平和的発展の道をあくまで歩もう

戴秉国 国務委員

中国共産党第17期5中全会が採択した「国民経済と社会発展の第12期5カ年計画制定に関する中国共産党中央の提案」は、わが国の今後の5カ年間の発展の偉大なる青写真を描いた。対外活動に関する部分においては、平和・発展・協力の旗を高く掲げ、独立自主の平和的外交政策を実施し、平和的発展の道をあくまで歩み、相互利益とウィン・ウィンの開放戦略を堅持し、わが国の主権、安全、発展利益を擁護し、世界各国とともに、平和が持続し、共同で発展する調和の取れた世界の建設を推進することを提起した。これは、現代中国が対外的にいかなる旗を掲げ、いかなる道を歩み、いかなる目標に達し、いかに目標を実現するかに関する深遠な説明であり、新たな情勢下での対外活動をしっかりと行うことにとって、重大かつ現実的な意義と深遠な歴史的意義を有する。

1・なぜ中国は平和発展の道を歩むことを提起するのか

 平和発展の道をあくまで歩むことは、主観的想像、あるいは、頭の中で生み出された産物ではなく、我々が現代世界に大きな変化が生じ、現代中国に大きな変化が生じ、現代の中国と世界との関係にも大きな変化が生じ、事態の発展に応じて有利に導き、時に応じて変化し、世界の発展の潮流と合致し、また、自国の国情とも合致する道を歩むべきであるとの深い認識にいたったことに由来する。

 現代世界ではまさに広範かつ深刻な変化が生じている。経済のグローバル化と情報化が突っ込んだ発展をとげ、科学技術が急激に進歩したことにより、世界はますます「小さく」なり、「グローバル・ビレッジ」となった。各国の相互連関、相互依存及び利益の融合は過去に例のないほどに達し、共通利益はますます幅広いものとなり、連携して対処すべき問題はますます多くなり、相互利益協力に対する願望はますます強くなり、ある意味において、世界はすでに一種の「利益共同体」となっている。いかなる国家、たとえもっとも強大な国家であれ、独善的となり、単独で闘うことは不可能であり、いかなる国家の行為であれ、自らに関わるだけでなく、他国にも重要な影響を生み出す。自らだけを省みて他者に配慮せず、武力によって他者を征服、威嚇し、あるいは、非平和的手段によって発展の空間や資源を求めるこの種のやり方は、ますます通用しなくなっている。イデオロギーによって線を引き、さまざまな理由によって徒党を組み、一国または数カ国が世界事務を総覧するやり方はますます人心を得られなくなっている。日増しに高まる各種のリスクと課題に向き合い、平和を求め、発展を図り、協力を促すことはすでに遮れない時代の潮流になっている。各国にとっては、同じ舟で互いに「押し合う」のではなく、同じ舟でともに渡り(同舟共済)、同じ舟で互いに「闘う」のではなく、同じ舟でともに渡る(同舟共渡)ことだけが解決策である。

 現代中国では、まさに広範かつ深刻な変革が生じている。30数年にわたる改革開放を経て、我々は、「階級闘争を要とする」から、経済建設を中心とするに至り、社会主義現代化の事業を全面的に推進した。計画経済から、各方面における改革を推進するにいたり、社会主義市場経済体制を構築するに至った。封鎖状態と自力更生の一面的強調から、対外開放を実施し、国際協力を発展させるに至った。イデオロギーによる線引きから、各種の社会制度及び発展モデルの調和の取れた並存を主張するに至り、対外関係を全方位に発展させるに至った。中国の変化は驚天動地と述べるにふさわしい。われわれには、わが国の基本的国情から出発して、現段階の発展段階の特質をしっかりと把握し、改革開放を突っ込んで推進し、経済発展のモデル転換を加速することが差し迫って求められている。

 現代中国と世界との関係にも、歴史的変化が生じている。改革開放の絶えざる深化、及び、経済社会の絶えざる発展に伴い、中国は日増しに国際社会に溶け込み、世界との関係は一段と緊密になっている。中国の前途と命運は、日増しに世界の前途と命運に関連するようになっている。中国の発展は世界と切り離せず、世界の繁栄と安定も中国と切り離せない。仮に我々が、外部世界との関係を良好に処理できない場合、新世紀最初の20年における、国際情勢の相対的平和、大国関係の相対的安定及び新たな科学技術革命の急速な発展がもたらす発展のチャンスが失われかねない。

