日中国交正常化30周年・中国の行方と日中関係の課題
凌星光・福井県立大学教授


 只今ご紹介にあずかりました凌星光です。今回私を呼んで下さって大変嬉しく思います。実は10年前にこの長野県日中友好協会が開いた大会に、私が講演で呼ばれました。その後も一度来ておりますけれども、丁度10年を節目でまたここでお話することが出来ることを大変光栄に存じます。今各県に日中友好協会がありますけれども、私が思うに日本で一番活発に、しかも着実に行われているのはこの長野県ではないかと思います。
 本題に入る前に実は私中国から帰って来たばかりなんです。9月5日に中国に行って10月3日国慶節を北京で過ごして、夜の天安門に上って見てきたんですけれども、この約一ヶ月廻ってやはり中国を私もかなり、しょっちゅう帰っているんですけれども自分ながらびっくりしています。そのくらい大きく変化しています。しかし良い面ばかりでなくて悪い面も気になってあちこちで私文句を言ってきました。まあいまだに乞食にも会ったことがありますし、それからタンをはく、これも実を言うと中国ではタンをはくのは小さいときから慣れていまして、今ずっと良くなったと思ったんですけれども。私の教え子も浙江財経学院というところで今勉強しているんです。四月に行って半年になるんですけど、それで向こうで姉妹関係にあるもんだから、大変面倒を良くみてくれて本人は大変満足して、良い勉強になったといろいろ言うんですね、この半年間貴方たちいろいろ体験し、良いこと分かったと。貴方たち中国へ来て一番良くないと思ったこと何か言えと言ったんですよ、そしたらタンをはくのがいると言うんです。 それは確かに中国の悪い習慣だ、しかし今良くなっているはずだ。タンをはく人は皆年輩の人だろうと言ったが、そうじゃない、浙江学院の大学生、同級生の中にいるんだと言う。そういう訳で私は院長さんと会ったとき、2008年にオリンピック大会開くというのにいまだにタンをはくということ、これは絶対無くさなくてはいけない。全国無くすのは無理でも少なくとも浙江学院では今の若い大学生は絶対はかないようにと。それでこれが契機となって私はこの一ヵ月ぐるっと廻っている間に、特に神経質に誰かタンをはくかどうかと見るとですね、確かに多いんですよ。一番多いのは長春、北京も多い、南のほうが少ない。それで私はあちこちでタンをはくのを止めましょうと言って来た訳なんですけど、こういうふうに問題沢山ありますけれど、まあ着実に前進していると強く感じました。
 それから今年の経済については大体アメリカの経済が良くない。日本の経済も良くない、ヨーロッパの経済も良くない。しかし中国の経済だけは7%台の後半にいく。IMFの予測でも7%から8%の間にいくと見られています。最近朱鎔基首相が世界的に景気が悪くなっても中国の成長率がそんなに落ちる事はないということを言いました。理由は何かと言うと中国の経済の発展は主に内需によっているからです。確かに輸出も今好調です。しかし輸出が悪くなっても内需によってそれをカバー出来るという自信があるからです。中国の輸出入額というのはGDPの40%ぐらいで大変その対外依存は高いと見られていますけれども実際には加工貿易みたいな日本の昔の輸出依存率とは違うんですよ。日本の場合はそれは原料を買ってきて加工してそれを出す。中国の場合は加工賃をかせいでというのが大体輸出の半分ぐらいがそうなんですからね。ですから中国国民経済全体に与える影響は数字で見るほど大きくない。日本は高度成長のときの輸出依存率は大体GDPの10%ぐらいですよ。輸出入合わせて20%ぐらいで、中国の現在も大体それに近いですね。ですから輸出が悪くなると中国の経済は影響を受けます。それはもう間違いないことなんですがしかし中国の国内の需要を喚起することによって、まあ日本の高度成長のときにも景気が悪くなると国内の需要を刺激することによって高度成長が続けられたように、今中国がそういう政策が未だ有効である。従いまして中国の今年の経済もそんなに悪くはない。来年の世界経済がどうかによって来年は少し影響を受けるでしょうけど、全般的にいって良いということです。
 さて、これから本題に入りますけれども、私はやはり21世紀に向けての中国、先ほど紹介の中で、私が未来を予測すると言いますが、そういう事を盛んに書いている。確かに今までのこともちゃんと総括しなくちゃいけないんですけど今後どうなる、どうなくてはいけないかという方向を示すことが我々研究者の役目だというのが私の考えなんですね。それで今日は四つの大きな問題を話したいと思います。
 一つは中国経済の今後20年間どうするか。それから中国の政治・社会・外交のやはり20年間ぐらいの中長期展望。三つ目は戦略的な日中経済協力関係を確立すべきだという主張です。四つ目は日中友好関係の新しい発展を考えるべきだということです。この四つのテーマについて話します。
 先ず最初のテーマ、中国経済の中長期展望なんですけれども、一口に言って現在の中国の7%乃至8%という高度成長は、これから後15年乃至20年間は続くということです。もう既に過去22年間にわたって高度成長が続きました。そうするとこれから又20年くらい全部で40年間も高度成長が続く。確かに歴史的になかったことです。これはまさに奇跡かというと奇跡ではありません。当たり前なんです。日本の高度成長は18年続きました。1955年から数えてオイルショックの1973年まで。アジアNIES、韓国とか台湾とかシンガポールとか香港を含めて、そういうところは大体20数年或いは30年間続きました。今丁度4〜5%の中成長に入っていますね。日本は18年間、こういった国は30年間、中国は40年間。では先ず高度成長とは何かと言うと、高度成長とは遅れた国が先進国にキャッチアップする、追いつく段階に起こる現象なんです。追いついてしまうと高度成長はありません。それでその一番典型は日本が実現したんですね。日本の奇跡と言われていたんですけれども、それで実は中国は改革開放政策を始めたときに中国も日本のような高度成長が出来るはずだと私は言ったんです。そのためには日本の経験を学ばなくてはいけない。いま中国がそれを追っているわけですね。それでキャッチアップの段階というのは期間はどのくらい長くなるのかというと、このギャップが大きければ期間が長くなる。何故かと言うと経済成長が13%か14%となったら必ずインフレになって国民経済はアンバランスになって駄目なんですよ、歴史的な経験からいって。