帰国者への理解を深めるつどい・体験発表と春節交流会(2/14)

 長野県と県日中友好協会中国帰国者交流センターは2月14日、「第8回中国帰国者への理解を深める県民の集い」を長野市内のホテル犀北館で開きました。旧満州(現中国東北部)に渡り、敗戦時の混乱で取り残され中国養父母に助けられ育てられた帰国者(残留孤児)が体験を発表、あわせて満蒙開拓平和記念館の報告と教育現場での帰国子女への差別を克服した特別講演も行われ、230人余りが熱心に聞き入りました。第2部では東京中国歌舞団による民族楽器演奏を堪能し、第3部の春節交流会では餅つきやくじ引き抽選会、歌や踊りの披露、ヤンコー踊りなどを楽しみました。

 主催者を代表して田村浩志・県地域福祉課企画幹と高波謙二・県日中友好協会会長があいさつし、「長野県は全国一満州開拓団を送り出し多くの犠牲を出した。長野県には現在1300世帯4100人の中国帰国者の皆さんが暮らしている。2008年には新帰国者支援法が施行され、更に一昨年10月からは1世の配偶者支援の態勢ができた。帰国者1世の高齢化が進み、引きこもり防止や介護、2世の就労などの課題もある。開拓団の悲劇と帰国者支援問題は長野県と県民にとって忘れてならない歴史。帰国者の皆さんが、地域や県民の皆さんの理解を得て、平穏で幸せな生活を送ることができるように国、県、市町村、関係者が連携して支援活動に取り組んで行きたい。満蒙開拓平和記念館も一昨年春オープン以来、9万人近い参観者が訪れて全国的な関心を集めていてよろこばしい。本日は、帰国者一世の石坂万寿美さんの体験発表と満蒙開拓平和記念館報告、特別講演が予定されている。帰国者の皆さんの歩んだ歴史と現状への理解を深め、支援交流にともに励んでいきたい」と述べました。

 体験発表で石坂万寿美さん(72)=塩尻市=は、「家族で旧満州に渡りまもなく敗戦、父はシベリアに抑留され死亡、母とも死別した中で、現地の中国人に救われた。養母は病気の自分を1日に200回もおなかを撫でて看病してくれたり、鉄鍋を売って生活費や教育費を工面し育ててくれた」と体験を語り、私が現在あるは養父母のおかげですと話しました。

 特別報告として、飯田日中友好協会理事長の小林勝人さんが「満蒙開拓平和記念館」の活動を紹介し、ピースラボ講座や澤地久枝さんの講演会、中国養父母連絡会代表と養母を招いてのシンポジウム、養父母展の開催等を通じて、開拓団の悲劇を若い世代に伝える平和教育の基地としての役割を果たしていることを報告しました。また養父母展の県内巡回展示への協力を呼びかけました。

 特別講演として篠ノ井西中学教諭の飯島春光さんは「満州開拓団の歴史を20代で82.9%、30代で66.3%の人が知らない、帰国者がなぜ日本で生活し苦労しているかその理由も知らない現実がある」と指摘し、篠ノ井西中学で1990年代後半中国帰国生徒が急増する中で差別やいじめ問題が発生し荒れていた、それを克服するために、満州移民に焦点を当てた学年ぐるみの歴史、平和学習に取り組んだ経緯を紹介しました。「生徒たちは祖父母や曾祖父母の戦争体験の聞き取りと発表に取り組み、帰国生徒も新聞づくりを通して曾祖母の人生に迫った」「ひいおばあちゃんの話を取材した宏くんはひいおばちゃんが中国で殺されそうになったところを現地の中国人に救われ結婚し、帰国後現地に家族と自分の墓を建てたことを知った」「ひいおばちゃんの歴史を調べ、それを親にも知らせることができた」などの事例を紹介し、戦争をどう学び、どんな未来をつくっていくかが問われていると話しました。

 第2部の東京中国歌舞団の民族楽器演奏では、劉錦程団長の揚琴と汪成さんの二胡の演奏を楽しみました。会場は春節の華やかな雰囲気に包まれました。最後に「北国の春」と「大海啊、故郷(海はふるさと)」を歌いました。

 第3部の春節交流会では長野市日中女性委員会の皆さんが友好の黄色のハッピ姿で、交流会を進行し・盛り上げに大活躍でした。アトラクションとして臼と杵を使って、帰国者の皆さんが次々と餅つきを体験しました。抽選会も行われくじを引き当てた人たちが切絵のカレンダー、お米やリンゴなどの景品を受け取って喜んでいました。松本、飯田、上田、長野、伊南の日本語教室に通う帰国者の皆さんが次々と準備してきた出し物を披露しました。「信濃の国」「ふるさと」「花」「北国の春」などを堂々と歌い大きな拍手を受けました。上田教室の皆さんは、はっぴ姿に桜の枝をもって、「真田桜」の踊りを披露喝采を浴びました。二胡やフルース、横笛の演奏なども披露され、最後に中国の東北地方に伝わるヤンコー踊りを会場いっぱいににぎやかに踊りました。参加した帰国者の皆さんは「中国の春節を祝いながらみんなと集まれるこの会を毎年楽しみにしている」と語っていました。

 飯田下伊那、伊南、伊那、松本、佐久、上田、長野、飯山などからおおぜいの帰国者や支援者、市民のみなさんが参加しました。中沢洋子県地域福祉課長補佐兼自立支援援護係長、宮川あゆみ同係主査、小林佑一郎元中国帰国者定着促進センター所長、庭山透長野市生活支援課長、王秀閣中国国際放送局孔子学堂担当者、井出正一県日中最高顧問、清水可晴・中沢道保・福沢宏夫・清水えい子・村山ひとみ県日中副会長、西堀正司県日中帰国者交流センター所長、西沢毅県日中帰国者留学生委員長、池上一巳上田市日中会長、金子繁三長野市日中理事長、布施正幸帰国者交流センター次長らも出席し帰国者を激励し交流しました。

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