにしたのは、だいぶ前に糸井重里が『週刊文春』で「萬流コピー塾」っていうのをやっていたのに影響されている。「萬流コピー塾」は、とにかく面白いコピー(=文章)を書いて投稿すると「松」とか「竹」とかの評価がもらえるんだ。その糸井重里が、ほら、帯にも「コツが存在する。」とこの本を推薦している。

学生  って言われても「なんとかコピー塾」も「糸井なんとか」も全然知りませんが・・・

● 1週間後 ●

学生  先生、この本ホントに面白い本でした。<不良>のための・・・とか言ってるけどスッゴク真面目な本ですよ。巻末には練習問題とかまで付いてるし・・・

教授  ああ、「真面目」って言ったら永江氏はあまり喜ばないかもしれないけどね。

学生  じゃ、「わかりやすい」し、「勉強になる」っていうのでどうですか?

教授  まだ表現が真面目すぎるな。「カネを出す価値のある本」って言ってあげるのが一番いい褒め言葉だろうね。

学生  ところで先生、今月のDOHCも発行が遅れ気味ですね。紹介するいい本が見つからないんですか?この本を紹介したらいいじゃないですか。

教授  ああ、もう11日か。実はもう紹介する本はこの本にずっと前から決めてあるんだが、「文章術」の本の紹介は書きにくいんだよ。だって、面白い文章を書くための本を紹介する文章がつまらないんじゃ洒落にならないだろ。

学生  でも、どうせDOHCってタダなんだし・・・           (守  一雄)


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