まあ日本の経験からいって大体7%から10%ぐらいの範囲になる。二桁になっては駄目。その範囲内なら一応バランスのとれた高度成長が実現出来る。そうしますと中国は遅れてキャッチアップの段階に入った。日本とか台湾や韓国よりも遅れて。そうするとこの格差が大きいわけですから、そしてその成長率はせいぜい7%から10%の間となると当然その期間が長くなるわけですね。私は「中国経済改革の将来像」という本を、94年に書きましたけど、そこで私はそのことを述べたわけです。ですから今後まだ20年間は続く。20年間続くとどうなるかというと大体日本が1973年に高度成長が大体終わって、そのときにもう物質面で豊かさを皆感ずるようになった。今中国は確か物質面で豊かさを感じているが、それは沿海地域だけですよ。内陸部、農村地帯そういうところでは未だ貧困で物不足、住宅も条件が悪い、インフラも整備されていない。そういう所は沢山あるんです。これから20年間はそういう所が段々と充足されていく。そうすると今後また20年間続く。ここでちょっと付け加えますけれども、何故この高度成長、キャッチアップのときに高度成長が出来るかというと、これは経済学では後発性の利益と言いますけれども遅れている国は先進国の経験・技術、そういうことを学ぶことが出来る。従って一番最初に、今の日本なんか新しいものも発明しなくてはいけない。昔アメリカからいろいろ技術を取り入れたけれど、経営のノウハウもアメリカから入れた。今中国はアメリカ、日本、あちこちから技術のノウハウを受け入れて、そして自分の合ったものを作ることが出来る。つまり学習効果ですね。それが出来るから高度成長が続く。足らない資金も入ってくるというわけですね。こういうわけでこれから2020年迄は高度成長が続くだろうと。
 但し総ての遅れている国が皆、高度成長に入るかというとそうではありませんね。現実を見てもそうですね。高度成長に入ったのは先ず日本、次が韓国とか今中国、ベトナムもこれに入っています。条件があるんです。この条件を備えないと、そのキャッチアップに入ることが出来ない。その条件とは何か、三つの条件を備えるかどうかによって高度成長が出来るかどうかが決まる。
 一つは何かというと、やはり経済の仕組みですよ。戦後の日本の経済がどうして高度成長が出来たかというと、戦後日本が初め統制経済をはじめやっていたけれども、アメリカのいろんな経験を学んで、そして日本式の経済メカニズムを作ったからですよ。政府指導型の市場経済、市場万能論でない市場経済、政府の役割と市場の役割がうまく結びついた、所謂東アジア方式、実際には日本方式ですよ。それが台湾とか韓国なども基本的にそこから智慧を学んで高度成長を遂げた。今までの中国のような計画経済の仕組みじゃ駄目なんですよ。中国は計画経済の仕組みを社会主義という理念を持ちながら実際には計画経済から市場経済にした。そして戦後の日本のような仕組みが今出来たわけですよ。ですから現在中国が高度成長を遂げているその経済のメカニズム、基本の仕組みが出来た。その仕組みが出来ていないところは、例えば今のロシアは未だ駄目なんですよ、仕組みが出来ていない。他のアフリカなんかも勿論出来ていない。
 もう一つの条件は何かというと人間の素質です。つまり教育レベル、技術レベル、これがあるかどうかです。教育レベルが高ければ、そうするといろいろ先進的なものを学ぶことが出来ます。教育レベルが低かったら学ぶことが出来ないですね。中国は労働力の質は戦後の初期と比べるとずっと悪かった。字の分からない文盲もかなり居たんですが、今は大変教育に力を入れておりまして、高校の卒業者もどんどん増えてきている。ですから私は、この三つの条件のうち一番心配していたのは中国の教育レベルが低いということ。文化大革命によって大変空白が出来たことを心配していたんですけれど、まあ何とか今充足することが出来た。ですから中国についてみて、そして質の高い労働力があると、それはまあ中国、質の良くないのは沢山いますよ。教育レベルの低い、しかし人数が多いから、そこから選ぶから当然良いのが出てくるわけなんですけど。これから中国は引き続き人間の質をもっと向上させて教育レベル、技術レベルを高めていくと。まあこの条件を、過去において一応満たし、これからも満たしていくでしょう。これが中国の高度成長の第二の条件です。
 第三の条件は国際環境です。そういう先進的な技術或いは経営のノウハウを学ぶという場合は主に先進国からです。現在の世界においては、昔ソ連も社会主義の先進国と中国は見ていたんですけれども、これは明らかに駄目でして、やはりアメリカとか日本とかヨーロッパ。この先進国から学ぶわけですから、そこから資金、技術を得るわけですから、この平和な環境、つまり外交関係が良い状態にないと学ぶことが出来ません。そこで登小平さんが開放政策をやることによって日本も大歓迎し、アメリカも大歓迎した。ですから中国の国際環境が大いに改善された。従って技術、資本なども入ってくるようになった。
 この三つの条件が備わったために過去20年間の中国の高度成長が出来た。三つの条件というのは戦後の日本もあったし、台湾、韓国皆この三つの条件を備えたから高度成長が出来た。今中国が備えている。今まだ高度成長を遂げていないところは皆この三つのうちの何処かが欠陥がある。例えばロシアですよね。教育レベルは高い、しかしメカニズムは駄目、対外関係は今アメリカとの関係に問題はない、主に第一の問題が駄目。例えばアジアではフィリピンの経済は元々良かったが今は思わしくない。というのはやはりメカニズムに問題がある。大地主制度とか、そういう封建的な要素が強い。さて、中国では高度成長のこの三要因が過去20年間において改善されて、これからも引き続きこの三つの要因が存在するというふうに見ております。従ってまだ高度成長は続く。
