「検定不合格に」「加害の記述を」政府に措置求める
 侵略美化の歴史教科書に学者、市民ら非難の声

 アジア諸国への日本の侵略を美化、正当化した「新しい歴史教科書をつくる会」が文部科学省に検定申請している歴史教科書が近く検定を通過する可能性が高まっていることと関連し、日本の各界で非難の声が高まっている。声明など通じて、日本が中国・韓国・朝鮮をはじめアジア諸国に与えた加害の事実を無視した「つくる会」の教科書が採択され、教育現場に持ち込まれた場合、日本はアジア諸国との信頼関係を築けない、と危惧を表明、日本政府が適切な措置を講じることを求めている。

 作家の大江健三郎氏、坂本義和・東大名誉教授ら学者、文化・宗教関係者17人は3月16日、「つくる会」の教科書はアジアに損害と被害を与えた認識も反省の姿勢も見られない、と非難する声明を発表した。
 東京・永田町の衆議院会館で開かれた記者会見には両氏のほかにも、小森陽一・東大教授、東海林勤・日本基督教団牧師、隅谷三喜男・元東京女子大学長、三木睦子・元首相夫人、溝口雄三・大東文化大教授の各氏が出席した。声明は、現在検定中の歴史教科書がいずれもアジア諸国に対する加害の記述を大幅に後退させていることに憂慮を表明。とくに「つくる会」の教科書の第一次申請本は「韓国併合」を合法的であったと述べるなど、日本の植民地支配が朝鮮民族に甚大な損害と苦痛を与え、根強い民族的抵抗を招いた事実を無視している、と指摘。さらに、検定による修正も、「あいまいな表現で部分的に修正た点で問題を残している」と述べながら、文部科学省が「つくる会」の教科書を合格としないことを要求した。
 代表らは「一番重要なのは日本政府の対応」だと強調。「一面的に自国を美化する歴史観に基づき、次世代の国民を教育するなら、アジアと国際社会で信頼を得て生きて行くための知識と感受性を欠いた日本人を生み出す」と深い危惧を表明した。代表らは同日、国会内で福田官房長官、河野外相に声明文を提出した。
 なお、東京大学名誉教授の和田春樹、隅谷三喜男の両氏、荒井信一・駿河台大学教授、三木睦子・元首相夫人らは、2月27日に参院会館で声明を発表し、「つくる会」が作成した教科書を非難。日本政府が95年8月に閣議決定に基づいた村山総理談話を発表し、侵略したアジアの国々に対して「痛切な反省とお詫びの気持ちを表明」したことに言及。日本政府が責任をもって侵略を美化した記述を修正させるよう求めた。

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