「日本と中国」(8/5)寄稿
歴史教科書問題についての考察 
          松本日中青年委員長 高山浩一

▼友好関係を損なう
 日本のかつての軍国主義によって、中国の人民はもちろん、日本の市民も、大変な被害にあった。
 中国は、友好のため戦後賠償の請求を放棄した。賠償をまともにしていたら、敗戦後の日本の復興は、少なくとも50年は遅れたと言われている。
 これを裏切り、日本の侵略戦争を美化しようとする動きに対し、中国や韓国から猛烈な抗議が来るのは、当然である。「つくる会」主導の歴史教科書だけではない。他の歴史教科書も、近現代史では「満州開拓団」や「残留孤児」の記述がないなど、以前から不満はあった。
 タダ、明らかに大東亜の夢をいまだ捨てきれない、懲りない国家主義者たちが、戦争を知らない世代に啓蒙を試みている例の歴史教科書は、世界平和と逆行し、善隣友好関係を損ない、やがては国益をも損なう、非常に問題の多い教科書であることは明らかである。 この機会に、日本全体で、目をそむけたい部分も多い近現代史を振り返り、改めて勉強してはどうか。
 北京にある「抗日戦争記念館」には、日本の当時の新聞がたくさん残っている。なかには「百人斬り競争」といって、中国人民を無差別に殺傷して、自慢しあっている記事もあった。
▼歴史認識の違い
「日本人には、水に流すと言う思想があるが、中国人に与えた被害を流せるほどの大量な水は、中国にはない」と、聞いたことがある。数百年前のことを、都合によっては神話にしてしまう国と、何千年もの歴史を大切に記述している国とでは、おのずと歴史に対する認識が違う。
 迷惑をかけた方が、いつでも「ごめんね」と言う気持ちを忘れないでいれば、「いいんだよ、もう忘れて下さい」と友情を結べる。だが、「そんなことしたっけ?」と言い出せば、永遠に信用もされない。
 日本には、友好国と呼べる国がないと言われる。今世紀には、そう呼べる国をぜひ、我われの手でたくさんつくりたいものである。


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