KR ProjectKokusaishi-ni Ronbun-wo Project国際誌に載せなきゃ
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私が国際誌(といっても、日本心理学会編集の英文誌のJapanese Psychological Researchですが)に投稿したのは、まだ大学院生の頃で、簡単に「修正採択」になりましたので(Mori,1980)、英文論文を公刊することが特に和文論文の公刊よりも難しいとは思いませんでした。その後、JPRには1981,1982と3年連続で採択になり、すぐその後に書いたMoeser先生との共著論文(Mori & Moeser, 1983)も「比較的簡単に」 Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior(その後Journal of Memory and Languageに改称)に載りましたので、「英語で書く分、少し面倒であっても、レベル的には別に国際誌も国内誌もほとんど違いはない」と甘く見ていました。
その後、信州大学に就職が決まると、「紀要」なら迅速に掲載が可能であることを知り、「自分なりに一定のレベルで書いているかぎりは、学会誌も紀要も同じだ」とさらに甘い考えを持つようになってしまっていました。
現に、ときどきは学会誌にも投稿していましたが、投稿する前に「これは採択のレベルにある」と自分で判断したものが「不採択」になるようなことは一度もありませんでした。(ちなみに「不採択」になったのは、例の「チビクロさんぽ」論文が初めてでした。だからこそ、「不当な審査結果だ」と学会にも喧嘩を売ることになったわけです。)
国際誌にだって、面倒くさいから書かないだけで、いつでも書けば採択になる自信がありました。50歳を過ぎて、久しぶりに国際誌にでも投稿してみるかと思って投稿したMORIテクニックについての論文(Mori, 2003)も、一発でBehavior Research Methods, Instruments, and Computersに採択になり、これで国際誌投稿5戦5勝ということになりました。
そんなこともあって、不遜にも「KRプロジェクト」なんてものまで始めちゃったわけですが、ここから悪夢の連敗が始まるのです。
国際誌に頻繁に投稿するようになって、そして「不採択」が連続するようになって、改めて国際誌の審査の適切さがわかったように思います.「なにをいまさら」と言われそうですが、以下にいくつかポイントをまとめておきます.
◎エディタの仕事ぶりは迅速で適切、しかも親切です。たとえば、(1)のように「審査にも回らず不採択」というようなケースにいくつか出会いましたが、こうした「門前払い」は不親切なようでいて、実は何ヶ月も審査に時間をかけてから不採択になるよりもずっとありがたい措置なのです.レベルを落として別のところにすぐ投稿できますから.●日本の学会誌ではすべての投稿論文を形式的に審査に回しますので、最低でも半年は待たなければなりません。(19)を書く前に日本語の論文を日本の学会誌に投稿したときは、「添付ファイル」が開かないから、という理由で半年間もほったらかしにされました。もうこの学会誌はダメだと思い、英文にして国際誌に投稿することにしたのが(19)です。初めから国際誌に投稿すれば良かった。最近(22)も3ヶ月も経ってから、Original ArticleかShort Reportかどっちに投稿したんだと問い合わせてきました。国際誌でも国内で審査がなされているものはやっぱり国内誌レベルのままです。Japanese Psychological Researchには絶対に投稿しないこと。時間を浪費するだけです。
◎しかも、一般的な外国の雑誌なら、エディタに「どこに出したらいいか」とか「もう少し実験を付け加えた方がいいか」とかメールで問い合わせると、親切に答えてくれます.●日本の学会誌ではこうした例は聞いたことがありません。
◎審査に要する時間も国際誌の方がずっと短いと思います.たとえば、(21)はわずか2ヶ月で審査結果が戻ってきました。●日本の学会誌ではどんなに早くても半年はかかるのが普通です.(追記:「審査が速かったのは『不採択』だったからだろう」と言われそうでしたが、(33)をご覧下さい。こちらはわずか2週間で採択になりました。2006.6.30)
◎審査者のコメントも有益でためになります。「不採択」になった場合でも、どこがどうまずいのか、どうすればいいのかのアドバイスがなされていて、別のジャーナルに再投稿する際の参考になります。これは、審査にあたる人がまさにその領域の専門家だからだと思います.●日本の学会誌では、審査にあたる人が限られているため、どうしても「専門家ではないが関連する領域の研究をしている」程度の人が審査を受け持つことになります。私も国内誌の審査をすることがありますが、あまりよく知らない分野の論文だと、関連する先行研究に目を通すことから始めなければならないので、どうしても時間がかかってしまいます.
