プロジェクト・ワイバーン
第一話
「ワイバーン出撃」
シナリオ準備稿
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 どこかの開発ルームらしい部屋の中で、二人の男性がコンピューターの画面を見ている。顔は良く見えない。コンピューターの画面には名簿がリストアップされている。

 画面の中でカーソルが、探るように上から順に降りてきて、幾つかの人物のところにマーキングをする。それらの人物の写真が数枚、別のウインドウに表示される。その中から一枚の写真が選ばれ、点滅。

マルク
 「・・・この青年か?」
ヘレン
 「みたい・・・です。完全にって訳じゃ、無いみたいですけど・・・」
レオ
 「許容範囲内って事か。ふうん、思ってたよりも軟弱そうな奴だったんだな」
ヘレン
 「軟弱そうだと、良くないんですか?」
レオ
 「だってパイロットだぜ? もちっと恐い顔してないと、らしくない」
マルク
 「まあらしいかどうかは別にして、パイロットだって言うのは大きいな。早速軍の方には連絡を取ろう。レオ、組み立てはどのくらいで出来る?」
レオ
 「一週間もすれば組みあがる。後はヘレンを載せるだけさ」

 青年の写真が大きくなり、その横に詳細なデータが表示され始める。名前に、「フィルツ・サージェイス」とある。安堵したような、呟き。

ヘレン
 「良かった。優しそうな人・・・」

オープニングテーマ

〇3年前の回想

 宇宙空間で、幾つもの爆発がきらめいている。巨大な小惑星が近くに見え、対艦レーザーの閃光が飛び交い、戦艦の爆発が、頻繁にあちこちで起こっている。襲いかかるゼカリア軍の戦闘機の前に、次々撃ち落とされていくアスフォデル軍の戦闘機、ヴァイン。やがてアスフォデル軍の拠点である小惑星の一部で、大きな爆発が起こる。後退を始める巨大な戦艦から、ヴァイン達に通信。

ドラグーンからの通信
 「旗艦ドラグーンより、各パイロットへ! 敵戦闘機との交戦を止め、速やかに母艦へと帰還せよ! 繰り返す! 各パイロットは、速やかに母艦へと帰還せよ! 作戦は失敗した、我が艦隊はこの宙域より撤退する!!」

 戦場を飛行する一機のヴァイン。そのコックピットの中で、フィルツ・サージェイスという青年が呆然となる。

フィルツ
 「撤退・・・。負けたのか、僕らは・・・!」

 突然コックピットに警告音が鳴り響く。彼のヴァインの背後に一機の敵戦闘機が現れ、レーザーを乱射し始める。レーザーの閃光がヴァインをかすめ、フィルツは必死でそれを回避する。ロックオンの警告音が鳴り響き、フィルツが死を覚悟したとき、不意に下からバルカンの光。爆発する敵戦闘機。

 フィルツが上を見上げると、過ぎ去ってゆく一機のヴァインが見える。青い機体の側面に、イナズマを示すマーキングが見える。

フィルツ
 「ブルーライトニング! 助かった・・・!」
ブルーライトニングのパイロット(ノイズ混じりの通信)
 「そこのへたくそ! 通信聞いてなかったのか!! 死にたくなければ、とっととエリュシオンに戻れ!」
フィルツ
 「(慌てて)りょ、了解! ヴァイン03フィルツ、帰投します!」

 転身してゆくフィルツのヴァイン。

 戦闘空母エリュシオンの甲板が見え、フィルツのヴァインがそこに着艦して行く。キャリアーに固定されて、格納庫に送られる。いくつものヴァインが並んでいる格納庫の中は凄然とした雰囲気。キャノピーをあけたフィルツは、自分が運ばれてきた通路の方を向く。キャリアーによって、続々と帰還したヴァインが格納庫に運ばれてくる。
 
フィルツ
 「礼を、言わなきゃ。彼は・・・」

 搬入口から、青いヴァインが格納庫に入ってくる。同時にゲートが閉じられ、格納庫内に空気が満ちる。整備士達から、これで最後だという声が聞こえる。しかし最後に入って来たそのヴァインは、彼を助けたヴァインでは無い(特徴的なマーキングが無い)。