 それから次に中国の過去の高度成長とこれから20年間の推移が同じものかというと違います。過去20年間の高度成長というのは日本や韓国と比べると良くない高度成長、不均衡発展の高度成長だったんです。どう言うことかというと、皆さん高度成長のときには所得格差とか、都市と農村の格差も皆格差が縮小したでしょう、。これは日本においてもそうだし、韓国においてもそうだし、台湾もそうですよ。高度成長によって格差が縮小するんです。これが今までの東アジアの状況だったんです。ところが中国は高度成長のなかで格差がどんどん拡大したんです。どういう格差かというとですね、所得格差、同じ都市の中でも一部の人はつまり大体教育レベルの高い人は収入が高くて皆高所得者になる。ところが一般労働者、リストラされた人達は低所得で格差が拡大している。同じ都市の中でも所得格差が拡大している。それから沿海地域と内陸部との地域格差の拡大。これが二つ目。それから都市と農村の格差の拡大、都市は豊かになったけれども農村は少し改善したけれども大変まだ低い水準にある。この格差の拡大。ここで何故他の国の格差が縮小したのに中国の高度成長は過去20年間において何故較差が拡大したのか。これは客観的原因と主観的原因と二つある。客観的原因というのは中国の社会主義の計画経済のもとで、皆平等だったんですよ。ところが台湾とか韓国はもともと格差ががあったですね、昔から。中国は悪平等だったから登 小平さんが一部の人が豊かになる政策を打ち出したんですよ。格差を認めなさい、今までの悪平等では駄目だと。これは正しいですよね。そういった面においては客観的な原因が、あったわけだ。しかしある程度の格差が出るのはいいとしても、現代の中国にこんな大きな格差が出る。金持ちは凄い金持ちで贅を尽くしている。ところが貧困者は生活が改善されずみじめな状態にある。これは主観的な政策的なミスです。私はずっと政策的に是正しなくてはいけない主張してきました。実はこの政策的な是正はですね、去年から始まった第10次5ヵ年計画では格差縮小の対策が打ち出されております。しかしそれが実を結ぶ、効果が出てくるのはまだ10年くらいはかかるでしょうね、或いはもっとかかるかもわからない。私がここで言いたいことは、過去の20年間は格差を引き出している不均衡の発展だったけれども、これからの20年間は戦後の日本の高度成長のように均衡のとれた高度成長になるはずです。また、ならなくてはならない。つまり格差が縮小する20年間、高度成長という格差が段々縮小し皆が豊かになる、そういう20年間になる。
 それからもう一つここで指摘しておきたいんですけれども、中国の経済がこれからの20年間今言ったような均衡のとれた高度成長がとれていくとしますと、では2020年ころに中国経済の世界における地位というのものはどうなのかということですね。今盛んにでも日本でも中国脅威論、軍事の脅威論もさることながら経済の脅威論、日本の空洞化されちゃったとかなんとかですね。2020年、あと20年たちますと、中国の国際的な経済的な地位というのは大きく上がります。その大きく高まるのは多分今皆抽象的に見ていますが、その時になるとやはりかなりびっくりすると思います。それは何故かというと中国の世界における経済的な地位というのは例えば1800年、今から200年前は世界の工業の生産高の約30%を占めていた。日本は3%ということは一人当たりだと大体同じくらいだったんです。それは当時の日本の生産レベルも大変高く中国の生産レベルも高かった。1800年中国は清朝のときですね。ところがアヘン戦争以後中国は段々と帝国主義の侵略を受けて中国は大混乱になって経済はどんどん疲弊していきます。1915年のときはどうかと、日本が中国を侵略して1915年頃には、日本の方がちょっと上ですけど、そんなに上でもない。1950年日本が戦争に負けて復興した。1950年の頃は日本も中国も大体世界のGDPに占めるウエイトは3%です。3%ということは一人当たりだと中国は日本の十分の一ということだ。ところが中国は計画経済、確かに発展するのは発展したけれども、日本の方がどんどん発展が早い。そして1980年になると日本の占めるウエイトは9%中国は依然として3%ぐらいしかない。そして1994年になると、1980年から中国は改革開放政策やって高度成長遂げるんだけれども1994年その時の日本の世界に占めるGDPのウエイトは18%に上がったんですよ。皆さん考えて下さい。1980年から94年までこの14年間、日本の成長率はそんなに高くなかったんです。せいぜい4%かそこらですよね。ところがGDPのウエイトが倍になってしまった。何故かといったら経済成長率によるものでなく、円高になったからなんです。だってドルに対して2倍になったんだから、そうするとGDPのウエイトも当然上がるわけですね。中国はどうかというと中国は1980年から高度成長を遂げていった。ところが元がドルに対して五分の一に下がったんですよ。円に対してはどうか、円は2倍になりましたから円に対しては十分の一になったんです。ですから20年前ですね、私の月給は日本円に換算すると1万幾らかですとこう言ったんですよ。1994年のとき私の月給幾らですというと日本円で6000円になってしまうんです。賃金上がっているんです。上がっていても円に換算すると十分の一になっちゃうんだから。ですから今日本が何でも中国のものが安く見える。中国にしてみると日本のものは何でも高く見えるのは為替レート、元が今大変割安になっている。円はどちらかと言うと少し割高になっている。これが原因しているんです。これからの20年間は中国の人民元が、今購買力平価でいうと基準となるところより四分の一だけれども、これがだんだん近づいていく。これは経済的に言って当然です。いま中国の経済がだんだん競争力がついて来ましたから、そうすると中国の世界のGDPに占めるウエイトは急激に上がってくる。一つは高度成長と一つは元が上がってくる。その両方の相乗効果によって中国の世界に占めるウエイトは今3.数%ですけれども2020年頃になると多分9%か10%ぐらいになると思う。日本のウエイトは94年は18%だったけど、円が今少し安くなったものだから、今大体14%ぐらいです。ことによると日本の成長率も止まっていますから、そんなに高くありませんからことによると中国と日本が大体同じくらいになる。しかし一人当たりだったらまだ十分の一だけどね。私は良く、じゃ中国はいつ日本に追いつくかと聞かれる。そうすると貴方の追いつくというのは全体の量から言って追いつくかということですか、それとも一人当たりですかと聞くんです。そうすると別にそういうこと考えていないんですね。全体の量から日本に追いつく、それはそう先の話ではない。購買力平価から言ったらもう既に追いついている。そして2020年ぐらいになると、その時のレートでも大体同じくらいになるでしょう。しかし一人当たりで日本に追いつくには70年から100年はかかる。何故かというとこれはやはり人間の素質からです。