2.平和的発展の道とは、どのような道であるか

 平和的発展の道をあくまで歩むことは、胡錦濤同志を総書記とする中央指導グループが時代の特質と中国の国情を深く把握し、国内・国際の2つの大局を総合し、他の大国の発展の経験と教訓を手本として研究することを基礎として提示された斬新な発展の道であり、わが国の発展戦略の重大な選択であるとともに、わが国の対外戦略の重要な表明でもある。

 自分(戴秉国)は、この道の特徴を「5つのものが合わさって1つとなる」(五合一)と総括する。第一に、発展の平和性を強調する。中国は、西洋列強のような侵略、略奪、戦争、拡張を行わず、また、われわれの力を世界の平和に役立て、発展と平和を有機的に統合する。第2に、発展の自主性を強調する。独立自主は中国外交の根本的特質であり、自力更生はわれわれの良き伝統である。30数年来、我々は、発展の出発点と重点を一貫して国内に置き、主として改革開放に依拠し、自らの知恵と勤勉に依拠し、耐えざる内需拡大に依拠し、経済発展モデルの転換に依拠して自らの発展を模索してきた。第3に発展の科学性を強調する。人を基礎とし、持続可能な発展を全面的に協調させるという科学的発展観の要請に基づき、国民経済の良好かつ急速な発展の推進に尽力し、調和の取れた社会の建設を積極的に推進し、平和発展のプロセスのための良好な国内環境を確保する。第4に、発展の協力性を強調する。中国は、国際大家族の一員であり、風雨に舟を同じくし、利益を分かち合い、責任を分担することこそが、自国と他国の利益にもっとも合致する。我々は、対外的には友好的であるべきであり、敵視してはならない。協力すべきであり、対抗すべきではない。互いに信頼すべきであり、互いに疑ってはならない。対等に付き合うべきであり、他者に強要すべきではない。第5に、発展の共同性を強調する。中国は自らの国益と人類共通の利益の一致性を堅持し、自らの発展と同時に、世界各国との共同発展の実現に努力し、決して他者を損なって自らを利したり、私利私欲を図るようなことは行わない。我々は、自らの発展を願うのであれば、他者を発展させる必要があることを知っている。自らの安全を願うのであれば、他者を安全にする必要があることを知っている。自らの良き暮らしを願うのであれば、他者を良く暮らさせる必要があることを知っている。

3.中国の発展の方向性及び戦略の意図は何か

30数年にわたる改革開放、特に、北京五輪の成功及び世界金融危機の試練の経験を経て、中国の戦略の方向性は、一段と国際社会の注目を集めている。ここで指摘すべきことは、いわゆる中国の戦略的意図は、一部の人が想像するほど複雑ではなく、見通しが難しいものではなく、我々が人に告げない目的や野心を隠し持っているというようなものではない。実際、中国の戦略的意図は、平和的発展という文字がすべてである。それは対内的には調和と発展を求め、対外的には平和と協力を求めるというものである。これは今後の長い時間、われわれの数世代、十数世代、ひいては数十世代の人が願うことであり、行うべき事であり、我々が百年間、千年間ゆるがせにしない1つの方針である。具体的に述べると、それは、平和的手段を通じて、自らの制度の不断の改革と整備を通じて、中国人の辛苦奮闘と創意・創造を通じて、世界各国との友好的共存、及び、対等かつ相互に利益を得る協力の継続を通じて、上述の目標を実現し、人類の5分の1強を占める中国人を貧困から脱却させ、比較的良好な暮らしを送らせ、中国を人々が安心して生活して愉快に働き、皆が仲良く共存し、政治文化、物質文化、精神文化、人間と自然が協調して発展する国柄とし、国際社会においてもっとも責任ある、もっとも文明的で、もっとも法規と秩序を遵守するメンバーとすることである。この過程において、我々は、中国の国情に基づいて社会主義的民主政治を発展させる必要がある。総じて、中国が貧しかった時代は遠くに去り、最大の戦略意図は自らの生活を日々、年々良いものとし、地球上の人々の生活を日々、年々良いものとすることであり、それ以外に他意はない。我々の党は、このプロセスを「平和的発展」と称し、平和的発展の方式、手段及びルートを「平和的発展の道」と称する。まさに人々が目にしているとおり、この道は、すでに第17回中国共産党大会報告の中に厳かに書き入れられ、今次全会でも「第12期5カ年計画」に関する提案のかたちで確認され、平和的発展の道を堅持するという中国共産党員の誠意と決意が見て取れる。