フィルツ
 「違う・・・」

 呆然とつぶやくフィルツ。聞こえてくる、エース機が数機落とされたという会話。

 撤退してゆく、アスフォデルの艦隊。次第に艦隊が遠くなり、小さくなっていく。
 フィルツのナレーションが、そこに流れる。

フィルツ
 「・・・アスフォデル軍はこの戦いで、外宇宙最後の拠点要塞を落とされた。この時すでに、ゼカリアの保有兵器はアスフォデル軍のそれと比べ、性能的にも大きく上回っており、対抗することは難しくなっていた。アスフォデルでも対抗兵器の開発は進められてはいたが、第一次整備計画で配備されたヴァインタイプも十分な成果は上げられず、より強力な戦闘機の開発が、軍内部では急務となっていた。敵惑星ゼカリアの宣戦布告から、すでに7年が経過・・・。現在では第2惑星リーズの防衛ラインをはさみ、膠着状態が続いていた・・・」

 ワープインして消えて行く、アスフォデルの艦隊。


サブタイトル「ワイバーン、出撃」


 宇宙空間を航行中の、スティールライナー艦隊。

〇エリュシオン艦内
 フィルツの小さな個室。目を覚ますフィルツ。部屋は薄暗い。ベッドから半身を上げながら、フィルツは窓から外の宇宙をぼんやりと眺める。

フィルツ
 「夢、か・・・。あの時の・・・」

 フィルツの脳裏に、3年前の事が蘇る。フィルツを助けた青いヴァインの事を思い出し、暗い表情になる。

フィルツ
 「俺の変わりに・・・。でも、俺は・・・」

〇巡洋艦ストレイタム

 ストレイタムの艦橋。ガトラーがモニターに写っている補給基地を眺めている。階下のオペレーションフロアで、オペレーターの少女がキーを叩いている。

オペレーター、クリス
 「 ・・・グリーンオアシスから、接岸許可が降りました。ストレイタム、ローアの各艦は第04ポートへ、エリュシオンに限り、第12ポートへ直接接岸せよとの事です」
ガトラー
 「(いぶかしげに)第12ポート? 工場ブロックではないか。エリュシオンを改修するような話など聞いていないぞ。どういう事だ?」
クリス
 「分かりません。ただこの件については、追って通達があるとのことです」
ガトラー
 「極秘事項だと言いたいのか・・・。分かった。各艦へは管制官の指示どおりに通達。独立して接岸作業に入らせろ。補給も含め、今回は滞在が6日ほど許可されている。船を降りる者には”はめ”をはずしすぎんようにと、そう言っておけ」
クリス
 「(笑いながら)了解」

 各艦に回線を開き、嬉しそうに通信を始めるオペレーター達。
 
ガトラー
 「我々の艦隊に、長期の上陸許可が出るなど珍しいとは思っていたが・・・。まあいい。どんな話かは知らんが、どうせまた危険な任務の前祝いだろう。(ため息をつきつつ)だとしたら私も、今回は久しぶりに羽をのばすとするか・・・」

 スティールライナー艦隊が、グリーンオアシスへと向かってゆく。ある程度接近した所で、グリーンオアシスを取り囲むシールドの一部が開き、艦隊を招き入れる。艦隊が中に入っていくと、シールドは元に戻る。

〇補給基地グリーンオアシス

 宇宙船を修理したりするための、特別な第12ポート。エリュシオンが、そこに入っていく。ロックが動き、船体を固定する。それを研究室の窓から眺めている男。

レオ
 「定刻どおりに到着か。もう少し遅けりゃのんびりできたのに。さてさて仕事と。あわよくば、彼女と上手くやれる男である事を・・・」

 研究室で窓の外を見ながら、ちょっと笑う。

レオ「あいつの事を気にしてる。俺もすっかりマルクの癖がうつったなぁ」

〇第12ポート

 接岸エリアからエリュシオンへと通路が伸び、接続される。
 にぎやかにエリュシオンを降り始めるパイロットやクルー達。
 認識票をゲート設置のカメラにかざし、身分証明をしながらゲートを通過していく。
 その人の流れをじっと見ているポニーテールの女性。
 フィルツは一人、浮かない顔。一番最後にやってきて、同じように認識票をかざす。
 警告音。ゲートが閉じる。先に行けない。