◎頻繁に投稿してみて気づいたことですが、審査者のコメントの書き方にも国際誌と国内誌に違いがあります.国際誌の審査者のコメントの特徴は、まず最初に審査対象論文の要約が書かれていることです.これは、エディタや論文著者に対して、審査者が当該論文の内容をしっかり理解していることを示す意味で重要なことです.●一方、日本の学術誌の審査者からはこうしたコメントをもらった記憶がありません。たいていは、「興味深いテーマに挑んだ意欲的な論文だと思いますが・・・」とか「論文興味深く拝見しました。」とか紋切り型の表現で始まるだけで、内容の適切な要約はなされません。(余談ですが、最近は国内誌の審査を依頼された際には、私もこの国際誌の審査スタイルを取り入れています。論文の要約が初めに書いてあるような審査者コメントに出会ったら、それは私が書いたものかもしれません。)
◎バレると恥ずかしいので、自分から白状しちゃうと、2003年以降に唯一の「採択」となったSocial Behavior and Personalityという学術誌は「掲載料を取られるジャーナル」です。同じ系統のジャーナルにPerceptual and Motor SkillsとPsychological Reportsがあります。(この2つは同じエディタがやっている実質的に同じジャーナルです。)こうした「掲載料を取られるジャーナル」に対しては、「お金さえ積めばなんでも載せられる」というウワサを聞いていましたが、ほんとにそうかどうか試してみたら、(16)のように「不採択」になる場合もあることがわかりました。審査内容も適切で、決していいかげんなものではありません。国際学会などの折に、外国の研究者にこうしたジャーナルの評価を聞いてもみましたが、これらのジャーナルが一概に否定的に見られているわけでもないこともわかりました。PMSに投稿中の論文(20)は、大変著名な方から「今、おまえの投稿論文を審査しているぞ」と連絡があり、驚いたくらいです。こうしたジャーナルも主要なデータベースに登録されています。IF値も0.2〜0.4程度はあり、国内学術誌(0.1未満)よりは高いのですから、少なくとも国内誌に出すよりはマシだと思います。●この(16)を修正してSocial Behavior and Personalityに投稿し(27)、そこでも「不採択」だったのに、めげずにさらに修正してもう一度Psychological Reportsに投稿(29)したら、今度は「修正採択」になりました。【教訓】何度「不採択」を食らってもめげないこと。(2005.12.1)◎PMSとPRは「審査はちゃんとしっかりやるけれど、最終的にはAmmonsさんがなんでも採択にしちゃうんだ」という噂を耳にしたことがあるので、(30)でそのことを確かめてみることにしました。しかし、「ちゃんとコメントにしたがって修正せよ」お叱りをいただくはめになりました。昔はどうあれ、今は噂のようなことはないようです。(2006.6.20)
◎何度も「不採択」を食らってもめげない良い方法は、共著にすることです。最近やっと採択にこぎ着けた廣川さんたちとの共著論文(18)は、何度も「不採択」を食らったのですが、お互いに励まし合って、諦めずに改稿を続けた結果が最終的な「採択」につながったと思います。過去のファイルを見てみると廣川さんの最初の原稿を私が改稿したのが2002年の2月ですから、丸4年間くらいかかったことになります。一人で投稿していたら、もっと早く諦めて国内誌か紀要かに逃げちゃっていたことでしょう。一人で書き直しているとイヤになってしまうのですが、そんな時も共著者が書き直してくれればその間に落ち込みから立ち直れます。単著にこだわらずに、共著を3つ出す作戦をオススメします。(2005.12.14)
◎最近投稿した雑誌、Applied Cognitive PsychologyとBehavior Research Methodsがどちらも、ScholarOneというウェブ上での投稿システムを使っていました。最初は、単なる電子投稿の窓口だと思っていたのですが、わずか2週間で投稿から、採択までを経験することができ、審査や再投稿などすべてがきわめて効率的になされる「論文投稿審査発行支援総合システム」であることがわかりました。使い方に慣れないと、ちょっと戸惑うところもあり、私も何度か間違った操作をして問い合わせのメールを出したりしました。でも、これはスゴいシステムです。別のところにも書きましたが、投稿から採択までわずか2週間という新記録が達成できたのもこのシステムのおかげだと思います。おそらく、この後も、校正などもこのシステム上で迅速になされるのだろうと思います。もう、このシステムを導入していないような雑誌には投稿しない方がいいかもしれません。(2006.6.30)