今中国へ行ってみるとよく分かりますけれども、中国の人間の素質は台湾や韓国と比べるとずっと中国の方が下です。マレーシアヘ行ったって中国の方がまだ下ですよ。北京とか上海の都市だけを見ても駄目、農村のそういったところを見たらわかる。日本は今農村だろうと都市だろうと殆ど変わらない。皆マナーも良い、そこまで持っていくには70年、100年はかかります。古い人が無くなって新しい人にどんどん教育してはじめてなるんですから。私の学生が中国へ行って先ず新たに何か感ずることはないか、何を感ずるかと言ったら先ず汚い感じと。最近は都市は綺麗になってきているが、全体的に言うと中国はやはり汚いです。中国の人が誰が来ても日本に来て、第一印象は何かと言うと綺麗だと言うことです。こんな綺麗さは大都市だけではなくて、私の福井県の農村、例えば長野県のどこの農村へ行ったって皆綺麗です。ここまで達するには70から100年はかかる。でも最近中国も調子良くいっているから、こういうふうにうまくいけば、もう少し短縮出来るかなという気もする。何れにしても未だ先の話です。さて、中国経済の中長期展望なんですけれども私の言わんとするところは、現在の中国は一人当たりでは未だ大変低い。しかし全体量では13億の人口ですから、それは確かにアメリカも侮ることの出来ない経済力を持つことになるということです。
 それから二番目に移りますけれども、政治・社会・外交の中長期展望なんですけれども、先ず今盛んに言われている第16回党大会が間もなく開かれます。第16回党大会では党の規約が改正されます。党の規約の改正で最も重要なのは中国共産党は労働者階級の前衛隊或いはプロレタリアートの前衛隊と書かれているんですけれども、そうではなく先進的な生産力を代表する人或いは先進的な文化を代表出来る人、そして広範な人民のために奉仕する精神のある人は誰でも入党出来るようになる。必ずしも労働者或いは農民ばかりでなくてね。これは何故かというと今までは働く者の党或いは労働者の党、それは正しかったんですよ。しかし今や知識・経済・教育レベルがどんどん上がってくる。そして知識のある人が社会をリードする。昔もそうだつたんですが、昔はどちらかというと所謂階級の矛盾といいますか、そういう搾取というものがあったんですけれども今やもうこれからの中国においてはですね、皆ドンドン知識を増やしていって、そういう人達がリーダーになる。皆もそれについて、そして全体が知識レベルをアップさせる。そういう今時代です。日本だって今ホワイトカラーのウエイトがどんどん高くなってブルーカラーは益々ウエイトが低くなって、だから労働組合の組織率もどんどん下がってしまう。今中国も労働組合がありますけど中国の労働組合はそういう労働組合でなく、新しい型の労働組合になるべきだと私は思っているんです。確かに労働は労働ですが、肉体労働、マルクスは肉体労働を考えていたんですね。殆どが。それで頭脳労働というのは搾取階級の手先とか、そんなふうに考えていた。そうではないんですよ。皆が頭脳労働やるようになるし、皆もそれぞれ一定の肉体労働もやるという社会に進みつつあるわけですね。この党の規約を改正するということは今時代と共に進むということが盛んに言われているが、まさにそれなんです。社会の構造、世界の科学技術の発展いろんな面で大きく変化して来た。何時までもマルクスの言ったこと、レーニンの言ったこと、そんなのにこだわっていちゃ駄目だと。最近日本共産党の不破哲三さんが中国に行きました。日本共産党もやはり階級政党から脱皮せざるを得ないと私は思っています。今中国もそれをもう脱皮しているんです。
 16回党大会でもう一つの大きな問題は人事の問題です。第一世代が毛沢東、周恩来、第二世代が登小平、第三世代が今、江沢民、これから第四世代に移る。第四世代というのは、まさに第二次世界大戦後の人達です。第二次世界大戦を体験していない人達です。江沢民さんは未だ若い頃、日本が侵略したときの体験が生々しくあるわけです。けれども胡錦涛さんとなると全然体験していない新しい世代、そして新しい世代は皆教育レベルの高い人です。ですから物の見方考え方というのは世界の先進国と或いは一般の国とそんなに変わらない。軍人を含めて。よく軍が保守派とか何とかと言いますけれども中国の解放軍だって全部世代交替が行われているんです。同じですよ。世界情勢の分析をやるときに、国防大学から人が来ますけれども、彼は勿論彼の職務上防衛ということを大変強調するわけなんだけれどもしかし国際情勢の分析など私達と変わりませんよ。ですから世代交代による新しいその見方というものが必ず出てくるんです。現在の中国は登  小平による開放政策によって閉ざされた一方的なものではなくて交流がどんどん進んでいますから、古い体質から脱皮しやすい年齢層になりますから、第四世代になってくるとですね、この政治社会全体に新しい空気が吹き込まれることは間違いないと思っています。そういう意味において来月開かれる党大会は一つの大きなターニングポイント転換点と言っていい。まあ革命の時代から経済建設の時代に移ったんですけれども、これは登 小平さんが大きな役割を果たしたんですけれども、これからはもう人間そのものがまさに建設時代の人間になる。革命の時代を経験したことのない人が出てくる。制度的に大変完備していますから今の人事制度、昨日NHKスペシャルで中国の公的抜擢制度をやりましたけどこれなど日本よりやり方が進んでいますよ。そういう試みがどんどん行われていますから、中国式な新しい近代的社会というのが生まれてくる。その転換点になるというふうに期待しています。