フィルツ「・・・あれ?」

 困惑しているフィルツの前に、一人の女性が現れる。
 ポニーテールの若い女性。ジュリアである。

ジュリア「フィルツ・サージェイス少尉ですね?」
フィルツ「(ちょっと驚きながら)は・・はい」
ジュリア「少尉には、別室にお連れするようにと通達が来ています。どうぞこちらへ」
フィルツ「僕だけ・・・ですか?」

 上官からのサイン入りの指示書を渡しながら、うなずくジュリア。
 フィルツ、辺りを見回しながら、困惑した表情。

ジュリア「(強い口調で)こちらへ」
フィルツ「は、はい」

 きびすを返すジュリアの後ろで、また警告音。
 フィルツが認識票をかざしている。ゲートはしまっている。困った顔のフィルツ。
 ジュリア、軽蔑した表情。

〇宇宙空間

 望遠される、補給基地グリーンオアシス。
 通信しているのか、つぶやく声だけ。

男の声「例の艦隊がステーションに到着・・・。どうやら、間違い無いようだな。
    さて、どう攻めるか・・・」

〇グリーンオアシス 通路内

 エスカレーター式の通路。ジュリアが先頭。フィルツが後ろ。少し沈黙。

フィルツ「あの・・・?」
ジュリア「質問は、別室でどうぞ」

 やけにきつい言い方。しばらく沈黙。

フィルツ「あの、なにか僕がヘマしたとか、そういうのですか?」
ジュリア「いいえ」

 再び沈黙

フィルツ「(ためらいがちに)じゃあ、働きが悪いから転属とか・・・」
ジュリア「質問は、別室でどうぞ!!」

 突然振り返り、フィルツをにらんでちょっと大声。びっくりするフィルツ。
 くるりと背を向けるジュリア。恐る恐るフィルツ。

フィルツ「あ、あのー・・?」
ジュリア「(ぶつぶつと)まったく、なんでこんな人が選ばれた訳?
     スコアもたいしたことないし、おどおどしてて自信なさそうだし、
     顔だってそんなにいいわけじゃないし、その上童顔だし・・・。これじゃ、
     あれに乗れると思って期待してた私が馬鹿みたいじゃないの・・・!」
フィルツ「・・・選ばれた?」
ジュリア「あなたは!」

 再びジュリア振り返り、大声。

ジュリア「あなたは選ばれたんです!
     最新鋭戦闘・攻撃機「ワイバーン」の、パイロットにね!
     ・・・私の方が、ずっとスコアも上なのに、なんで貴方みたいな人が!!
     もう! つべこべ言わず、付いてくればいいのよ!!」
フィルツ「ワイ・・・バーン?」

 あまりの剣幕にびっくりしているフィルツ。

〇会議室

 すこし広めの室内。ガトラー他、数名の人員。

ガトラー「うわさは聞いていたが・・・。まさか、我々の艦隊に配属されるとはな」

 ディスカッション用の大き目のパネルを眺めるガトラー。
 パネルには、戦闘機の三面図と、おおざっぱな仕様がかかれている。

上官1「(残念そうに)我々としても、このような事態は予想外だったのだがね」
上官2「本来ならばスキルの高いテストパイロットを配し、万全を期したい所だが」

 ガトラー、手元の資料を眺め、ちょっと笑う。

ガトラー「仕方ありませんな。「グリフィス」からの正式な要請では」
上官1「忌々しき事態だよ。鉱山惑星だったゼカリアからあんな物が見つかるとは。
    あれさえ無ければ、こんな戦争も起こらなかった」
上官2「いや、ゼカリアの古代文明は有益だよ。今日のアスフォデルがあるのも、
    全てはあの星で見つかった、未知のオーバーテクノロジーあっての事だ」
上官3「だがそれも、制御下にあっての話さ。まさか牙を剥いてくるとは・・・」

