「日中再考/第2部友好の虚実」
           (
古森義久/産経新聞前中国総局長
                 を批判する

 

 産経新聞に2月6日から18日にかけ、11回に分けて連載された「日中再考・第2部友好の虚実」を読む。日中友好を意図的に破壊しようとする言論にはすさまじいものがある。日中友好協会創立50周年記念の10・21北京大交流に2000名の会員が集った状況を揶揄して描いたのち、日中友好7団体を次々と非難していく。
 古森氏は「歴史をかがみとし、未来を志向する日中関係を築く」ことも「日中共同声明と平和友好条約」も「中国政府が対日関係を定義付けるときのパスワードだ」と断ずる。周知のように日中共同声明も平和友好条約も日本政府と中国政府が、法的な戦争状態に終止符を打ち、国交正常化を実現した際、お互いに確認したものであり、その原則と精神を基に日中関係はこの29年間、戦争のきずあとを徐々に癒しながら、年毎に発展を遂げ、いまやお互いに最も重要な国の1つとなった。古森氏は、この本質部分における歪曲を正当化するため(ごまかすため)に日中国交正常化前の時代や中国の文革の影響を受けた時代の協会の姿をことさら取り上げた。そして、現在広く国民運動を進め社団法人にもなった友好協会を攻撃し、リベラルで日本の良心を代表すると国の内外で高い評価を受けている平山郁夫会長まで攻撃しているのだ。それも「防大4期生岡田某氏」の「共産党独裁国家の戦略の一翼を担う反日団体のトップ」などという戦前の軍国主義時代の物言いをわざわざ紹介し、人々を威嚇する効果をも狙いながら。
 また、古森氏は協会発行の「友好手帳」を取り上げ、ここでも日中共同声明・平和友好条約・共同宣言が掲載されていることを攻撃して、「これらは中国側の中日友好の指針だ」と歪曲している。また「手帳の冒頭には中国歳時記があり共産中国らしい記述」と書いているのもごまかしがある。彼はわざと触れていないが手帳の最初のページには日本歳時記が紹介されていて、日本の祝日や民俗行事が記されているのである。歴史年表で日中戦争に関連する事件が記されていることも「さりげなく」批判の言い回しで紹介している。更に、日中友好7団体が記載されていることにふれ7団体への攻撃が始まる。そして「新世紀の日中民間友好宣言」へと攻撃の矛先が向けられていく。日中共同声明と平和友好条約を攻撃した古森氏にとって、これはもう、許しがたい宣言としか言いようがない。そして国際貿易促進協会へと攻撃の矛先を向ける。
 古森氏の言わんとするところを突き詰めていけば、体制の違いを越えて友好を進めることは許しがたいことであり、日中国交正常化も、その後の友好協力発展もすべて中国の意向に沿ったあやまちだということになる。更に「日中戦争に対する反省」にも執拗な攻撃と揶揄を繰り返していることにも留意したい。 
 現在、日中関係の進展を喜ばず、これを妨げ、破壊しようとす潮流は、一つの共通の根っこから方々に枝を広げつつある様に見える。自由主義史観・ゴーマニズム・民族排外主義・反中国などが地下茎でつながり社会経済的危機・曲がり角の時代にあって、世の中の風潮を一挙に変えようとしているかに見える。以前は「一部の」「極論」と思われていた論調が、勝手気ままに日中友好や歴史の反省やリベラルな思考といったものに攻撃の矢を放っている。自由主義史観とはとりもなおさず皇国史観の焼き直しであり、日本の朝鮮・中国・アジア諸国侵略を「アジア解放の正義」といい含めるものである。歴史教科書を反動的に改悪しようとする動きは韓国・中国・アジア諸国からの反発と批判を呼んでいる。本当に恥ずかしいことだ。日本国民が、戦後営々として築いて来た平和友好と信頼回復の努力をぶち壊そうとするものだ。我々はこのような言動を傍観すること無く継続的に批判し、日中友好の歴史と必要性をアピールし広く心ある人々と手を携えて守り発展させていかなければならない。

                          2001.2.26 長野県日中友好協会事務局長
                                         布施正幸(「日本と中国」3/15号)      

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