4.中国が得た発展をどう見るか

 改革開放の30数年来、中国は、世界の注目を集める経済社会発展の成果をあげた。特に近年、中国の発展は一段と国際社会の注目を集め、多くの人は、中国がすでに先進国であり、米国と対等な立場に立てるようになったと認識している。この議論は、一方では、平和的発展の道を歩むことで国の発展が完全に実現でき、我々の選択が正しいことを説明する。また一方では、こうした人々が中国の発展の状況や程度について、全面的理解を欠いていることを説明する。実際、中国のGDPがいかに大きくとも、発展の成果は13億人で分かち合う必要がある。現在、我々の1人当たりのGDPは3800ドルに過ぎず、世界ランキングは104位前後であり、ひいては、多くのアフリカ国家を下回る。国連による1人あたり1日1ドルという生活水準に基づけば、中国では今日、まだ1.5億人が貧困ライン以下で生活している。1人あたり収入1200元という貧困水準に基づけば、中国ではまだ4000万人以上が貧困を抜け出していない。現在、まだ1000万人が電機を使えず、さらには毎年2400万人の雇用問題を解決する必要がある。中国は人口が多く、基盤が弱く、都市と地方の発展は均衡を欠き、産業構造は合理性を欠き生産力の未発達は根本的に変化しておらず、いずれにしても人口大国、経済小国であり名実伴う開発途上国である。我々が遭遇する経済・社会問題は世界で最も大きく、最も解決が難しい課題であると言うべきであり、自らの大きさを誇るべきいかなる元手も有しない。中国は真に発展し、人民に比較的良好な生活を送らせる必要があり、まだ歩むべき長く苦しい道があり、数世代ひいてはさらに長い時間をかけたたゆまぬ努力を必要としている。中国の1人あたりのGDPが米欧日等の西側諸国に近づく日が来たとしても、我々の経済・生活の質は、まだ西側諸国に遠く及ばない。

 特に指摘しておくべきは、仮に中国が今後強大になったとしても、依然として開発途上国の一員であり、引き続き揺らぐことなく、広大な開発途上国の側に立ち、団結協力し、共同で発展するということである。これは我々共通の歴史的邂逅、共通の闘いのよしみ、共通の発展の課題、共通の戦略的利益によって定められたものであり、中国自身の経済発展及び国際的地位の変化によって変化することは決してありえない。過去、現在及び将来においても、中国は一貫して、開発途上国にとって最も誠実で、最も信頼に値する友人、兄弟、パートナーである。我々と開発途上国の関係発展のプロセスにおいて、まだ改善、強化すべきポイントが存在するにせよ、中国と広大な開発途上国の協力は公明正大なものであり、対等な付き合い、相互利益とウィン・ウィン、誠実な友好によるものであり、いわゆる「新植民地主義」の帽子は、どのようなことがあっても中国の頭上にかぶせることはできない。

5.中国は発展した後、世界で覇権を争うことはないのか

 この懸念は不必要である。覇権主義反対は、すでに中国の憲法に書き入れられており、中国共産党の党規約にも書き入れられている。おそらく、世界のいかなる大国、いかなる政党も、こうしたことを行っていないであろう。

 歴史的に見て、中国は拡張して覇権を唱える文化や伝統を有さない。我々には、「仁」と「和」を核心とし、「和を貴しとなす(和為貴)」、「周囲と仲良く親しむ(親仁善隣)」、「万国を協和させる(協和万邦)」という数千年に及ぶ政治文化の伝統を有する。数百年前、中国は最も強大で、GNPが世界の30%を占めた時代においても、拡張を行わず、覇権を唱えなかった。鄭和はかつて、世界で最も強大な船団を率いて7回西洋に赴いたがもたらしたのは血や炎、略奪や殖民ではなく、磁器や絹、茶葉であった。中国の盛唐の時代、日本が中国から受けたのは脅威ではなく、繁栄であった。前漢以来中国の版図はおおむね現在と同じようであった。