ガトラー、不機嫌そうに沈黙。

上官3「ゼト・マイト・・・。今では奴め、ゼカリアで支配者気取りだ。
    ゼカリアの素晴らしいテクノロジーを一人占めにしてな。
    たかが駐留艦隊の司令官だった男が、増長しおって・・・!」
ガトラー((心の中で)あの男の実力を、そうやって過小評価していたからだよ。
     都合の悪い人間は全てゼカリアに送った。そのツケが回って来ただけだ)
上官2「今では、唯一対抗できる兵器を開発できる組織は、グリフィスだけだ」
上官1「本来ならば、これを君の艦隊に預けるのは気が進まないのだがね・・・。
    軍内部でもこれは機密扱いだ。それに君は奴と・・・」
ガトラー「もう10年以上昔の話です。それに私も戦争で多くの部下を失った。
     奴ともう一度会う機会があれば、私はその場で奴を撃ち殺しますよ」
上官2「・・・そ、そうか。ならばいい・・・」
ガトラー「ところで何です?
     これほど重要な物が、私の艦隊に配属される事になった理由とは」

〇レオの研究室

 レオ、コンピューターの画面を見つめている。何かの書類を読んでいるらしい。
 やがて来客を示す音がなる。振りかえるレオ。

レオ「開いてるよ。どうぞ」
ジュリア「失礼します」
レオ「あれ?」

 その声にいぶかしむレオ。
 扉が開くと、不機嫌そうなジュリアが立っている。後ろにフィルツ。

レオ「君が連れてきてくれたの? おやおや・・・」
ジュリア「・・・どんな奴か、見てみたかったものですから。すいません」
レオ「まあいいさ。それで、君の気は晴れたかな?」
ジュリア「・・・あんまり、晴れません。ワイバーンに乗れないばかりか、
     自分が、まさかこんな人の護衛をしなくちゃならないなんて・・・!
     では、失礼します!」

 ジュリア、それだけ言ってどこかに行ってしまう。
 困惑した表情のフィルツが取り残される。笑うレオ。

レオ「君が、フィルツ・サージェイス君か。なるほど、写真どおりだな」
フィルツ「あ・・はい。フィルツ・サージェイス少尉であります」
レオ「まあまぁ。俺は軍人じゃないし、かたぐるしい挨拶は無しにしないか。
   自分はレオ・マークス。肩書きは一応、ワイバーンの開発者って事になってる。
   よろしく」

 握手を求めるレオ。返すフィルツ。

フィルツ「(ためらいがちに)あの・・・彼女は?」
レオ「なんだ、名乗りもしなかったのか・・・。君も随分嫌われたな。
   彼女の名はジュリア・セルヴィア少尉。
   女性ながらも、スコア21を誇るというヴァインのエースパイロットだよ。
   (笑って)まあ男を落とすことには、あんまり興味無いみたいだけどね」
フィルツ「21って・・・あんな子が?」
レオ「人は見かけによらぬものさ。・・・君みたいにね。
   経歴、見せてもらったよ。転属が多いな。・・・それも自分の意志で。
   激戦と呼ばれた戦場には、君はほとんど顔を出してる。
   生き残っていただけでも、我々は神に感謝したいくらいだよ」

 フィルツ、ちょっと視線をそらし、暗い表情。

フィルツ「(小声で)ただ、臆病なだけです。逃げ回って、僕は・・・」
レオ「・・・君の事情も、いろいろあるんだろうがね。あえては聞かないよ。
   だがこれからは、君はワイバーンのパイロットだ。無茶はちょっと、困るな」
フィルツ「あの・・・、何の話なんですか? ワイバーンって」

〇グリーンオアシス、管制室

 オペレーター、ディスプレイを見ながら通常の業務。
 不意に着信音がする。ディスプレイを見つめ、キーを叩く。

管制官「はい、こちら補給基地・グリーンオアシス」
通信の声「こちら偵察部隊・シルバーアウル。
     現在ワープポイント231付近を航行中だ。不審な通信をキャッチした。
     現在発生地点を捜査中・・・何?!」
管制官「・・・シルバーアウル、報告を! どうしました?!」


