質問:希望の大学の教授についていないとだめですか

【回答】

 あなたの希望する大学が本当に優れた大学なら、それらの大学に合格しそこで学んできたあなたの先生も、優れた先生に違いありません。ですから、その大学を卒業した後、指導者として何年もの経験を積んだあなたの先生は、大学入試に必要な力くらいは、きちんとつけてくれるだけの実力を備えている、と考えるのが筋ではないでしょうか。少なくとも、私が指導者として経験してきた限りでは、自信を持ってこのことをいうことができます。
 
 そう考えると、あなたがレッスンを受けている地元の先生が、あなたを希望の大学の入学試験に合格させるだけの指導力がなかったとしたら、その先生が卒業された大学の指導力は本物だったのかどうか、大いに疑問になります。そんなレベルの大学だとしたら、あなたが受けるにふさわしい大学といえるでしょうか。

 今年も、都内のある音楽大学ピアノ科へ合格した私の生徒が言っていました。試験会場で聞いてみると、自分以外の多くの受験生は、そこの大学の先生についていたそうです。そこでちょっとは心配になったのですが、いざピアノの試験になって教室に入ってみると(5名づつ試験会場に入ったそうです)、その生徒たちの演奏は、想像したほど上手ではなかったようです。それで、自分の演奏を落ち着いてふだん通りにできたとのことです。結果は見事合格。

 この事実は、その大学の入学試験は、正に試験の成績だけによっていたという証拠ではないでしょうか。そうであれば、その生徒もご両親も、また指導された先生も、その大学の入学試験の公正さ、ひいては大学の教育に対する姿勢に、信頼を置くことができるのではないでしょうか。そのような信頼があって始めて、教育の第一歩を踏み始めることができるのではないかと、私は考えます。

 戦後50年もの間、地方の学生たちは中央の大学に学び、高度な知識や技術を身につけて、それらを地方に持ち帰ってきました。しかし、例えば音楽大学入学試験レベルのことで、未だに中央の大学の先生のご厄介にならなければならないとしたら、本当にそれまでの中央での教育は何だったのかと考えてしまいますね。そんなことの繰り返しのために、再びあなた方若い学生を、東京を始めとする大都市の大学へ送るのかと思うと、教える張り合いもなくなってしまいます。

 ですから、私は是非あなたにお話ししたいと思います。地方にあって地方の音楽教育のために頑張っているあなたの先生を、信頼してください。そして、見事大学に合格したら、そこからは大学の先生が、あなたを厳しく指導してくれる番ではないですか。

 ここで参考までに引用しておきたいものがあります。資料が古くて申し訳ありませんが(現在でも同様の記事は載せているかもしれませんが)、国立音楽大学は受験生のための冊子の冒頭に、次のようなコメントを載せていました。

「一番気にかかるところは、専攻実技の試験方法だと思います。国立の先生にレッスンを受けていないから不利だろう、とか。そういったことは決してありませんし、ありえません。何故なら、専攻実技の採点方法は次のようにして行うからです。 受験生は受験番号とは全く異なる整理番号を持って、試験場に臨みます。採点者は、その整理番号でのみ採点をします。そして、一人の受験生に対し、20数名の先生が採点に当たります。各採点者がつけた点数の集計は、まず、最高と最低とを切り捨てることから始まります。こうして切り捨てる点数を除外した、残りの点数の平均を取ったのが、その受験生の得点となるのです。 実技の試験方法はこのようなものです。ですから、受験生は腰をすえて、日常の勉強を自分のものにし、試験に臨まれるように期待します。」


 大学が試験の公平をはかるために、このような努力を払ってくれていることはうれしいことです。ですから、合格するためには、一にも二にも実力をつけることだと考えて、勉強に励んでいただきたいと思います。



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