現実的に見て、経済のグローバル化の時代において、一国の振興は、対等で秩序があり、互いが利益と恩恵を受ける国際競争・協力を通じて実現することが完全に可能であり、国際秩序や他国に対して挑戦するという古い道を再び歩むことは不必要であり、不可能である。世界における一部の大国の盛衰の経験と教訓は、我々に次のようなことを教えてくれる。拡張主義の道を歩むことはできず、軍備競争の道は歩むことはできず、世界に覇権を唱えることは行き止まりとなる。平和的発展こそが、唯一正しい道である。中国は、発展するにつれて、世界各国との協力の強化を一段と必要とし、平和で安定した国際環境を一段と必要とする。相互利益とウイン・ウイン及び共同発展は、我々の改革開放30数年来の対外関係において得た、最も大きく、最も深い理解であり、我々が獲得に成功した大きな宝でもある。我々は、この宝をしっかりと保持し、決して手放すべきではない。

我々の根本的政策からみるに、先頭に立たず、覇権を争わず、覇権を唱えないことは、基本的な国策であり、戦略上の選択である。1国が世界の脅威となるか否かにつき、要となるのは、その国がいかなる政策を実施するかである。我々は一貫して、平和共存5原則を堅持し、各国人民が発展の道を自主的に選ぶ権利を尊重し、覇権を唱えることは決して行わず、世界を主導することも求めない。鄧小平同志はかつて、仮に中国がいつの日か世界で覇権を唱えれば、世界の人民はそれを白日の下にさらし、中国に反対し、打倒すべきであると述べた。この点において、国際社会は我々を監視している。

中国が米国に取って代わり、世界に覇を唱えるという説に至っては神話である。我々は政治上、中国の特色を有する社会主義を実施し、社会制度や発展モデルを輸出せず、社会制度と発展路線に対する各国人民の選択を尊重する。我々は経済上、引き続きひたすら発展を図り、各国が繁栄と発展を続けることを喜んで眺め、共同の進歩を模索する。我々は軍事上、軍備競争を行わない。我々が最初に考慮すべきは、13億人の中国人がより良く着て、より良く食べ、より良く暮らし、より便利に移動できることであり、大規模な資金を軍事費に費やすことは不可能であり、望んでもいない。

我々は、自ら覇権を求めず、また、我々の本地域において他国と覇権を争い、共同覇権とやらを実施し、「モンロー主義」とやらを実施することはしない。我々が実施するのは、「隣国と親しみ、隣国を安心させ、隣国を富ませる(睦隣、安隣、富隣)」という周辺外交政策である。アジア太平洋戦略の出発点及び立脚点は、自らの発展に向けて、安定した良好な周辺環境を構築し、関連各国との相互利益とウイン・ウインを実現することであり、ASEAN及びアジア各国の良き友人、良き隣人、良きパートナーであり続けたい。われわれとアジア国家が署名するバイ及びマルチの合意においては、いかなる排外的条項も存在しない。我々は、地域協力に対して開放的姿勢を保つ。我々の意図は透明であり、善意に基づいている。我々もまた、関連国の行いが中国に対する防備、抑止、侵害を目的としないように願い、中国人が数千年にわたって生存、発展してきた本地域、我々の門前における関連国の言動も善意に基づく、透明なものであることを願う。仮に中国の発展をチャンスとみなし、このチャンスをうまくつかむことができれば、そこから利益を得られるであろう。仮に、中国の地域・国際戦略の意図を常に疑い、言いがかりやトラブル探しに主なエネルギーを割くのであれば、中国との協力の機会を失うであろう。仲間と徒党を組んで中国に対抗し、中国を封じ込めるこの種の計略や、地域国をそそのかしして仲たがいをさせたり、中国近海で合同軍事演習を行うようなやり方は、典型的な冷戦的発想であり、時宜にかなわないだけでなく、中国の発展をこばむこともできず、さらには、中国との協力関係を発展させる歴史的チャンスを失うこととなり、行き詰ることは確実である。