アイキャッチ


〇ワイバーンのある格納庫。

 そう広くも無い格納庫。ドアの向こうは暗くて良く見えない。

レオ「さあ見てくれ。これが、これからの君の愛機だ」

 そういいながら、スイッチを押す。点される格納庫内のライト。
 照らし出されるワイバーン。驚くフィルツ。

フィルツ「ヴァインタイプじゃない! これは・・・!」
レオ「最新鋭戦闘・攻撃機「ワイバーン」。これがアスフォデル軍の切り札だ。
   これはそのテストタイプさ。量産されない、たった一機のね」
フィルツ「そんな・・・! 最新型の、テスト機?
     僕の愛機って、僕がこれに乗るんですか? 嘘でしょ?!」
レオ「一応これは軍事機密だよ? ここまで見せといて、嘘とは言わないさ」
フィルツ「だって・・・だってそんな! 理由が無いですよ!」

 突然、ワイバーンのコックピット付近から声。

ジュリア「のってみれば、解るわよ」

 驚いて振り返るレオ。

レオ「ああ? なんだジュリア、またそこに居たのか?」
ジュリア「(顔を出しながら)すいませーん。なんかまだ、諦めつかなくて」
レオ「諦めてくれよ。君が彼女と仲が良いのは知ってるが・・・」
ジュリア「だから今、彼女になだめてもらってた所です。
     あーあ。これなら私も、もっと活躍出来るかと思ってたのに。
     ・・・じゃね」

 誰かに挨拶しているジュリア。それからタラップを飛び降りる。

ジュリア「さて、フィルツ少尉?」
フィルツ「あ・・・、えっと?」
ジュリア「乗り方をレクチャーしますから、どうぞこちらに」

 ジュリア、わざとらしい感じでにっこりと笑う。

〇グリーンオアシス、管制室

ガトラー「偵察部隊との連絡が?」
オペレーター「はい、ポイント231付近を巡回中だった部隊です。
       10分ほど前に、通信が突然途絶えました」
ガトラー「救援部隊は派遣したのだな?」
オペレーター「はい。ですが到着まで、あと数分は掛かると思われます」
上官1「まさか・・・この辺りに敵影など。前線は、もっとずっと先ではないか」
ガトラー「前線だけが戦場ではありませんよ。本陣を直接叩けるなら、それが一番だ」
上官2「・・・ともかく、警戒体制を強化しろ。パイロット達には戦闘待機を」

〇ワイバーンコックピット。

 フィルツ、コックピットに座っている。
 傍らで見ているジュリア。

フィルツ「ヴァインのコックピットとは随分違うな・・・。あっさりしてる」

 やがてフィルツ、スティックやペダルの感触を少し試す。

ジュリア「どう?」
フィルツ「座り心地は悪くないけど・・・。君は、これに乗ったことがあるの?」
ジュリア「そうやってシートに座っただけならね。貴方だけなのよ。これを使えるの」
フィルツ「なんで?」
ジュリア「それよりお楽しみはこれから。そこのスイッチを押して?」

 いぶかしげに、「システム」と記されているボタンを押す。
 軽快な音(コンピューターの立ち上がりみたいな)とともに、
 各センサーパネルがホログラフィで表示され始める。
 感嘆の声を上げるフィルツ。

フィルツ「すごいな・・・。ヴァインとは、まるで違う・・・」

 にやにやしているジュリア。気が付かないフィルツ。
 やがて正面にホログラフィでパネルが表示される。
 「パイロットチェック、OK」の表示。
 次の瞬間、パネルが消えるのと同時に、女性の姿が不意に浮かび上がる。

ヘレン「始めまして」
フィルツ「うわあ?!」

 仰天しているフィルツを見て、してやったりと笑いだすジュリア。

ジュリア「あっはは! あーあ、ちょっとは気が晴れた!
     紹介するわ。彼女の名はヘレン。ワイバーンの、フライトサポートAIよ」
フィルツ「ふ、フライトサポートAI?」