 それから政治改革、今未だ江沢民さんは政治改革のことはあまり打ち出していないけれども第四世代の指導者のもとでは必ず政治改革が進みます。但し直ぐかというと必ずしもそうではないです。私の書いた「天安門事件を超えてー中国の前途」という本ですね、天安門事件の名誉回復、これも必ずそう遠くない将来において行われるでしょう。これが名誉回復というか是正されますと世界の目ががらっと変わりますよね、あれがやはり一つの大きな中国共産党の一党独裁体制に対する一つの誤解を生む一つの大きな元になっています。あれを新しい指導者のもとでスッキリさせますと中国の世界に対するイメージはがらっと変わります。その後は何年かかるか次の世代で直ぐ出来るか或いは後10年ぐらいかかるか何とも言えないけれど着実にそこに一歩近ずきます。それから今中国におってコミュニテイという一番基層の段階ですね、都市においても農村においても大変民主的なことが行われるようになってきています。それが段々と上の方までも選挙で選ばれるということで、今のような中途半端な選挙でなくて本当の選挙がだんだんこれから行われるようになります。従って政治改革は着実に進む。私よく言うんですが、今までの中国の政治改革の一番大きな成果は我々インテリが政府にいろいろ提案することが出来るようになった。新聞に雑誌に自由に発表出来なくてもいろんな内部資料としていろいろ提案することが出来た。これが政策決定の民主化、政策決定の科学化といって皆の意見を聴取しそこで政策を決定する。ですからこの20年間中国の決定、いろいろまずいところもあったけれども大体うまく是正されております。何かといろいろな意見を聞くようになった。昔は毛沢東の一言で全部決まってしまった。しかし一般の大衆による不正腐敗に対する監督とかそういうものは、十分その仕組みは出来ていなかった。今そういう仕組みを作らなければいけないという要求が強く出ております。今後新しい指導体制のもとで必ずそういう方向で段々整備されてくると思います。まあ幹部の公開抜擢制度なるものも一つの例なんですけれども。
 今中国で一番悩んでいる問題は党と政府ですね。今皆さんが中国へ行ったら何処でも党の書記と省長。この関係をどうもっていったら良いかと、やはり共産党の指導体制を堅持する、同時に民主的な共産党の一党独裁にならないようにもっていかなければならない。そのためにはどういう仕組みを作ったらいいか皆悩んでいるんですよ。皆智慧を絞り合っている。私も時々皆と議論したりしているんですけれどもね、今ちょっと未だ良い案が出ていないんです。日本のようにする或いはアメリカのようにすると、共産党の指導性が無くなってしまう。そうすると将来長期的に見た場合に社会主義の方向性というのがぐらついてしまう。そこでやはり共産党の指導性は堅持しなくてはいけない。とすると、ではどうやってこのもっと民主的な仕組みを作っていくかという、これが今問われているわけです。しかしいろな実験もやっていますから、そのうちに良いものが出てくる。私あえて言うのは後10年したらですね、まあこれが中国式の民主主義かというのが評価されるようなものが出てくるんじゃないかというふうに思います。期待も込めてですね。
 それから外交の面についてです。皆さん知っている方がいるかどうか、中国は今新安全観という言葉を使っています。この新安全観というのは新安全保障観です。安全保障というものについて、今までの国の安全という場合ですね、それは力によって、守る。パワーポリテイスクですよ、アメリカが核を持っていれば中国も原子爆弾を作ることによって国を守る。いまはもうそういう時代ではないんだと。実はあの9.11のテロ事件の起きる前から中国はそれを言っておりまして9.11のテロ事件が起きてから益々この主張が合うというわけですね。それで今新安全観という言葉を出してロシアとの間に既にそれが協定ができている。中央アジアとも。そして江沢民が今年の5月にドイツを訪問しているがドイツでも新安全観でこれから国際関係をやろうと言っている。この前ブルネイでARF東南アジアの安全問題を考えようというその会議で唐家旋さんが中国の新安全観についての立場というものをそこで配付しました。この新安全保障観というのは、何かというと信頼醸成が安全の基本で、そして経済協力とそのテロなんかを防ぐ対策をする所謂安全を確保する、この二つが両輪だと、一つは経済協力一つは各国が共同でテロ対策をやる。そして国際的には国連を中心とした国際的犯罪、国際的なテロに対応しようと、そういう主張なんですよ。これはアメリカが新しい国家防衛戦略を出しましたよね。あの単独行動主義、先制攻撃と全く相対する、これはアメリカの方があとから出したんだけれども中国の新安全観と全然対立する。しかし中国の出した新安全観というのは、日本が戦後やってきた、最近日本の自民党の政権のもとでちょっと後退しているけれども国連中心主義の平和外交と完全に一致しますよ。日米安保条約、軍事同盟の条約は冷戦指向でそういうものは、直ぐ無くさなくてよいけれども徐々にその役割を低くして、集団安全保障体制を作っていく、新安全観に基づくこういう新安全観を打ち出したんですね。私はこれを世界経済評論の9月号に、中国の主張を紹介して書きました。これを関心のある方は是非呼んでください。これは私が論文発表してから日本のインテリの中でも重視する人がいまして読んでから私に是非これをジャパンタイムズに紹介したいと。ジヤパンタイムズで7〜8000字あるが、これを4000字くらいに圧縮して、そしてジャパンタイムズで世界に発信する。そういうことになっておりますけれどもこの新安全観というものが中国で、これは必ず世界各国のインテリから歓迎されるだろう、アメリカもタカ派とハト派がありますね、ハト派の人達その有識者は必ずこれを賛成するはずです。中国が新安全保障観を推進し出して来たということ、これは今後の日中関係にとっても或いはアジアの平和にとっても大変重要なことなんです。私の言葉として中国は今闘争の哲学から平和哲学に転換したという今の世界経済表に書いてあるんです。それは何故かというと江沢民が中央アジアのアルマタイという首都でスピーチしたんです。その時に中国は伝統的に中国文化として和をもって尊しとなす。聖徳太子の言葉だな。これはもともと中国から昔聖徳太子が取ったんでしょうけど、あるんです。和をもって尊しとなすという言葉が。そう言ったんですよ。これはかって皆さんの中に昔の毛沢東時代のこと知っている人がいるが毛沢東はマルクス主義は、結局闘争の哲学だと。階級闘争論でそんな和をもって尊しとなすとか、中庸とか、これはもう修正主義だと言って言語道断だったんですよ。それが和をもって尊しとなすということを外交の場で話したんです。ですから今までは対外関係は闘争の哲学だったのが今平和哲学に中国は転換しつつある。もっとも中国のそういった考えがですね、本当に外交政策の基本として実行されるかどうか、実は未だちょっと不安なんですよ。何故かというと今のアメリカのあんな強硬路線だとですね、日本も今日米軍事同盟を強化して中国を仮想敵国みたいになっているとですね、中国にも意見が分かれていますからね。私は今新安全観は大変良いと皆に紹介しているんだけれども中国の中には、こんなの空論だ、現実味がないと言う人もいるわけですよ、ですからこれは国際的に有識者が皆連携プレイをとって、それぞれの自国のナショナリズムというかそういうのを抑えなくてはいけない。これが私の主張なんです。やはり国際的な連携プレイで今言った新安全観をどんどん広めていく。そうすると良い世界になる、その可能性が出てきた。中国はその面で音頭を取ろうとすることさえ出ているということを一つ皆さん是非注目していただきたいと思います。以上が第二の問題です。
