■ストーリー上のテーマ



 この物語は、「アスフォデル」「ゼカリア」という、二つの惑星で起こった大きな戦争の物語です。主人公の青年「フィルツ」は戦闘機のパイロットとして、アスフォデル軍側で戦っていましたが、ある時突然、最新鋭の強力な戦闘機、「ワイバーン」のパイロットに指名されてしまいます。物語はその戦闘機「ワイバーン」を中心に、フィルツの苦悩や葛藤、彼を取り巻く人々のドラマ、そして敵の野望、先史分明の滅んだ謎などを絡めて、進行していきます。

 ワイバーンにおけるストーリー上のテーマはずばり、「戦争の行き着く先。パワー合戦の果てにあるもの」です。今までの戦争を扱ったストーリーでは、ほとんどが戦争の悲惨さだけを視聴者に訴えかける事だけに終始していました。それはそれで有意義な物ですが、しかしそれではどうしても、「戦争を止めさせるために武器を取る」という図式が肯定されてしまう事になり、視聴者に戦争を「仕方ない事」と認識させてしまう事になります。本作品では従来のそれとは異なり、よりダイレクトに「戦争の無意味さ」といった部分を強調したストーリーを構築し、従来との差別化を図っています。

 ストーリー上には、二つの惑星が出てきます。アスフォデルとゼカリアという惑星は共に争っていますが、どちらが正義と言う構図はここには有りません。アスフォデルでは、上官達の傲慢さが招いた災いに、多くの兵士の多くが無駄死にしています。またゼカリアでは「正しいのは自分達だ」という偏った正義感から、民間人すら容赦無く攻撃する残酷な軍隊になっています。それらを理解しつつも、主人公達は戦わざるをえません。それが正しいのか否か・・・。物語の中で、キャラクター達は苦悩します。

 この物語は、現時点では最後に悲劇的な結末を迎えて終ります。パワー合戦の行き着く先は結局核兵器の打ち合いのように、「共に滅びる」という物でしかないからです。安易な御都合主義では決して語れない「戦争の無意味さ」を、また愚かな上官に従わされる兵士達の苦悩と悲劇を、生き残ろうと必死のキャラクター達の死を持って痛烈に語ろうと言うのが、このストーリーのテーマです。

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