 焦っているフィルツの前で、ヘレンはにっこりする。

ヘレン「こんにちわ、フィルツ・サージェイス少尉。お会いできて光栄です」
フィルツ「しゃ、喋ってる・・・」
ジュリア「喋りもするし笑いもするわ。彼女が貴方の事を指名したの。
     彼女はね、ゼカリアで唯一見つかった、画期的な戦闘機用のAIなのよ。
     どうヘレン? いけそう?」
ヘレン「ええ。やっぱり間違いないみたいですね。
    彼を確認した後、各制御システムが相次いでオープンしました。
    現在ワイバーンのメインシステムを解析中です。イニシャライズ終了まで、
    約3分ほどかかりますが、問題はなさそうですね」

 レオ、ワイバーンの下から見上げながら。

レオ「ヘレンに残っていたわずかな記憶をもとに生み出したのが、このワイバーンだ。
   これはゼカリアの先史分明で、おそらく使われていた戦闘機のコピーなんだよ」
フィルツ「な・・んで、なんで僕が?」
ヘレン「私を構成するシステムで、すでにパイロットが固定されていたんです。
    ワイバーンを使うためには、記録されたパイロットに似た方が必要でした。
    それがフィルツ少尉、貴方なんです」
ジュリア「そういうこと。羨ましいわねー、こんないい子に乗れるなんて」

 フィルツ、ジュリアの方を見てから、ヘレンに向き直る。
 自分を見つめているヘレンに、ちょっとたじろぐ。

ヘレン「お気に召しませんか?」
フィルツ「いや・・・そういうんじゃなくて・・・」

 その時突然、格納庫にも警報が響き渡る。はっとするフィルツやジュリア。

アナウンス「総員、第一種戦闘配置。敵艦隊を発見、グリーンオアシスに接近中!
      繰り返す! 総員第一種戦闘配置。各ヴァインパイロットは・・・」
ジュリア「敵襲?!」

〇宇宙空間

 救援部隊の宇宙船の向こうから、ザイゴートが迫ってくる。

兵士「回避だ、回避しろー!! ・・・うわあ!!」

 ザイゴートにぶつけられる宇宙船。爆発。後ろに数隻のザイゴートが見える。
 ザイゴートの前方に、グリーンオアシス。

〇グリーンオアシス、管制室。

ガトラー「敵の数は?!」
オペレーター「砲艦6、巡洋艦1を確認!」
ガトラー「偵察部隊と接触した連中か・・・。攻めてくるとはな」
上官2「連中め、何が目的で・・・。まさか、情報が漏れていたとでも言うのか?」
ガトラー「ありうる話です。強力な新兵器であれば、敵にとっても驚異でしょう」
オペレーター「敵艦、発砲!」

 2隻のザイゴートは真新しいけど、4隻はぼろい感じ。4隻はかなり先行。
 ぼろいザイゴート4隻が遠方から発砲(ただし、壊れているので数本の主砲のみ)。
 グリーンオアシスの手前で、何かの壁に当たる感じで消える。
 スクリーンに閃光がきらめく。

上官2「・・まだ、射程距離外だ、ヴァインを出して迎撃させろ!」
オペレーター「敵突撃砲艦、速度を上げました!
       グリーンオアシスに向け、急速に接近中!」

 一斉にモニターへと向き直る一同。
 ザイゴート4隻だけが、どんどん速度を上げる。

〇ザイゴート

 ザイゴートから、小型の宇宙船が離脱していく。
 まっすぐに敵巡洋艦の方に向かう。

〇ワイバーン格納庫

 緊急を示す警告が鳴り響く。タラップから飛び降りるジュリア。そのまま走り出す。

フィルツ「あ! 自分も・・・!」

 ワイバーンから出ようとする所で、ジュリア、振り返る。

ジュリア「貴方はそこにいて!!」
フィルツ「そんな! 僕だってパイロットだよ!!」
ジュリア「貴方はワイバーンのパイロットなのよ? ワイバーンはまだ飛べない。
     それに私の任務は、貴方達を守ることよ!」