 次に時間も残り少なくなってきましたから第三の問題として、戦略的日中経済協力関係の確立。これについては簡単に話します。先ず貿易と直接投資が大きな発展を見ておりますね。貿易ですと今回皆さんに配ったチラシの中にも約900億ドルの日中間の輸出入貿易総額に達しています。それは大きな数字です。日本にとっても中国にとっても、お互いが切っても切れないような関係になっております。それから日本の対中直接投資も第三回目のブームになっておりまして、この関係は益々深くなって参ります。そして今朝鮮半島を中心とする北東アジアが今動きだした。私は小泉首相が靖国神社へ参拝はですね、これは余りにも中国の一般の国民感情を理解していないと言いますか大変失望させるものでありましたけれども、今回の北朝鮮訪問は、よくやったと私は高く評価しています。時間がないので又後デスカッションの時にまた話したいと思いますけれども、今アメリカが悪の枢軸の一つとされている北朝鮮に小泉首相が訪問することによって、それを今打破しようと。これは朝鮮半島ばかりでなくて東アジアひいては世界の平和にとっても大変重要な役割を果たしている。私は小泉首相の今回の訪朝は日本の自主外交の第一歩を踏んだと。今まで日本の外交は殆どアメリカ追随ですよ。これは日本の方は皆石原慎太郎さんみたいな右の方も日本共産党のような左の方も皆そう言っていますよ。今回訪朝についてはごく数人、四人ぐらいしか知らなくて、新聞の報道によるとね。アメリカにも今度行くとアミテージが丁度来たときに知らせた。公表する一日か二日前に。アミテージはびっくりして、その時の大使もこれに対してどういう措置をとるか、その時はもう決定したんですよ。決まったということをアメリカに通知する。事前にこういう条件でここに行くけど良いかという指示を仰がないで日本は決定を知らせた。というふうに新聞報道された。これが事実としますと明らかに小泉さんは、もう自民党の内部からの妨害、アメリカからの妨害を受けないように先ず極秘裏にやって決まったことを皆に公表する、公表する前に関係のところに知らせると。アメリカとしては韓国と日本が前向きに対応しますから、そうすると反対出来ないですね、アメリカとしては。だからブッシュさんは支持せざるを得ない。実際には不満であっても支持せざるを得ない。これは本当に重要な良いことをやったと私は思っております。只今拉致問題で、先ほど私のあれは丁度未だずいぶん前に書いた。公表したばかりの時書いたんですけれども確かに私も本当にあんな拉致をやった。まあ20年前のことなんだけれども本当に想像していなかったですね。これがその日本の今家族の方々始めとしてこれよく分からないけれどもね、私はやはり大局的見地に立って、そして今の北朝鮮の金正日体制というのは、それは潰れるかもわからない。労働党体制はなかなか潰れないでしょうけど金正日氏は潰れるかもわからない。それはそのときで、やはりこの地域の平和と繁栄と一番良い方向に努力して、その結果ある程度混乱しても金正日体制が壊れるそれだったらまた止むを得ない。その時はその時で皆で相談してなるべくこの地域の平和と繁栄を保つよう努力すべきであって、小泉さんはやはり約束に従って今月中に交渉すると。これはやはり交渉に乗せるべきだと私は思いますね。一部の人が先ず拉致問題を解決して始めて交渉すべきだと言っていますけれども、そういうことをやっているとまた折角のチャンスを逃してしまう。ですから日本は先ず自主外交の第一歩を進めましたし、今まで朝鮮半島で日本は一番受け身の立場に立たされていたが、それが一気にイニシアチブを取るくらいまでになったわけですよね、私はこれは大変良かったと思っているんです。日本はやはり外交面においてもイニシアチブを取るべきだと思うんですよ。それで中国と連携して外交面で、中国もまた日本に対する警戒心があるわけですね、昔の体験もあって。これは駄目だと私は何時も言っているんです、もっとやはり連携プレイを強化していかなくてはいけないと。まあそういう方向にある。そうすると今北東アジアにおいて経済の面においては北朝鮮が7月1日から改革開放に乗り出しました。改革開放という中国が使った言葉は使いたくないと言うが、それは使わなくてもいいですよ、実施する内容がそうであればね。これは昔のものと違いますよ、勿論今それは中国と違う。中国の最初だってそんなに今みたいな改革開放政策じゃ無かったですよ。やはり計画経済のもとで云々とやったんですよ。やっているうちにどんどん進まざるを得なくなってそして現在のようになったわけです。北朝鮮としたってそんな一度に今の中国のように絶対やっては駄目です。それはやはり北朝鮮の実情に合わせて一歩一歩やらなくてはいけない。7月1日の改革開放は明らかに大きな進歩です。中国で改革開放政策を始めた頃の時と大変良く似ています。これは学者が言っていますけど、まさにその通りで先ず改革開放の一歩としては評価すべきです。今いろいろな困難な問題があるから果して国際的な支援が得られるかどうかが一つの問題で、これを中国は勿論支援するし、韓国も日本も支援してそして改革を軌道に乗せ、改革を軌道に乗せたら政治的な方も必ず段々変わってきます。中国の政治もだんだん変わってきたように、そのうち朝鮮も変わります。北東アジアの経済圏、今もう日本海経済圏というものも10数年間言ってきたけれど、何も進歩は見られなかったけれども、これから可能性が出てきましたね。それからこの面においても北東アジアにおいて日中間の協力というものが大変重要ですね。
