5月10日夜、父とベランダで会話

お父さん、お母さんから聞いた?

「うん聞いた」父

オレの体はもうのっぴきならないところまできたらしい。
もう、どうにもならないそうだ。

お父さんより、すこし先に死ぬことになりそうだが、仕方がないな。

ま、この年で死ぬのは。何人も、何百万といるわけだし、事故かなんかで突然死ぬわけじゃないから・・・。
もう少し、一緒にいられそうだし・・。

お母さんには、「みんなにもっと甘えていいよ」っていわれた。
それもいいかもしれんけど、ま、よろしく頼むわ。

でも、あと1年、生きたかったな・・・。

「あと1年生きたら何をする?」父

思い出をつくりたい。
オリンピックまで・・・。
オリンピックまでってやってきたから、何も、オレ、思い出をつくってないんだ。

いっぱいの思い出をつくって、そして・・・。

お父さんに、バンクーバーでサーモンのフライフィッシングを教える約束もまだ果たしていないし・・・。
ゴルフも教わっていないし・・・。

お父さん、お母さんとゆっくり旅行しろよ。
オレ連れて行くわけにゃ、いかないけれども。
カナダって、いいところなんだ。
みんな、あったかいんだ。
住んでみたかったしな・・・。

 

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