 はっとするフィルツ。ジュリア、微笑んで敬礼の真似をしたあと、走り出して行く。
 フィルツ、自分を助けてくれたヴァインの事を、また思い出す。

フィルツ「・・・あんな思いは、もうしたくないのに・・・!」
レオ「フィルツ君」

 レオが下から声をかける。

〇グリーンオアシス駐留軍、ヴァイン格納庫

 格納庫から、カタパルトにあがってくるヴァイン達(時間差で、幾つも)。
 マーカーが青から赤に変わると、何機かのヴァインが射出されていく。
 編隊を整えるヴァイン各機。その前方に、敵影が写る。

〇戦闘宙域

 速度を上げ始める突撃砲艦ザイゴート。そこに接近するヴァイン達。

ジュリア「こちらレッド・リーダー。我々は先頭の敵戦艦を叩く。続け!」
各機(約8機から)「了解!」
ジュリア「もうあんなに近くに居る・・・ちょっと遅れちゃったかな」

 ヴァイン9機が、ザイゴートに向かって飛んでいく。
 ヴァインから立て続けにミサイルが発射され、着弾する。
 しかしザイゴートからの抵抗は無い。
 外装がやけにぼろいことに、ジュリアが気が付く。

ジュリア「反撃が無い・・・。なによこいつら、廃艦みたい・・・」

 レッド部隊のヴァインが、立て続けにミサイルを着弾させる。吹き上がる炎。
 しかしザイゴートの進行は止まらない。加速を続けるザイゴート。
 ジュリアのヴァイン、敵戦艦の艦橋の前に出る。
 バルカンを乱射しつつ、艦橋に接近。ミサイルトリガーに指をかけた所で気が付く。

ジュリア「?!」

 解き放ったミサイルが艦橋に着弾し、爆発する。
 しかし炎上しながら、ザイゴートは進行を続ける。更に加速。

〇グリーンオアシス管制室

 戦略ディスプレイに表示されるザイゴートの軌跡。
 一隻がまず安全圏内を突破し、まっすぐにグリーンオアシスに迫る。

ガトラー「馬鹿な?! 特攻するつもりか!!」

〇グリーンオアシス、シールド付近

 進行してきたザイゴートがシールドに接触する。ちょっとスピードが落ちるんだけど
 ずぶぶという感じで進入。そのままグリーンオアシスに激突する。
 吹き飛ぶ第3ポート。戦艦数隻を巻き込んで、爆発。
 振動がグリーンオアシスを揺らす。

〇ゼカリア軍巡洋艦

 モニターに写る、グリーンオアシスの爆発。

オペレーター2「1番艦、突入成功しました」
オペレーター「2番艦から4番艦まで進路固定終了。乗員の離脱、完了しました」

 その報告を聞いている男。その脇に女性(顔は見えなくてもいいような)。

リーリア(女性)「よろしいのですか? せっかく頂いた戦艦を・・・」
ライル「あんな壊れかけた老朽艦をか? 体当たりくらいにしか役にはたたんよ。
    元々捨てるつもりの艦だ。なら華々しい最期を遂げさせてやろうじゃないか」
リーリア「ふふ・・・。お優しいのね、ライル様は」
ライル「(わざとらしく)君にそう言われると嬉しいよ、リーリア。
    それよりも、機体の用意はしておいてくれ。出てくる事もありうる」
リーリア「解りました」

〇グリーンオアシス管制室

 振動で大きくゆれる管制室。悲鳴があちこちで上がる。
 尻餅を付いている上官達。ガトラー立ち上がる。

ガトラー「被害は?!」
オペレーター「敵戦艦、第3ポートに激突! 使用不能!!」
上官1「ば、馬鹿な、そんな・・・!」

 そこにジュリアからの通信。

ジュリア(通信)「こちらレッド・リーダー。敵戦艦に人が乗っていない!
         こいつら、最初から特攻するつもりよ!」

 モニター上に映し出されるその他のザイゴートの軌跡。
 まっすぐにグリーンオアシスを目指している。

ガトラー「・・・随分思い切った事をする。退役戦艦の特攻か」
上官3「す、すぐに空母を準備しろ! ワイバーンの積載を急げ!」

〇戦闘宙域

 ザイゴートの一隻に対して群がるヴァイン(20機くらいか?)。
 ザイゴートのあちこちで爆発が起こる。やがて大爆発。
 その脇から、もう一隻のザイゴートが特攻していく。その向こうにも一隻。
 それぞれヴァインが群がっているけど、止まらない。
 ジュリアのヴァイン、コックピット。ミサイル残段数がゼロ。