 それから日中間の私が戦略提携と言いましたけれどもですね、日本と中国との間の国際通貨面での戦略的な協力関係も出来たんです。これは今年の3月スワップ協定を結んで、もし日本が危機に陥ったとき或いは中国が危機に陥ったときにお互いに通貨を融通し合う、30億ドルの範囲内で融通し合ってお互いに助け合うという協定を今年の3月に結んだんです。その時他のタイとか他の国の場合はドルで幾らと決めると同時にそれはドルに換算して提供するんですよ。未だフィリピンとかタイのパーツなど日本は貰ってもそんなのはあてにならないから、だからパーツでなくてドルで、例えば30億ドルなら30億ドルの範囲内で提供するんです。ところで中国と日本は違うんです。中国が困ったときは日本は円を提供する、円はもう国際通貨だから問題ない。しかし日本がもし困ったときは中国が人民元で提供する。ドルじゃないんです。しかし日本が通貨で困って中国から人民元で援助を受けるとか、そんなことはあり得ない事なんだけれども。中国が日本に円で援助してくれと、これもあり得ない事です、外貨が沢山あるから。問題は今そういう協定を結んで、しかも人民元を日本が認めたということです。人民元を国際通貨として認めたというところに重要な意義があるんです。ですからそのときに中国の人民銀行の総裁、泰さんと言いますけれども、今回の協定で重要な意義は何処にあるかというと日本が人民元を認めてくれたことだと言ったんです。これがアジアにアジア通貨を創設する、国際通貨の協定を強めていって、その第一歩と言える。国際通貨面での戦略的な提携は既に始まった、今年の3月。
 それから日中間の国際戦略的な経済提携としては私がこの頃北京に行っている間にですね、新幹線の技術を入れるということに今話題になり出した。これは大変重要なことです。私は前から中国はやはり新幹線のそういった面での協力関係を是非、これは大きなプロジェクトになる。ところが中国はリニヤモーターカーの技術をくれというわけですよ。日本はリニヤーカーの技術は未だ成熟してないから、これは未だ上げるわけにはいかないと。そこで私はこの両方をミックスした形を提供したらいいというふうに言っているんですがね。しかし経済的に言って新幹線の技術は成熟しているし、特に事故が一度も起きたことないんだから長い間。しかも価格的にも安いんですよ。中国の鉄道部の方はですね、日本の新幹線に傾いているんだけれども、どうも上の方の政治的な判断で日本との政治的なギクシャクしているもんだから、それがどうも妨害になってるみたいだけれども、ここにきてやはり日本と中国とのこれからの友好関係、これからのアジアでの提携関係を考えて中国の方も動きだしたのかなあと今期待をこめているんですけれどもね、ですから新幹線の中国への提供という、これを言いだすと日本の政治家が皆それを望んで中国へ提起しているが中国はなかなか「うん」と言わない。それがもし前向きになると大変経済的な戦略的提携の内容の一つになると思います。
 それから今この東アジア経済圏つまりアセアンテンプラス3ですね、と日本、中国、韓国の三つ、アセアンテンプラス3と言いますけれど、そのうち今度朝鮮が加わると4になりますけど、正式のこの首脳会議が毎年開かれています。これは実際には東アジア経済圏の形成を意味しているんですよ。約10年前にマレーシアのマハテール首相が東アジア経済協力圏を作ろうという提案をしたんですよ。その時は海部さんが首相で、もともとこの構想は日本の学者から出たんです。日本は当時やはりこういうものをつくったら日本にとって大変良いと。ヨーロッパは出来るし、北アメリカも出来ているしアジアが一つにならなくてはいけないというわけでね。マハテールさんの主張にはそのバックには日本の学者、日本政府を含めてのそういったあれがあったわけだからマハテール首相が言うとですね、直ぐに海部首相がOK、日本としては賛成しますとこうやったわけですよ。そうしたらアメリカから横槍が入ったんですよ。アメリカ抜きの東アジア経済構想とはけしからん。その時の中国はどうか、中国は事前に余り中国にも相談しなかった。中国は賛成も反対もしないで傍観していたんですよ。アメリカから横槍がはいってきた、そうすると日本は直ぐにじゃ反対ですとやったわけ、マハテール首相が怒っちゃってね、なんだ日本はアメリカの言うことばかりで、もともと日本は賛成だと言っていたし、もともと日本の主張だのにアメリカがちょっと言うと直ぐ下がってしまう。そこでマハテール首相は今度中国の李鵬さんが来たときに、こうやると言ったら李鵬さんは日本から言うとやはり中国はとしてはOKと言えないけれどマハテールが言ったとするとOK、中国は支持するとやったわけですよ。そういうプロセスがあってなかなか出来なかったものが、実際にはアセアンテンプラス3という形で5年くらい前から出来た。そういう話し合う場が。これは先ほど言いました、この通貨協力も含めて特にアジア通貨危機を連携が益々強化されて、今東アジアが益々一体化しようとしている。この中で私は主張しているんですけれど、信濃毎日新聞へも時々書いているんですけれども、アセアンが前に出ようとするのがいい、だってアセアンは小国の連合でしょう。ですから外国は余り警戒しない。中国も警戒しないし日本も警戒しないしアメリカも警戒しない。中国が前に出ると日本は先ず中国がリーダーシップを取るとなると日本が警戒するしアメリカも警戒する。日本が前に出ると中国は反対するしアメリカも警戒する。ですからアセアンを先ず全面に出して日本と中国がそれを両側から支える暗黙の戦略上の提携をやればいいんですよ。今日本と中国が本当に戦略的にやったら直ぐにアメリカに反対されちゃう。ですから暗黙或いは水面下で実質的な戦略提携をし、表面的には文書では中国と日本とはそんな仲良くないようなかっこうをしていればいいんです、そういうテクニック必要ですよ。だってアメリカ余りにも強すぎて、日本だってアメリカにNOと言えないじゃないですか。中国だって昔の毛沢東みたいなあんなこと出来ないですよ。これだけ近代建設やっていますからね、こんど江沢民さんがアメリカへ行くけれども相当我慢せざるを得ない。アメリカは今もういい気になっていますけどね。本当にこの畜生と思うんだけれどもしょうがないですよ。(笑い)我慢しなくちゃ。以上が三つの問題です。
