国益を損なう自称「愛国者」たち
                          「日本と中国」コラム窓より

 先に発表された統計によると、2000年の日中貿易総額は850億ドル余りで過去最高を記録した。

 政治的にはいまだすっきりした関係にはなっていないが、経済関係は予想以上の進展を見せ、相互依存関係は強化されている。この数字は、中国の対外貿易の第1位、日本の対外貿易中では米国に次ぐ第2位で、初めて貿易総額の10%に達した。
 日中貿易急増を引っ張ったのは、繊維製品とIT関連の機械機器。繊維ではユニクロなどの台頭が需要を急増させた。
 一方中国のIT関連産業の成長はめざましく、日中貿易でも2001年度は機械機器が繊維製品を抜くとの見方が一般的だ。中国の携帯電話利用者は、98年から倍々の伸びで、年には8500万人余に達した。インターネット利用者数は、98年の210万人が昨年には2300万人になり、なお急増を続けている。この状況を背景に、各国(地域)特に米国、西欧、台湾はIT関連の生産基地を明確に中国にシフトしつつある。
 経済における相互依存関係の深化は当然政治や安全保障分野に良い作用を及ぼす。逆に政治関係のさらなる発展の潤滑油となるだろうし、逆の場合もありうる。
 歴史認識や教科書検定問題、つまり過去の誤った歴史の清算で日本がいつまでももたもたしていると、重要な国益を損なうことになる。単に経済的損得の問題ではなく、国際的信用度、安全保障にまでかかわる重要事なのだ。
 その意味で、侵略、植民地化という歴史の事実を歪曲、否定しようとする人たちは自らを「愛国者」と称しているようだが、実は国益を踏みにじるエセ愛国者なのである。(園)



   産経新聞「友好の虚実」の"虚"
                               「日本と中国」 コラム窓より

 産経新聞が一面で連載していた「日中再考第2部友好の虚実」が最近終わった。本紙前号「日・中マスコミ時評」の「この新聞社のスタンスは明確であり・・・過剰な反応は禁物」との勧めだが、事実に反する点だけは指摘しておきたい。

 2月28日付連載第7回「青少年交流の実態」は、日本の青年代表団が中国側によって「抗日戦争記念館」に連れていかれ、展示館で日本軍の暴虐の限りの展示をたっぷりと見せられたと書いた後、次のように続く。「青年交流代表団一行はさらに抗日戦争記念館で、中国側から『中日関係史』の講義を1時間以上も聞かされた。もちろん日本の中国に対する侵略や残虐が主題である。講師は・・・劉徳有元文化省次官だった」そして、中国側が一方的に「偏った歴史認識」を吹き込んだ。と結論づけている。
 上に引用した記事は、昨年9月に実施した第2次団のことを指しているのだが、劉徳有氏の講演はこの時ではなく、一昨年の第1次団への1回だけ。おまけに時間も場所も違う。講演があったのは抗日戦争記念館を見学した翌々日のことで、場所は宿泊したホテルのホールだった。
 しかも、劉徳有氏の話の主題は、「侵略や残虐」などではなく、両国友好関係の土台を築いた先達たちの交流(郭沫若を援助した岩波書店主のエピソードなど)を語り、そのうえで過去の戦争に触れて、「中国人は忘れたと言い、日本人は忘れないと言って、お互いの友好関係を築き、未来をめざそう」というものであった。
 執筆する記者の思想は別として、この記事のように、きちんとした取材の裏づけもなしに、あらかじめ用意した自分の結論を塗り重ねるというやり方は、いかにも下心が透けて見える、といわざるをえない。(澄)


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