国際社会の一部の者は、「能力を隠して力を蓄え、なすべきことに取り組む(韜光養晦、有所作為)」という中国の語につき、中国は平和発展の道を歩むことを表明しているがこれは自国がまだ強大でない状況においてめぐらせた一種の陰謀・計略なのではないかと疑っている。実際これは根拠のない疑いである。この語は、鄧小平同志が1980年代末、90年代初頭に述べたものであり、主な内実は、中国が謙虚さと慎重さを保ち、先頭に立たず、旗を掲げず、拡張せず、覇権を唱えないというものであり、平和的発展の道の思想と一致する。

総じて中国は、世界に対して、善意を有し、行動に責任を負い、他者を尊重するが、他者による侮りを許さない国家である。自らの国情に基づき、社会主義的民主主義を絶えず発展させ、人権を重視し、尊重し保護する国家である。進むべき道には幾多の困難があるが、思想は永遠に硬化せず、一貫して改革開放を堅持し、他者から虚心に学び、各国との対等な付き合い、調和の取れた共存、相互利益とウイン・ウイン、共同発展を図る国家である。平和的発展の道を堅持し、各国に対しては心の扉を開け放ち、誠実に向き合い、公明正大であり、世界が落ち着き、安心しかつ自信をもって交流できる国家である。国際社会は中国の平和的発展に対し、恐れるのではなく歓迎すべきであり、こばむのではなく助けるべきであり、圧力をかけるのではなく支援すべきであり、平和的発展のプロセスにおける、中国の正当かつ合理的な利益と関心を理解し、尊重すべきである。

6.急速に発展する中国は、如何にして他国との関係を処理するか

中国の俗語にいわく、同じ鍋で召しを食べれば、鍋のふたがお玉とぶつからないはずはない。我々は、同じ1つのグローバル・ビレッジに暮らしており、国家間のあれこれの問題や摩擦は免れがたく、大騒ぎするには値しない。要となるのは、問題が生じた際、いかなる原則に基づいて処理するかである。わずかな恨みでも必ず報いるのか、些細なことを大げさに取り上げるのか、あるいは、まったく異なる手法を採るのか。我々が国際関係を処理する際の基本原則は以下の数点であり、数十年にわたってその有効性は証明されている。第1に、あくまで平和共存5原則に基づき、あらゆる国家との関係を発展させる。内政干渉を行わず、武力の使用をちらつかせず、不公平な扱いをせず、徒党を組まない。第2に、相互利益とウイン・ウインの開放戦略をあくまで実施する。隣人を邪魔者扱いせず、人を陥れて自らを利するようなことをせず、共通利益を重視し、共通利益を発展させ、共通利益を擁護し、共通利益のケーキを更に大きく、良いものとする。第3にあくまで相違を残して共通点を求め、対話と協議を行う手法によって、問題や不一致を解決する。我々はここ数年、この分野で多くの活動を行い、米国、欧州、日本及び一部の新興大国と戦略的対話・協議メカニズムを構築し、現代世界及び二カ国間関係に関わる大局的・長期的な重大問題について突っ込んだ意見交換を行い、相互の理解と信頼を増進し、戦略的共通認識を模索し、共通利益を拡大し、トラブルや波乱を減らした。我々は、当面解決できない問題については、ひとまず置いておき、条件とタイミングが成熟した際に改めて取り上げ、一部の問題は我々の子孫の代に解決することができると主張している。

ある人は、中国政府が武力による台湾問題の解決を放棄する旨約束せず、中国の軍事費が次第に増加していることにつき、平和的発展の道と矛盾するのではないかと考えている。自分の見解としては、いかなる発展の道を選んだとしても、国家の重要利益を犠牲にすることはできず、特に、核心的利益を代償とすることはできない。我々の核心的利益とは何か。自分個人の理解としては、第1は、中国の国体、政体及び政治の安定、すなわち、共産党の指導、社会主義制度、中国の特色ある社会主義の道がこれである。第2は中国の主権の安全、領土保全、国家の統一である。第3は、中国の経済社会の持続可能な発展という基本的保障である。これらの利益を犯すこと、破壊することは許されない。