 フィルツ「ミサイルがもう無い・・・、このぉ!!」

〇グリーンオアシス、各部の武装。

 突撃してくるザイゴートに対して集中砲火。
 その脇で、ローアがようやくポートを離脱。ザイゴートに回頭、主砲を向ける。
 各ローア発砲。ザイゴートの一隻がそれで爆発する。その後ろからザイゴート。
 ローア、主砲の充填が間に合わない。通常武装では進行が止まらない。
 火の玉の様になって進行するザイゴート。

〇グリーンオアシス管制室

オペレーター「敵戦艦2、突撃してきます! 予想進路、第12ポート!」
上官1「あそこは、ワイバーンの開発エリアではないか・・・!」
上官2「ローア各艦! 体当たりをしてでも止めんか!!」

 ポートにつながれたエリュシオンに対して、突撃してくるザイゴート。

オペレーター「司令官、ヴァインカタパルトから、出撃要請が来ています!」
上官2「出ていないヴァインが居たと言うのか、のんびりしおって。
    出撃を許可する。さっさと出せ!」
レオ(通信)「(笑いながら)了解です。ワイバーン、発進準備に入ります」
上官2「な、何ぃ?!」

〇ヴァインカタパルト

 キャリアーでカタパルトにあがってくる、ワイバーンの勇姿。

ヘレン「フレームチェック、終了しました。細部のシステムはいまだ不鮮明ですが、
    レーザー、エンジン圧力ともに正常に上昇中。
    アポジモーターは制御下に入りました。
    フィルツ、準備よろしいですか?」
フィルツ「(まだヘレンに慣れていない)あ、ああ・・・。
     操作は、ヴァインとそんなには変わらないね。
     いまはまだ、ミサイルが使えないくらいか・・・」

 レオからの通信が入る。後ろで上官達の制止する通信が聞こえる。

レオ「(ちょっと笑いながら)頑張ってくれよ、フィルツ君。
   これはあくまで俺の独断だが、希望したのは君だからな。
   君の戦績の如何で、俺の進退も変わってくる。注意してくれよ?」
フィルツ「本当に大丈夫なんですね? この機体なら」
レオ「それは、君の頑張り次第さ」
フィルツ「・・・行きます」

 前を見据え、スティックを握る。エンジン音が高鳴る。ジュリアの記憶。

ジュリア(回想)「私の任務は、貴方達を守ることよ!」
フィルツ「・・・俺を守る必要なんか、無いんだ!」

 やがて、発進灯が赤から青に変化する。
 フィルツ、スラスターのスロットルを引く。
 ワイバーンのスラスターが炎を放ち、加速する。
 カタパルト射出後、もう一度スラスターが大きな炎を放ち、機体が加速される。
 ヴァインとは比べ物にならないスピードで、宇宙に飛び出していくワイバーン。

フィルツ「は・・速い?!」
ヘレン「ハイパーレーザー、チャージ完了。前方敵戦艦、急速接近中」

 フィルツ、はっとする。前から火を吹いたザイゴートが接近してくる。
 ターゲットスコープでロックされる敵のザイゴート。慌ててトリガー。
 ワイバーンから放たれた閃光が、そのザイゴートを直撃する。
 その閃光は艦橋を貫き、ザイゴートを大きく爆発させる。目を見張るジュリア。

ジュリア「なによ、今の・・・?」

〇グリーンオアシス、管制室

ガトラー「敵戦艦を、一撃で・・・?」

〇ヴァインカタパルト、管制室

 他のスタッフがモニターを凝視し、驚きの表情を見せている。
 レオ、後ろでにやりとしている。

〇ゼカリア軍敵巡洋艦

 モニターに写るザイゴートの爆発。

ライル「・・出てきたか」

〇ワイバーン、コックピット。

 爆発するザイゴートを掠めながら飛行するワイバーン。背後で大爆発。
 目を見張っているフィルツ。

フィルツ「これが、ワイバーン・・・?」

 第一話「ワイバーン出撃」完