最終更新日:2018年5月8日 
 117クーペ
117クーペa  その車は、1968年に鮮烈のデビューを遂げ、当時のカーマニアの羨望を集めました。
1981年に生産終了されるまでの13年間に3回のマイナーチェンジを経て作られたのは、僅か86,192台。
製造していたのは、今ではトラック専業のメーカーとなった、いすゞ自動車!ですが、ジウジアローによるデザインは、今なお”最も美しい日本車のひとつ”、とさえ言われています。

 ラ・フォーレさんチの117クーペは、1978年生産の三代目、いわゆる”角目の1800”です。
2013年11月に不動車を購入、オーナーがコツコツと修理して、2016年に車検取得、2016年と2017年の”レジェンド オブ ザ ラリー”(30年以上前に製造された車のラリー)に参加しました。このラリーには篠塚健次郎選手をはじめ往年の名選手が多数出場していて私のような若輩者が参加するのは少しばかり気が引けたのですが、長年の友人である石井君の『車を用意してくれたら参加費は出す!』との力強い声に奮起して何とか参加にこぎつけました。が、残念ながら2016年は、レトロさを追求しすぎて年代物のタイヤで出場、なんと途中でバーストしてしまい、42台中20位と低迷してしまいました。

 下の写真は、長野県蓼科を起点とした2016年の”レジェンド オブ ザ ラリー”のスタート風景です。
30年振りのラリー参加で、熱いものがこみ上げました!

 2017年には準備万端で出場、”1972年以降1979年以前に製造された車両”でクラス優勝、総合優勝とは4秒差で総合2位入賞しました!

レジェンド オブ ザ ラリー


まずは修理から

 陸送後、前のオーナーから『バッテリーがあがっているけれど、エンジンはかかるはず。』と言われていたものの、不安だらけで各部をざっとチェック。まずはエンジンスタート!と思いきや、スターターは廻るものの、全くかかる気配がありません。
どうもエンジンまでガソリンが全く来ていないようです。よく調べると、

 ガソリンタンクの中は、真っ茶色のヘドロ状態!でした。タンクを真っ二つに切開し、洗剤、サンポールで洗浄後、鉄アングルで組立、シール剤とクイックスチールで漏れ止め、という大工事になってしまいました。ガソリンメーターのセンサーも真っ茶色のドロドロでしたが、洗浄でなんとか生返りました。

 燃料ポンプも動いていませんでした。新品を買うとかなりの出費です。だめもとで分解、内部は意外ときれいです。清掃、再組立したら見事に復活!ラッキーでした。ごみでも噛んでいたのでしょう。燃圧はチェックしていませんが、リターンがちゃんとありそうなので、まあ、いいでしょう‥‥‥

 やっとエンジンルームまでガソリンが来ました。でもエンジンはかかりません‥‥‥
インジェクターが全部詰まっていました。この車、1978年製なのですが、ナント電子制御のインジェクションなのです。117クーペは日本初のインジェクション搭載量産車なんです。
 クリーナーを使い、低い電圧のオン・オフを繰り返し、全数無事動作するようになりました。流量チェックは出来ませんが、後でプラグのチェックでいいとしましょう、なんせ旧車ですから。
ただコールドスタート用のインジェクターだけは復活出来ませんでしたが、真冬でもちゃんと始動出来、全く問題ありませんでした。

 車検取得のためブレーキのマスターシリンダー、キャリパーやホイールシリンダーをメンテキットを使って修理しました。この関係はいすゞで部品が入手でき、順調に作業が続きます。
が、左フロントアッパーのボールジョイントのガタガタ!が判明。新品部品は入手出来ず、だめもとでYahoo!オークションで中古部品を落札、幸いガタの無い物を手に入れました。

 エンジンもかかり、ブレーキ、サスペンションも一応大丈夫そうなので、そろそろ車検に行けるか?と思いきや、助手席床下から熱気が‥‥‥
触媒の上部が熱で腐食し穴が開いていました。困り果てて、またまただめもとでYahoo!オークションで他車用の中古部品を落札、古い触媒のフランジを溶接して取付ました。CO、HCとも全く問題ありません。

 さらに、スピードメーターケーブルからオイル漏れを発見。ミッションのドリブンギアの内側のOリングが切れていました。ドリブンの外側にはシール剤がたっぷりと塗布されていて、どうやら前に修理した方は、内側のOリングをチェックしなかったようです。
 ミッションオイルを交換しようとしたら、なんとフィラープラグが丸くなっていて、バイスプライヤーやナットツイスタも歯が立ちません。結局フィラープラグに穴を開け、ハイテンボルトを差し込んで、なんとか回しました。作業時間5時間以上、三日間に渡る苦闘でした。