台湾問題は、中国の統一と領土保全に関わることであり、中国の核心的利益に関わり、13億人の中国人民及び全ての中華子女の民族感情に関わる。台湾問題において、我々は、「平和的統一、1国制度」の基本方針を実施し、台湾の中国からの分裂を決して許容せず、武力使用の放棄を決して約束しない。これは台湾同胞に対するものではなく、主に少数の「台湾独立」分裂勢力に対するものである。近年、海峡両岸関係の平和的発展は前向きかつ重大な発展を得ており、双方は両岸経済協力枠組み合意に署名した。これは両岸関係の平和的発展に、一段と幅広い見通しを切り開いた。しかし、一部の国は、冷戦思考と地政的需要によって、中国側の断固たる反対を顧みず、依然として対台湾武器売却をあくまで維持している。こうした言行不一致のやり方は、両岸関係の平和的発展に資することなく、アジア太平洋地域の平和、協力及び発展の潮流に背いており、早急に捨て去るべきである。

中国が防御的な国防政策を実施し、国防建設を強化する目的は、国家主権と領土保全を防衛し、我々の22,000キロ以上に及ぶ陸上国境及び18,000キロに及ぶ海上国境を保全し、我々の平和的建設を保全するためであり、軍備競争の必要性から生じたものではなく、覇権を争うためでもなく、対外拡張を追及するためのものでもない。国際社会の一部の人は、中国が増強を続ける経済的実力を軍事力に転化することを懸念しているが、これはまったくの杞憂である。米日等の多くの国と比較して、中国の軍事力の水準は、総額においても、1人当たりの額においても相当低く、外部に対していかなる脅威も与えない。いわゆる透明性につき、世界には軍事面で絶対的に透明な国家は存在しない。むしろ、中国の軍事透明度は、数十年で向上を続けており、特に我々の戦略的意図は、多くの国家、特に主要大国よりも透明である。たとえば、我々は永遠に覇権を唱えないことを世界に向けて宣言しており、核兵器を先制的に使用せず、非核国家に対する核兵器の使用または使用の威嚇を行わない旨、全世界に向けて公に約束している。仮に他国もこれにならえば、世界の平和、安定及び発展に大きな貢献となることは疑いない。

7.中国は日増しに高まる実力と影響力を如何に運用するか

 中国の発展目標は一言に尽きる。それは、対内的には調和の取れた社会を構築し、対外的には調和の取れた世界の構築を推進するというものである。すなわち中国は、まず13億人の中国人民に責任を有すると同時に、世界の人民に対して、世界の平和と発展に対して責任を有し、中国の発展の成果を国内民衆及び国際社会に享受させるということである。現在国際社会においては、我々の「一心不乱に建設を行い、一意専心して発展を図る」という方針に対する誤解が存在し、中国が国際的責任をおろそかにし、国際的責任をおろそかにし、国際的義務の履行を望んでいないと認識されている。実際、改革開放の当初から、我々の党は、世界平和の擁護及び共同発展の促進を3つの大きな歴史的任務の1つとしており、近年はまた、平和が持続し、共同で発展する調和のとれた世界の建設推進を提起し、国際・地域事務に対する関心と投入を強化した。第1に、エネルギー、食料、気候変動、テロ、自然災害、伝染病、金融危機等のグローバルな課題、及び、朝鮮核問題、イラン核問題、中東問題、スーダンのダルフール問題等のホットイシューの解決に積極的に関与している。第2に国際システム構築に積極的に関与している。中国は国際システムにおける責任ある参加者であり、受益者であるとともに、構築者であり、貢献者でもある。現行の国際システムは、決して完全無欠なものではなく、時とともに進み、改革と整備を実施し、より公正かつ合理的なものとする必要がある。中国は今後、さらに積極的な姿勢で、国際ルールの制定と整備への関与を含むこのプロセスに関与し、引き続き、国力に応じた国際的責任・義務を果たしていきたい。第3に、発展のアジェンダの推進に積極的に関与する。一方で、我々は、中国の発展問題の解決に力を集中する。中国の発展は、世界の発展の重要な構成要素であり、中国が発展するにつれて、世界に更なる恩恵をもたらすことができる。近年、世界の経済成長に対する中国経済の貢献率は10%を上回り、国際貿易の成長に対する貢献率は12%を上回り、関連国・地域に千万単位の雇用機会を創出した。また一方では、中国は、グローバルな発展事業における重要な参加者にとどまらず、グローバルな発展事業の重要な推進者であり、世界各国とともに、国連ミレニアム開発アジェンダを共同で推進し、世界の繁栄と進歩を共同で推進したい。

