新春インタビュー 武大偉中国大使
<改革開放とWTO加盟、日中経済交流>

 昨年7月赴任した武大偉中国大使は日本での勤務が累計15年の日本通だ。中国のWTO加盟、国交正常化30周年などを流ちょうな日本語で語っていただいた。  (「国際貿易」より)

改革開放と日中経済交流について

 この20余年の間に中国は大きく発展した。10年前の中国のGDP(国内総生産)は日本の10分の1か8分の1に過ぎなかったが、現在は4分の1と、日本との差が縮小した。
 この発展過程において、円借款、技術協力などで、中国の発展に対する日本の政府、国民の貢献は多大なものである。たとえば、稲作では日本から技術や種子を導入したおかげで、収穫が飛躍的に向上した。中国の高速道路の総延長は現在、世界第2位の約2万キロだが、建設のために中国は日本に多くの代表団を派遣、学習してきた。養鶏も日本から学んだものだ。
  登小平氏が改革開放で「3段階に分けて発展する」構想を提唱したが、それは大平総理(当時)が紹介した池田内閣の所得倍増計画がヒントとなっている。
 また、日本から毎年、日本国際貿促等の大型経済代表団が訪中しており、交流を通じ、耳の痛い話も出されるが、的確なアドバイスもいただいている。
 中国の近代化に日本が大きく貢献したことを忘れてはならないと私は思っている。

中国のWTO加盟に関して
 WTO加盟は中国全体が「下海」(公務員から民間に移る)することを意味する。また、アヘン戦争以来、初めて平等な立場で世界経済に参画することになる。計画経済はもちろんのこと市場経済化後も、経済政策については全部、中国自身で決定し、実施してきた。しかし、今後は中国自身の努力と国際ルールの規制に基づいて行動しなければならない。WTOで中国は権利と義務のバランスのとれた働きをする。
 加盟は中国にとって長期的には有利に働くと自信を持っている。だが、農業、サービス、流通分野ではしばらくチャレンジが続くだろう。国際公約の下で適正な政策を打ち出し、新しい情勢に対処する。中国の加盟を日本が初めから支援してくれたことに感謝する。

国交正常化30周年について
 この30年間、さまざまな分野で交流が行われるようになった。2002年には中国の艦隊が日本を訪問、2003年には日本の艦隊が中国を訪問することが検討されている。これは両国の交流でタブーの分野が無くなったことを意味している。
 相互理解が深まった現在、次の段階は相互信頼の構築だ。現状では十分といえないが、努力すれば実現できる。今年、30周年を記念するため、さまざまな事業が官民で計画されているが、相互信頼を構築する上で非常に有利だと思う。
 また、今年は日韓共催でワールドカップが開催され、中国も初めて出場する。非常に喜ばしいことだ。重要なことは「共催」ということだ。以前のピンポン外交ではないが、サッカー以上の役割を果たし、日韓の相互理解、信頼が深まるだろう。
 中韓関係も昨年は貿易総額320億ドルを見込むなど国交樹立10年間で大きく発展した。朝鮮半島の南北関係も緩和に向かっている。アセアン+3の協力推進を含め、東アジアが今世紀中に1つの声で世界にアピールすることは可能だ。東アジアでは多様性を有しているが、これを克服し、1つの声で政治、経済、安全を世界の舞台で反映すべきだ。

最後に読者に一言
 現在、一番痛切に希望することは日本ができるだけ早く高度経済成長期の元気を回復することだ。日本の資金、人材、経験は豊富で、必ず経済は上向くと思う。中国は日本の発展を期待している。
 日本の不景気と中国の高成長から中国脅威論が一部であるが、グローバリゼイションが進む現在、1カ国の1人勝はあり得ない。隣人が弱い方がよいというのはもう過去の考え方である。中国が発展したのは先に述べたように日本の協力が大きい。中国経済の発展は日本経済の発展にとってもプラスであり、チャンスだと思う。
 

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