 ついに車検取得!と意気込んで松本の車検場に向かいましたが、途中から何やら怪しい雰囲気‥‥‥排気音が次第に大きくなってくるではありませんか。これはマズイ‥‥‥
え〜ぃ、ままよ、と車検場のラインに入り、排気ガス、ブレーキなど少し不安のあった項目も問題なくクリア。が、最後の下回りの検査でマフラーから排気漏れが判明!『今日中なら再検査出来るよ。』と検査員の方の暖かい声を受けたものの、途方に暮れて車検場を出ました。そうだ、手前にイエローハットがあったな!と思い出し、だめもとで(だめもとがヤタラと多くてすみません)排気漏れ用パテを購入、お店の駐車場で作業開始です(晴れててよかった!)。一カ所を埋めれば他から漏れ、を何回も繰り返し、昼食を鋏んで4時間、何とか静かになりました。パテがはがれないように出来るだけアクセルを踏まずに車検場に進入、無事再検査でオーケーとなりました。帰宅途中から再び排気音が勇ましくなり、即行で発注したのは言うまでもありません。


ラリーに向けて

117クーペナビパネル  ”レジェンド オブ ザ ラリー”は、規則上第1種アベレージラリーで、速いスピードを要求される事はなく、ロールケージや競技用のシーベルト、ヘルメットなどは無しでも参加出来ます。とはいえ、皆さん昔のラリー車を見事に再現してきます。117クーペは上級向けのラリーにはほとんど登場しませんでしたが、それでもかつてのビッグイベントである日本アルペンラリーに参加、完走しているんです。エレガントな印象の車ですが、雰囲気だけは負けないように、ラリーバージョンにしました。


ナビゲーション用品
 ”レジェンド オブ ザ ラリー”では、ラリーコンピュータの使用が禁止されています。オンタイム計算(指示された速度で走行する事)の為には、トリップメータ(距離計)と時計、それに計算道具が必要です。

 トリップメータは出来れば昔のハルダツインマスターが欲しい所ですが、ヤフオクで探すとなんと10万円!とても手が出ないので、雰囲気をねらって自作しました。一見機械式ですが、ステップモーターで機械式カウンタを駆動、PICで制御する電子式です。老眼対策で、入手可能な機械式カウンタでは最大の物を使っています。ただ2017年の”レジェンド オブ ザ ラリー”で競技中に一つが壊れ、ヒヤっとしました。

 時計は昔使っていたデジスタルというラリー用デジタル時計を出来るだけまねてみました。表示器はロシア製で、LEDではなく最近では全くお目にかかれないミニトロンタイプです(マニアック!)。回路もディスクリートTTLで昔ながらの回路構成です。

 左の写真のアナログ時計は40年以上前のホイヤー”スーパーオータビア”で、ストップウォッチを内蔵した時計です。当時はホイヤーと言えばモンテカルロ(ストップウォッチ)とマスタータイム(時計)をセットにしたラリーマスターが有名でした。最近復刻版が販売されましたが、目玉が飛び出るような価格でした。昔はモンテカルロもあったのですが、残念ながら手放してしまいました。勿体なかった‥‥‥

 計算道具は手動式の計算機、クルタを使いました。こちらも40年以上前の物ですが、驚く程快調に動きます。ビックリ、ビックリ!左の写真の右下に写っています。
昔ラリー中に落として、中のシャフトを曲げてしまったのですが、自分で修理した思い出の品です。その後は全くのノートラブルです。ただ動作は良いのですが、表示が小さく、老眼にはかなり問題あり、です。


117クーペ外観 ライト周り
 ”レジェンド オブ ザ ラリー”では、昼間しか走らないので、ライトはノーマルでオーケーなのですが、フォグライト無しでは、やはり格好がつきません。昔ながらのシビェ”オスカー”を入手、バンパー下につり下げました。なかなか似合っている、と思っているのは、私だけでしょうか?(ページトップの写真を見て下さい。)
 ヘッドライトもハロゲンに変更しました。これで夜でも安心して走れます。昔のシールドビームはとても暗かったんです。

内装関係
 速いラリーではないものの、ただでさえ昔のシートでは踏ん張りがききません。しかも大分よれていたので、バケットシートを取付ました。
ドライバー用は通気性を考えて表面が布製の物を、助手席用にはちょっとシャレて、ケーニッヒの本革製です(どちらも中古です)。表面の革がかなり変色していたのですが、染めQで適度な古さ感に仕上がりました。ノーマルシートとはホールド感がまるで違います。

 またまた雰囲気作りで、ロールバーも入れました。現在の速いラリーでは6点式以上のロールケージが必要ですが、こちらは格好だけの4点式。昔はこれでオーケーだったんです。ちゃんと作るとえらく高いので、AE86用の中古品を利用しました。117クーペはAE86より室内高が若干低いのですが、なんとか押し込めました。

 消火器も助手席床に付けました。こちらは雰囲気作り、ではなく安心のためです。一度古い燃料ホースからガソリンが漏れましたので‥‥‥

タイヤ関係
 これも速いラリーではないので普通のラジアルタイヤで大丈夫なのですが、雰囲気作りで、ラリー用のブロックタイヤです。2016年は、レトロさを追求しすぎて年代物のタイヤで出場、なんと途中でバーストしてしまい酷い目に会ったので、2017年はダンロップの新品のSP 83-R、サイズは175/70R13です。今時13インチは軽自動車用ですよね。

 ホイールはクロモドラのマグです。こちらも年代物の中古ですが、めちゃくちゃ軽いです。イタリアンな感じの117クーペには良く似合っています。



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