8.平和的発展の道と中国の特色ある社会主義は如何に関係するか

 両者は、「1つの体の2つの面」ということができる。一方では、平和的発展の道は、中国の特色ある社会主義の本質的要請である。如何なる発展の道を歩むかは、根本的には、国家の属性が決定することである。資本主義社会と資本の貪欲な属性は、西側大国の台頭が必然的に侵略と拡張を伴い、必然的に血と暴力で充満することを決定づけた。中国は社会主義国であり、人民の豊かさ、社会的公正、国家の発展、世界平和という基本的目標を堅持する。我が国は、相当程度長い歴史の時代において、社会主義初級段階に位置し日増しに高まる人民の物質文化面の需要と、立ち遅れた社会的生産との間の矛盾は、依然として社会の主要矛盾である。これは、我々が一貫して発展を党の執政・興国の第1の急務とし、このために長期的かつ平和で安定した国際環境を創造すべきことを決定付け、また、「我々が行う社会主義は、社会的生産力を絶えず発展させる社会主義であり、平和を主張する社会主義である」(原注:鄧小平の発言)ことを決定付けた。また一方では、平和的発展の道は、中国の特色ある社会主義の重要な構成要素である。中国の特色ある社会主義は経済、政治、文化、社会、生態等の各分野において、さまざまに体現される。我々は、対外分野における中国の特色ある社会主義を平和的発展の道と称し、あるいは、平和的発展の道は、対外分野において、中国の特色ある社会主義の基本的属性、基本的特質、基本的内容及び基本的道筋を体現したとも言える。対外分野において、中国の特色ある社会主義の偉大なる旗を高く掲げることは、平和、発展、協力の旗を高く掲げ、一貫して変わらず平和的発展の道を歩むことである。これは、我々の党が世界の発展の大局を把握し、国内外の発展の経験と教訓を総括して得られた1つの基本的結論であり、我々がマルクス主義の中国化と現代化を絶えず推進することで得た1つの重要な成果であり、我が国が複雑で変化に富む国際環境において、科学的発展を実現した1つの根本的な証左でもある。

9.平和的発展の道を歩むことと、調和のとれた世界の建設とは如何に関係するか

 平和的発展の道を堅持することは、我が国が如何にして発展と振興を実現するかを世界に対して宣言するものであり、その実質は、国家の発展路線・戦略に関する我々の党の選択である。調和のとれた世界の建設の促進は、中国が如何なる世界、如何なる国際秩序の建設に力を尽くすかという問いに答えるものであり、その実質は、国際秩序に関する我々の党の主張及び行動準則である。平和的発展の道を堅持することは、調和のとれた世界の建設を促進する基礎であり、前提である。調和のとれた世界の建設の促進は、平和的発展の道を堅持することの必然的要請である。中国は両者の有機的統一を堅持し、愛国主義者であり、国際主義者でもある。中国が平和的発展の道を歩むことによって、世界の5分の1強の人が比較的よい生活を送れるようになる。これは全人類に対する巨大な貢献であり、中国の存在によって、この世界をより調和のとれたものとすることができる。我々は、世界に向けて、平和的発展の道を歩むことを公に宣言し、繰り返し強調し、中国の平和的発展は誠実なものであることを表明するだけでなく、より多くの国が平和的発展の道を行く列に加わることを希望している。仮にそうなれば、平和が持続し、共同で発展する調和の取れた世界は、我々1人ひとりから遠く離れたものではなくなる。逆に。我々の生活するこの世界が、より調和のとれたものとなれば中国の平和的発展の道はさらに平穏かつ順調に歩むことができる。この意味において、平和的発展の道をあくまで歩むことと、調和のとれた世界の建設を推進することは、お互いを条件とし、互いに促進されるものであり、誰も分割することはできない。

