帰国者への理解を深めるつどい・体験発表と春節交流会(2/22)

 県と県日中友好協会中国帰国者交流センターは2月22日、「第7回中国帰国者への理解を深める県民の集い」を長野市内のホテル犀北館で開きました。旧満州(現中国東北部)に渡り、敗戦時の混乱で取り残された体験を持つ帰国者らが体験を発表、あわせて満蒙開拓平和記念館の報告も行われ、250人余りが聞き入りました。第2部では東京中国歌舞団による歌と民族楽器演奏を堪能し、第3部の春節交流会では餅つきやくじ引き抽選会、歌や踊りの披露、ヤンコー踊りなどを楽しみました。

 第1部では主催者を代表して小口由美・県地域福祉課長と井出正一・県日中友好協会会長(元厚生大臣)があいさつし、「長野県は全国一満州開拓団を送り出し多くの犠牲を出した。日中国交正常化以来、長野県に永住帰国した1世は約400名で、その家族合わせると4200人の中国帰国者の皆さんが県内で暮らしている。2008年には新帰国者支援法が施行され、更に昨年10月からは1世の配偶者支援の態勢ができた。一方帰国者1世の高齢化が進み、引きこもり防止や介護、2世の就労などの課題もある。帰国者の皆さんが、地域や県民の皆さんの理解を得て、平穏で幸せな生活を送ることができるように国、県、市町村、関係者が連携して支援活動に取り組んで行きたい。満蒙開拓平和記念館も一昨年春オープン以来、5万5千人余りの参観者が訪れて全国的な関心を集めていてよろこばしい。尖閣問題で厳しい状況が続いてきた日中関係も昨年11月に3年ぶりに両国首脳会談が実現し明るさが見えてきた。帰国者の皆さんには平和の尊さを身にしみて感じておられる。友好の架け橋としても活躍願いたい。春節にあたり楽しく交流し理解を深めましょう」などと語りました。

 体験発表で大石文彦さん(73)=長野市=は、「3歳のとき終戦間近の1945(昭和20)年5月に宝興長野郷開拓団として家族と一緒に旧満州の延寿県宝興に渡った。戦争末期で廃業に追い込まれた長野市内の商工業者を無理やり説得して組織された開拓団だった。母が妊娠していたが強引に送り出されることとなった。慣れない農作業、落ち着くゆとりもなく敗戦、冷静な団長の判断で、逃避行での被害は最低限に抑えられたが、産声を上げた赤ちゃん(弟)は、冷たい雨に打たれて3日で死んでしまった。現地の人に助けられ自分は母とともにその後7年中国に滞在。さまざまな困難も体験したが1952年7月帰国できた」と振り返えりました。その上で、「日本は戦争で多くの人の命を失い、中国の人々に取り返しのつかないことをした。もうあんな悲劇を繰り返してはいけない」と強調しました。大石さんは自らの体験を『活(いきる)-戦中戦後中日でで活き抜いた少年の物語』(信毎書籍出版)としてこのほど出版しました。

 伊澤玲子さん(35)=上田市=は、帰国者2世の立場から「日本での出会い」と題して体験を語りました。「中国にいた小学生の頃、自分が日本人であることを恥ずかしいと感じていたが日本に来て日本人と接することで日本の悪いイメージが覆り日本人であることに自信を持てるようになった。お互いに悪い部分をクローズアップするのでなく自分の目で見て感じて互いの国を知ることが大事」と語りました。

 特別報告として、飯田日中友好協会理事長の小林勝人さんが一昨年春阿智村に開館した「満蒙開拓平和記念館」について映像を使って展示内容や参観者の動向など説明、これからも開拓団の悲劇を若い世代に伝える平和教育の基地としての役割を果たしていきたいと語りました。また昨年記念館スタッフが中国東北を訪問した際に、ハルピンで残留孤児養父母の会の責任者と出会い記念展示や活動を知ることができたことなどを紹介しました。

 第2部の東京中国歌舞団の公演では、陽二蓮さんの歌の世界と劉錦程団長の揚琴演奏を楽しみました。会場は春節の華やかな雰囲気に包まれました。最後に陽さんのリードで「北国の春」と「大海啊、故郷(海はふるさと)」を歌いました。

 第3部の春節交流会では長野市日中女性委員会の皆さんが友好の黄色のハッピ姿で、交流会を進行し・盛り上げに大活躍でした。アトラクションとして臼と杵を使って、帰国者の皆さんが次々と餅つきを体験しました。抽選会も行われくじを引き当てた人たちが羊のぬいぐるみや切絵のカレンダーなどの景品を受け取って喜んでいました。松本、飯田、上田、長野の日本語教室に通う帰国者の皆さんが「早春賦」「ふるさと」「ソーラン節」「長野賛歌」などを一生懸命歌い大きな拍手を受けました。最後に中国の東北地方に伝わるヤンコー踊りを会場いっぱいににぎやかに踊りました。参加した帰国者の皆さんは「中国の春節を祝いながらみんなと集まれるこの会を毎年楽しみにしている」と語っていました。

 飯田下伊那、伊南、松本、佐久、上田、千曲、長野、中野、飯山などからおおぜいの帰国者や支援者、市民のみなさんが参加しました。中澤敏正県地域福祉課長補佐、宮川あゆみ同係主査、小林佑一郎元中国帰国者定着促進センター所長、田中幸廣長野市厚生課長、朱丹陽中国国際放送局孔子学堂担当者、森田恒雄・中沢道保・福沢宏夫・清水えい子各県日中副会長、池上一巳上田日中会長、西沢毅県日中帰国者留学生委員長、金子繁三長野市日中理事長、布施正幸帰国者交流センター次長らも出席し帰国者を激励し交流しました。




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