第10巻第12号 1997/9/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY
http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/dohc/dohchp-j.html
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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)
DOHC月報は今月号で丸10年分を発行したことになりました。思えば1987年10月に「毎月面白い本の紹介をするなんてことが1年間続けられるだろうか?」と不安を感じながら発行を始めたことが嘘のようです。いろいろご支援をいただきありがとうございました。
今月号は10周年終結を飾る特別なものにしようかとも考えていたのですが、これからも11年目・12年目と発行を淡々と続けていくためにも、通常通りのままにすることにしました。それでも、DOHC活動に関わりの深い読書に関わる本を選びました。 (守 一雄)
【これは絶対面白い】
永江 朗
『不良のための読書術』
筑摩書房\1600
「不良のための」というタイトルや、マンガ家しりあがり寿の装丁を見て、もっとフザケた内容を予想していたが、内容はきわめてまともであった。(もっとも「読書術」なんていう堅い言葉がタイトルにあるのだから、これくらいのことをしないと「マジメ」な人がうっかり買ってしまったり、「不良」には気づいてもらえなかったりするにちがいない。) 著者のいう「不良」とは「親や先生の言うことをよく聞き、一生懸命勉強するマジメな良い子」の反対で、「いいかげんで、飽きっぽく、調子がいいだけで無責任な悪い子」のことである。そして「不良のための」とはそうした「不良になるための」という意味である。「不良になるためにはいろんな本をいいかげんにたくさん読みましょう」というのが著者の主張である。
「なんだ、じゃあマジメな本なんじゃない」と思ってはいけない。「マジメ」というのは一般に誉め言葉のようであるが、マジメな人というのは「他人にとって都合がいい人」というだけのことであって、決して誉めているわけではない。内心バカにしているのである。子どもに対して使う「良い子」というのも同じである。親や先生にとって都合のいい子が「良い子」と呼ばれるにすぎない。だからこの本を「マジメ」な本というのは、誉めたことにならない。
他人に体よくバカにされないためには、「マジメ」ではなく「ちゃらんぽらん」になり、「良い子」ではなく「悪い子」にならなければならない。では、どうすれば「ちゃらんぽらんで悪い子」になれるのか?その答えは「不良になるためには、本をたくさん読むのが近道だ。(あとがき)」というのであるから、これはもうDOHCの会長にしたいくらいである。「専門書は東京で読まれる」とか「本の値段を倍にすべし!」とか「読書の最適の場所は電車の中だ」とか「テレビに比べりゃ本はとんでもなくマイナーで、マイナーだからこそ面白い」とか私(DOHC会長)もいろいろなところで言っていることが書かれていてとてもウレシイ。全部が全部私の意見と同じわけではないが、DOHCの会員は会長が書いた本だと思って読んでもらいたい。(と書くと「マジメ」な会員はすぐに本屋に走るハズだ。しかし、幸か不幸かDOHCの会員のほとんどはもうかなり「不良」になっているから、こんなことを言っても誰も読まないかも知れない。うーん、会長は困った。なんか今回のDOHC月報はいつになく支離滅裂だ。)
帯には「本を最後まで読むのはアホである」と書いてある。「マジメな良い子」はこれを読むと困ってしまうだろう。アホにはなりたくないし、途中で投げ出したくもない。しかし「不良」は困らない。不良はもともと「ちゃらんぽらん」だから、著者がなんと言おうと読みたければ最後まで読み、読みたくなければ言われなくても止める。だいたい、アホと呼ばれても気にしない。(と書いてきて、わかった。だから、こんな本をDOHCの会員に勧めても無駄なのである。なにしろ会員はもう「不良」なのだから。)
そこで、ほら、掲示板に貼ってあるこのDOHC月報をここまで読んできたキミ、そう君だ。君のようなマジメな学生にこの本を勧めることにしよう。君のような優等生は、ちゃんと私の言うことを聞いて、ぜひたまにはこういう本も読んで、もっとマジメに「不良」になる努力をしなくちゃダメだぜ。わかったか、君。さあ、まっすぐ生協書籍部へ走れ!! (守 一雄)
【追記】ちくま文庫(¥620)として文庫化されました。この本に「文庫は本の墓場である」とあるように、すぐ買わないともうこの本は手に入らなくなります。
(2000.5.10)
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