10.中国の平和的発展の道は実行可能であるか

 この道は実行可能である。全世界が、過去30年以上にわたり、われわれが自らの実践によって、後発国の振興には略奪、侵略、覇権争いが伴うという歴史の法則を打ち破り、グローバル時代において、勤労と知恵に依拠し、協力とウィン・ウィンに依拠して、全く新しい平和的発展の道を切り開いたことを目撃している。「第11期5カ年計画」の5年間における中国の発展は、平和的発展の道が希望の道であることをよりよく証明している。過去5年間は、我が国の総合国力が高まり続けた5年であり、我が国が国際協力に突っ込んで参加し、国際的地位と国際的影響力を大いに高めた5年であり、我が国が世界各国との関係及び対外活動を深化させ、絶えず重大な成果を挙げた5年であった。5年来、我々は、党中央及び国務院の正しい指導のもと、中心を取り巻き、大局に仕え、チャンスをつかみ、課題を解消し、「大規模行事を開催し」、「危機と闘い」、「発展を促し」、「イメージを構築し」、国家利益の新たな発展、対外活動の新たな突破を実現した。中央外事工作会議の成功は、国内・国際環境の発展の変化を全面的かつ深く認識するという基礎に立って、我が国と世界との関係に歴史的変化が生じていることを強調し、国内と国際の2つの大局を総合すること、平和発展の道を歩むこと、相互利益とウィン・ウィンの開放的戦略を実施すること、平和が持続し、共同で発展する調和のとれた世界の建設を推進すること等、一連の重大な対外戦略思想を想起し、新時代の対外活動が科学的発展の軌道に沿って前進するよう導いた。

5年来、我々は、国内と国際の2つの大局の総合を堅持し、全方位の対外活動の展開を通じて、国家の現代化建設のため、平和な国際環境及び有利な外的条件の創造に努力してきた。我々は、各大国、周辺国及び開発途上国との関係を着実に推進し、世界各国との友好協力を全面的に発展させた。マルチサミット外交を積極的に展開し、党・国家指導者はさまざまな場において、我が国の重大政策に関する主張を表明し、世界金融危機への対応をめぐる協力に積極的に関与し、国際経済システムの改革プロセスを推進し、気候変動への対応等のグローバルな問題に置いて、独特の建設的役割を果たした。「海外からの導入(引進来)」と「海外進出(走出去)」を結合させ、対外経済貿易協力を大いに展開し、国内における危機対応、安定確保、発展促進、経済発展モデルの転換に役立てた。北京五輪、新中国成立60周年、上海万博、広州アジア大会等の重大行事の開催を契機として、パブリック・ディプロマシーと人文交流を強化し、文明的、民主的、開放的、進歩的、責任ある大国という中国のイメージを一段と構築し、国際社会において友人と広く、深く交流し、国際世論を積極的に誘導し、かっかのソフトパワー建設の推進を絶えず深化させた。あくまで国家の主権と安全を擁護し、各種の分裂・破壊活動に断固反撃し、非伝統的安全分野における国際協力を積極的に展開した。人間を基礎とする、人々のための外交(という方針)を堅持し、海外企業・公民の合法的権益の擁護に努めると同時に、対外的には、大規模な国際救援活動及び平和維持活動を展開した。我々は幅広い国際協力を通じて、各国との共通利益を拡大し、相互利益とウィン・ウィンの共同発展を推進しただけでなく、各種形態の戦略対話及び政策協議を通じて、問題と不一致、疑念と誤解を積極的に解消した。

事実が証明するとおり、我々は、改革開放によって、経済グローバル化の潮流に順応し、平和的発展と国際協力を通じて、世界各国と友好的パートナーシップ関係を普遍的に発展させ、各種の問題と摩擦を適切に処理し、国際事務において建設的役割を果たし、公正かつ合理的な方向に向けた国際秩序の改革を推進し、時代の潮流に合致した平和的発展の道を歩むことが完全に可能となった。この道は、歩むほどに幅広くなり、歩むほどに希望がもたらされる。 2010/12/06             (了)





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