≪日中同天・緑化協力≫を合言葉に、
河北省の平山県(西柏坡)、易県、内丘県で緑化プロジェクト

日中緑化交流基金の助成で18年間3地区で実施


                                長野県日中友好協会  理事長 布施正幸


◇はじめに    

長野県日中友好協会は2000年以来、友好提携している河北省の緑化に協力するため日中緑化交流基金の支援をいただき、石家荘市平山県(00~05年)と保定市易県(06~11年)そして邢台市内丘県(12~17年)で緑化協力プロジェクトに取り組んできました。足掛け20年間近くにわたり、3700haあまりに、139万本が植樹されました。助成送金額は8800万円余りとなりました。緑化交流基金が本年度末をもって終了となる機会に、長野県日中友好協会と河北省友好協会の緑化協力事業の歩みを振り返ってみたいと思います。

春先、黄沙が飛来する時期の天気図を見ていますと河北省の大気が3日後に長野県にやってくることがわかります。私たちの緑化協力の合言葉「日中同天、緑化協力」はここから生まれました。

河北省を何度か訪問している中で、年平均降雨量が500~560mmの乾燥地域である華北平原には道路沿いに一生懸命ポプラなどの樹が植えられていましたが、一度太行山地へ入って行くと、そこは石灰岩や花崗岩、片麻岩を基本としてその上に薄い表土が張り付いて、藪のよう潅木が申し訳程度に生育していました。1996年8月にはこの河北省に大洪水が発生し、石家荘市郊外のいつも干上がっていた大河の虖陀河が氾濫し下流の北京や天津を救うために、河北省の人々が犠牲を引き受けたと聞きました。友好協会では、義援金を呼びかけて河北省に見舞金を贈り感謝されました。

 ◇平山県で緑化協力スタート               

洪水を予防する方法はないのだろうかと気になっていたところ、虖陀河上流の平山県の緑化の話が耳に届きました。平山県には崗南ダムがあって、ここで太行山から流れ込む水をため人工用水路に水が振り分けられ虖陀河河川には一滴も水がない状態となっているのです。ダムの上流域の山地は樹木がほとんどなく、はげ山状態です。従って山地に住む農民の暮らしは貧しく、緑化は地域の経済発展の上でも急務だと思いました。

希望小学校を贈呈した縁もあって、河北省人民対外友好協会の仲立ちで平山県の県長さんや林業局の皆さんと意見交換する機会があり、地元でも緑化10ヵ年計画などを策定して緑化にとりくもうとしていることが分かりました。西柏坡(ここは新中国建国前の1年間中国共産党の中央が置かれたところだそうです)の記念館近くに第一期目の植樹場所が決まり、立派な記念碑の除幕式も盛大に行われました。

以来6年にわたり平山県の緑化プロジェクトが進み、総面積620haに、コノテガシワ、アカシア、火柜樹、山杏など89万本が植えられました。毎年春や秋に緑化協力訪中団を派遣し地元の林業局や地元の農民の皆さんと植樹してきました。また緑化アドバイザーの小山明氏(信大農学部講師・KRC㈱会長)を現地調査に派遣し植樹の成果を報告いただきました。

◇易県、第2の緑化協力地   

2006年からは保定市の易県に場所を移して緑化プロジェクトが続けられました。ここは清の西陵が近くにあり、太行山の北東端に当たる地域です。山は石灰岩をもととした褐土で表土は10~35cm、年間降水量540mmとやはり厳しい地域です。易県の名は易水(「風飄々として易水寒し、壮士ひとたび去ってまた還らず」の荊軻ゆかりの地です)から出ており、下流域には白洋淀などがある一大水源地帯です。残念ながら白洋淀の水は年毎に水位が下がっていると聞きました。水土の保全と水源保持のために、緑化に力を入れ、きれいな水を豊富に供給できるようになることを願って、毎年春や秋に緑化協力訪中団を派遣し地元の林業局や地元の農民の皆さんと植樹してきました。

 井出正一県協会会長は易県での緑化協力の除幕式のあいさつの中で、「私たちはほんのきっかけ作りを提供しているに過ぎません。主人公は地元中国の皆さんです」と強調しました。易県では6期分、約320haに植樹がおこなわれ、コノテガシワ、アカシア、火柜樹、山杏など約38万本が植えられました。また緑化アドバイザーの小山明氏(日本樹木医会県支部長)を現地調査に派遣し植樹の成果を報告いただきました。

◇内丘県、第3の緑化協力地               

2012年からは邢台市内丘県に場所を移して緑化協力が続けられました。邢台市の西北(太行山の中部東側山麓)に位置する内丘県は衡水市や天津市に通じる滏陽河(子牙河)の上流に位置し、馬河水庫などのダムが点在しています。近年来の気候変動により、干ばつと豪雨に襲われることが多く、内丘県の緑化を推進し、太行山脈の森林被覆率を増やし、生態環境を改善することは急務となっていると河北省友好協会から提案された場所です。6期分で146haあまりに植樹が行われ、槐を主体に欒樹、楊樹、ニセアカシアなど約12万本が植えられました。毎年春に緑化協力訪中団を派遣し,内丘県政府関係者や地元の農民の皆さんと植樹してきました。また緑化アドバイザーの茂木博氏(元県林務部長)を現地調査に派遣し、植樹の成果を報告いただきました。

緑化協力・長野県日中友好協会訪中団(山根敏郎団長)が、2013年5月24日梁国輝・河北省外事弁公室亜非処処長処長の案内で内丘県を訪問した時の様子を紹介しましょう。

―県の入口で出迎えの車が3台待っていて、緑化協力プロジェクトの現地まで誘導してくれました。現地には緑化計画を示す看板が立てられており、太行山脈に連なる丘陵地帯で赤土の乾操荒地を3年計画、6年計画で緑化しようというものです。50本ほどの油松を龍興洲・市外事弁公室主任や盧振江・副県長さんらと共に記念植樹し、順調に生育するよう水もたっぷり与えました。計画地を奥へ進んで行くと、水源用のため池や、次年度に向けての基盤整備などが進められていました。―

 この20年間に中国は巨大な変化を遂げました。環境保全は重要な国策となり、緑化に対する継続的な取り組みが全国各地で進んでいます。砂漠化の進行にブレーキがかかり、中国の山地が豊かな緑でおおわれる日を目にすることができるでしょう。

 数々の思い出をきざみ多くの友人とともに実施した緑化協力プロジェクトでした。河北省の皆様、緑化協力訪中団にご参加いただいた皆様の熱意あるご協力に心より感謝申し上げます。(2021.1.1)


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