村山元総理長野で講演、両国関係の危機打開を訴える(11/12)

 長野県日中友好協会・県日中経済交流促進協議会・県日中学術交流委員会は11月12日、日中平和友好条約35周年にあたり講演と記念のつどいを長野市内のホテル犀北館で開きました。講演会には、200名余が出席。村山富市元総理が「村山談話を語る−日中関係の危機を打開し新たな友好関係を築くために」と題して記念講演しました。講演終了後、先生を囲んでパネルディスカッションと記念パーティーがおこなわれました。村山談話の歴史的意義を再認識し、尖閣問題で厳しい試練にさらされている日中関係の現状を冷静に見つめ、危機を打開しようとする熱意あふれる有意義な1日となりました。

 夏目潔・県日中経済交流促進協議会会長の開会のあいさつに続き、井出正一・県日中友好協会会長が主催者を代表して「日中関係はまだもろいものがあるが、切っても切れない間柄であり、粘り強く民間の交流を進めていきたい。日中は好き嫌いでなく正面から付き合っていかなくてはならない。村山談話の当事者である先生から貴重なお話をお聞きし、改めて日中関係の重要性を認識する機会としたい」とあいさつしました。阿部守一・県知事が先の訪中で河北省長と率直に今後の交流協力について話し合いができたことを紹介し、日中の民間交流、地方政府同士の交流の重要性を訴えました。

村山元総理は、アジアへの植民地支配と侵略を認め反省と謝罪を発表した「村山談話」(1995年)について、「戦後50周年の年に自分しかできない歴史的な役割だった」と当時の心情を明かし、アジアの一員として日本がアジアから信頼される国になる、そのためには戦争の反省、歴史を教訓として未来に向かって手を携えて進んで行く必要性を強調しました。その後の歴代内閣が村山談話を踏襲し、2008年の福田・胡錦濤会談では戦後の日本の平和的発展を中国側が初めて評価し「戦略的互恵関係」を築いて行く約束をしたことを振り返りました。

 尖閣問題については、両国政府間で実質的に棚上げにしていた領土問題が「国有化」によって両国関係に大きな困難をもたらした経緯を紹介した後、「無人島をめぐって第2第3の経済大国が争うべき愚はやめ、冷静に対応し話し合いにより平和的に解決すべきだ」と述べました。また最近の村山談話や河野談話を否定するかのような動きや憲法改正の動きに対して危惧を表明し、政治家は、ナショナリズムを刺激しあうのではなく、周辺諸国と仲良くして行くこと、アジア全体の平和と繁栄を考えるべきであり、そのためには日中が手を携え軸となって行くべきだと述べました。

講演後、村山元総理を囲んで井出正一・県日中友好協会会長、上條宏之・県日中学術交流委員会副会長、山根敏郎・県日中経済交流促進協議会副会長をパネラーに、西堀正司・県日中理事長がコーディネーター役をつとめ、パネルディスカッションが行われました。

 村山内閣で厚相を務めた井出会長は両国関係の打開を目指して「村山談話の精神を今こそ大事にしなければならない」と強調しました。上條氏は村山談話の意義を再確認した上で、未来志向の関係は歴史を踏まえて初めて出てくる。日中関係は厳しいが民間・若者・経済界・学術などいろいろな分野で交流を進め東アジア共同体の基礎を作って行くことが大事だと述べました。山根氏は中国は日本にとって大切な国であり、友好活動は困難があっても粘り強く進めたい、健康長寿の源でもあると述べました。

 村山元総理は総理在任中の心構えや、辞意を固めたときの心境、クリントン米大統領との会談ではアメリカの重圧を感じつつも主権国家の代表として意見を述べた体験などを紹介しました。また「杖るは信に如くは莫し」(よるはしんにしくはなし=信義に勝るものはない)との信条や長寿の健康法を語っていただきました。

 県内各地から集まった聴衆は熱心に耳をかたむけ、両国関係の改善、民間交流の継続と深化の必要性を心に刻みました。

 第2部の祝賀パーティーでは、立石昌広・県学術交流委員会事務局長の開会と井出会長のあいさつに続き、倉田竜彦・県日中友好促進議員連盟会長、村石正郎・県議会前議長、塚田佐・元長野市長、朱丹陽・中国国際放送局日本語部・長野ラジオ孔子学堂中国側責任者、張金霞・県国際交流員、王昌勝・県華僑総会会長、穂苅甲子男・信州葫蘆島友の会会長らから祝辞をいただきました。会場では友好の大切さを思い激励しあう姿が見受けられ、和やかな交流がおこなわれました。最後に小池明・上田女子短大学長の音頭で日中友好万歳で締めくくりました。

 吉田博美・参議院議員(代)、若林健太・参議院議員(代)、白鳥博昭・県国際課長、岡村重信・県経営者協会事務局長、木藤暢夫・県商工会議所常務理事、井出康弘・県中小企業団体中央会事務局長、細野邦俊・県商工会連合会専務理事、白井千尋・県信用保証協会会長、浦野邦衛・JA長野中央会地域農政部長、中山千弘・連合長野会長、古川幸雄・部落解放同盟県連書記長、安田政寛・県針灸師会会長、桜井啓司・県武術太極拳連盟会長、手塚久盛・信州大学国際交流課長、藤原一二・松商学園理事長、福沢務・松本短期大学学生部長、酒井康成・松本歯科大学法人室留学生課主任など各界来賓が出席しました。

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