2020.10新刊
 (歴史哲学関係)
「論語と算盤」実業界の父が教えるビジネス成功の智恵
 
渋沢栄一著(角川ソフィア文庫)
江戸時代以来、道徳教育を受けていたのは武士層であり、農工商にはそれが乏しかった。そのため、彼が関わる商業界では、収益だけが目的の拝金主義となってしまっている。一方、武士層は、朱子学的道徳教育であったため、問題があったとする。すなわち、現実を念頭に置かず、道徳のための道徳教育というような原理主義的であったため、空理空論となっていた。いわゆる道学であり現実と遊離していたとする。これは国家を衰弱させる。
 道徳なき商業における拝金主義と、空理空論の道徳論者の商業蔑視と、この両者に引き裂かれている実情に対して、渋沢は「現代社会において生きることのできる道徳に基づいた商業」を目指したのである。それを可能とする商業と道徳の接着剤として、渋沢が選んだのが儒教であった。書名も「儒教と経済」または「経済人の品格」とかがふさわしい。