2005.11発行
 (政治哲学関係)
「国家の品格」情緒を育む武士道精神の復活を
 
藤原正彦著(新潮新書)
先進国の荒廃は近代的合理性の破綻であり、論理だけでは世界が破綻する。自由、平等、民主主義ははたして完全な理論なのかを疑う。民主主義の前提は「成熟した国民による判断」である。国民はいつの時代も常に未熟である。したがって、民主主義は危うい。民主主義は放っておくと戦争をおこす。それを防ぐには、「真のエリート」が必要となる。日本は情緒と形の国であり、情緒を育むのは武士道精神である。人間にとっての座標軸は道徳であり、武士道は鎌倉時代以降、多くの日本人の行動基準、道徳規準として機能してきた。ヨーロッパ貴族は、支配者として権力、教養、富の3つを独占したが、江戸の武士は、権力と教養は手にしたが、まるっきりお金がなかった。このことに、欧米の歴史学者は驚いている。だから、武士は庶民から尊敬された。
 品格ある国家の特徴は、独立不羈(どくりつふき)、高い道徳、美しい田園、天才の輩出である。日本は、金銭至上主義を何とも思わない野蛮な国々とは、一線を画す必要がある。それは国家の品格をひたすら守ること。経済的斜陽がたとえ一世紀続こうとも孤高を守るべきである。世界を救えるのは日本人しかいない。