5度目の靖国参拝を批判する-2006年を日中関係の困難を克服し、相互信頼と友好協力を発展させる年に

 戦後60周年の年も余すところ1ヶ月あまりとなりました。
 日中関係は経済的には相互依存関係をますます深めお互いになくてはならない間柄となっていますが、この1年、靖国問題・歴史教科書問題・ガス田問題・反日デモなど政治的にはギクシャクした関係が大きくクローズアップされ、国交正常化以来最大の危機を迎えたといわれています。その核心は小泉首相のA級戦犯合祀の靖国神社参拝にあると多くの国民は見抜いています。10月の小泉首相の5度目の靖国参拝に戦争の被害をこうむった中国・韓国・アジア諸国の人々はもちろんアメリカの「ニューヨークタイムズ」(10/18)まで首相の行動を批判しております。世界の人々に「侵略戦争を反省しない恥知らずな日本人」と思われることはきわめて残念でなりません。日中韓の相互信頼関係を深め、東アジア共同体構想を進めていくべき大切なときに、それに逆行する愚行といわざるを得ません。「民族的責任の思想」を踏まえて、積極的にアジアそして世界の人々と付き合っていかねばならない時代です。
 心ある政界・経済界・言論界・文化スポーツ界はじめ各界の人士は心を痛め、行動を起こしております。こうした「政冷経熱」とも言われる関係を打開すべく国レベル・県レベル・地区レベルでさまざまな活動が行われました。県協会は、21世紀を日中両国の平和・友好・共生の世紀とすべく諸活動に取り組みました。4月長野で開催された第10回日中交流会議には中国及び日本全国から400名の代表が集まり真剣に議論し、民間交流を発展させて当面する日中間の危機を乗り越えていくことを誓いました。また戦後60周年に当たり記念講演と平和のつどい、河北省太行山緑化協力事業、留学生ホームステイ等さまざまな友好交流を実施し、県民に日中友好の重要性をアピールしました。
 明けて2006年は長野県日中友好協会創立50周年の年です。県協会は1956年9月9日に県連合会としてスタートしました。日中戦争の反省を踏まえ日中不再戦・平和友好の決意のもと、困難な情勢の中、多くの先達が友好活動に参加し細い険しい道を大きく広げてきました。現在、右翼的潮流が世を覆い平和の大切さが片隅に寄せられている時流の中での友好活動には一定の困難も存在していますが、先輩諸氏の友好の熱き思いを受け継ぎ守り発展させていく決意を持って、平和・友好・共生の理念の下、中国とのよしみを大切にし更なる友好交流を進めてまいりたいと存じます。
 「社会が日中友好協会に期待しているものは日中関係の大局に影響を及ぼす動きについては、必ず発言し、道理をもって熱意をもって人々に語りかけるべきである」(花岡堅而先生)、「戦争の反省ができれば日本人は大国民になれる」(堀内巳次先生)との言葉が胸にしみます。
 2006年を日中関係の困難を克服し、相互信頼と友好協力を発展させる年としましょう。

    (2005・11・21 布施正幸)

(参考資料)
 日中関係は経済的に相互補完の関係を強め貿易額も昨年すでに22兆円(1800億ドル)に達しているが、小泉総理の靖国参拝問題が影を落とし、反日デモは沈静化したが、歴史教科書問題、ガス田開発問題、台湾問題などさまざまな政治的ギクシャクが解決されない状況が続いている。10月の5度目の靖国参拝は、「政冷経熱」から「政冷経冷」となる危うさもはらんでいるとの指摘がある。歴代総理の中止要請にも耳を貸さず、高裁の違憲判決や慎重を求める世論も無視しての参拝強行に心ある人士は日本の中韓アジアからの孤立を憂えている。国連常任理事国入り問題も、アジアの支持が得られない状況で失敗した。こうした中で奥田経団連会長の両国政府への働きかけや、新たな国立戦没者慰霊施設建設議連の発足などの努力がなされており注目して行きたい