  最後に日中友好関係の新発展と言いましたけどね。私はその今日本と中国両方に問題があるんですけれども、やはり今大きな三つの矛盾を抱えていると思うんです日本は。一つは皆さん必ずしもそうではないですけど、大体日本の一般の人の中に、日本は優秀な民族であると。アジアの唯一の先進国であると。昔は大東亜共栄圏の盟主。戦後は私が高校生くらいの時はちょつと皆そういう優越感というものは無くなってきましたけど、そのうち経済大国になったら皆から褒められるでしょう。そうするとやはり日本民族は優秀だという優越感が出てきたですね。ですから日本の一般心理状態として優越感がある。自分は自覚しているとは限らない。しかし日本はやはり優秀だというそれはある。事実外国の人も日本は優秀だと見ているわけですね。そういう優越感がある。ところが今13億の人口を抱えている中国というのが出て来たでしょう。そうするとですね、日本のその優越感というものが挑戦を受けている。ずっと優越の状態にあるんだけれども、どうも脅かされていると。そうすると心理的な調整、やはり中国というのは伸びるものだというふうに割り切ればいいんだが、その割り切るためには時間が必要なんですよ。今その心理的調整期にあるんじゃないか。逆に中国は今までやられたという被害意識、しかし現在は中国の存在は大きくなっていますから、もっともっと大きな心を持たなくちゃいけないですよ中国はね。ところがその心理調整が出来ていないですよ。ですから日本も中国両方とも、その心理的な調整を必要とする。そういうところがギクシャクする基本があるんじゃないかと。
 もう一つは経済の方でどんどん密接になっていますけれども安全保障の面では日米軍事同盟強化とか、それで中国側にも警戒感があるし、これがまあ矛盾している。ですから経済的には益々戦略的に提携し、しかし安全保障とか軍事の面では警戒感があるこの矛盾をですね、順次解消していかなくてはならない。これも少し時間がかかります。
 それから三つ目は日本の外交はどんどん東アジアにシフトしなくてはいけないと大体皆共通している。それから経済的にも戦略的な重点を今までアメリカだつたけれども東アジアに移すと。ところが所謂右傾かというか先ほどちょっと言われましたが靖国神社参拝とか教科書問題が、そういうのが出てきちゃってね、そうするとこれが矛盾。そうするとこれも、私は必ず解決されると思う。私も今回中国へ行ってあちこちで喋ってきて、だから中国としては、この日本の人達のこの三つの矛盾をいま解消していく。そのプロセスにあって中国としては、それをプロセスがうまく切り抜けるように、そういうふうに対応しなくちゃいけないと言ってきたんです。余りがやがや言うとこのプロセスがうまくいかないと言ってきているんですが、まあこれは一つあると思うんですね。ですからそれでは今三つの矛盾の中の最後の日本の歴史認識問題なんですけれども、歴史認識の問題はやはりドイツに学ぶべきだと思うんです。現在日本の有識者の益々多くの人が早くこれをけりをつけなくちゃいけないと言っています。私の知っている本当の昔、こういったことは余りタッチしないような人達も、これは早く解決しないと先ほど言ったような経済的な面での日本と中国との戦略的な提携或いは東アジアのあれに影響してきますからね。ですから私は、これ段々と解決される方向にいくと思います。それは更にこれからアジア安保体制を作っていく。アジア安保体制というのは先ほど言いましたARFですね。東南アジア地域ホーラムというのが出来て、これは東南アジアのアセアンを先に作ってそれにアメリカも呼ぶし、中国も呼ぶしロシヤも呼んで、そして日本も。で、こう話し合うと。初め中国は余り積極的でなかったんですよ。何だかこれアメリカの影響下にあって中国を巻き込んで、それで支配されるんじゃないかというわけなんですね。ところがやはりアセアンが主体となって、こうやるという安心感があって中国は前向きに対応するようになった。日本もそれは前向き。だから今ARFというアセアン地域ホーラムをお互いに強化していこう。勿論アメリカも参加しています。そしてそれが東アジアの安保体制、集団安全保障体制にもっていって二国間の軍事同盟は段々と、直ぐ無くす必要はないが、その役割を低めていくこれが今日本の可なりの人の主張にもなっていますね。これ良い傾向なんで、もう一方ではやはり中国は駄目だと警戒しなくちゃいけない。日米軍事同盟強化で中国に対抗しようという右傾的な意見もあるわけなんですけれども、まあその辺の世論をどうやって動かしていくかが大きな課題だと思います。それから最後に日中友好の新展開ということについて、今までの日中友好運動というのは、以前においてはイデオロギーというものがありました。段々イデオロギーから脱皮しましたけれども、今未だ完全に脱皮してない面もあるんじゃないかと。中国が未だ共産党の一党独裁体制或いは社会主義とそういうあれで、未だそのイデオロギーが完全に脱皮していないと思うんだけれども、これからはですね。もう完全に脱皮して日中友好運動にならなくてはいけないと思いますね。で、その条件が今既に出来ていますね。先の指導者の交替もそういうあれだし、そのイデオロギーというのは社会主義と資本主義のイデオロギーもさることながら戦争とかいうものも含めて、過去の戦争というものも含め、このイデオロギー抜きで、そして未来指向の、21世紀の東アジアをどう作っていくかという未来指向、先ほど私が言いました未来指向に着眼した新しい日中友好運動をやるべきだと。そしてもう一つ人的交流の面において、今までどちらかというと日本の方が中国に行くと、中国の方は一部の官僚とか学者とか限られた人しか来れなかった。これからは中国の人も海外にどんどん出て行けるし、お金も出来る様になった人が随分出てきた。そうするとまさに本当の意味の相互交流が始まる時期です。ですから長野県のこれから日中友好の交流の面においても中国の経済の発展に基ずいた新しい交流、いろんな道を考えている。今までは交流時ににおいて経済負担が日本側に多くなってきますけれど、これからはそうではなくて、中国側はもっと負担をもって実のある幅の広い交流を。そういう新しい交流を編み出すべきだというふうに思います。それから視点なんですけれども、長野県ですと昔満蒙開拓団とかそういうあれが、こうずっと歴史を引いているわけなんですけれども、これからの日中の友好運動というのは、世界的視野にたった、特に東アジアの連帯という、そういった視点に立った交流、それがないとより広いものになっていかない。特に若い人達を引きつける力がないと思います。今ここに割合年輩の人が多いんですけど、もっともっと若い人達を引きつけないと、若い人を引きつけるためには、未来というものを、21世紀はやはり東アジアが連帯するんだと。その中で日中間が大変重要なんだと、基盤になるんだと。そういう発想でやると若い人達がどんどん入って来る。そういう発想が必要じゃないかというふうに思います。長い間ご静聴有り難うございました。(終り)


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