谷岡一郎
『確率・統計であばくギャンブルのからくり:
「絶対儲かる必勝法」のウソ』

講談社ブルーバックス

 
学生  先生は年末ジャンボ
宝くじとか買わないんです
か?

教授  買わないね。ギャンブ
ルの必勝法は、「ギャンブル
をしないこと」だ。

学生  えー、でもサッカーくじ
のtotoは買ってたじゃないです
かあ。

教授  totoはギャンブルでは
ない。あれは、スポーツ振興
のための寄付だ。私は日本の
スポーツのためにずいぶん
「寄付」をした。

学生  へへへ。

教授  なにがおかしい。でもい
いことを教えてやろう。「買わな
い」というギャンブルの必勝法
の欠点は儲かることもないとい
うことだが、もう一つ「必ず儲か
る必勝法」があるんだ。

学生  たくさん「寄付」をした先
生の言う必勝法は信じられません
ねえ。

教授  いや、これは本当だ。そ
れはギャンブルの「胴元」にな
ることだ。

学生  「胴元」って、なんかヤク
ザの話みたいですね。

教授  「胴元」とはまあ主催者
のことだな。しかし、どう呼んで
も同じことだ。ギャンブルの胴
元は必ず儲かる。totoでスポーツ
振興ができるのも、パチンコ店が
繁盛するのも、東京都知事がカジ
ノを東京に作ろうとするのも、胴
元だけは必ず儲かる仕組みになっ
ているからなのさ。

  たとえばtotoでは、賞金とし
て還元されるのは、総額の約
半分だけだ。残りの半分のうち、
さらにその半分が経費にあて
られて、残った全体の約四分
の一は「余剰金」となる。これ
がいろいろなスポーツの振興
に使われるわけだ。つまり、主
催者は常に全体の四分の一の
儲けがあるのさ。


学生  ということは、学園祭か
何かでスポーツ大会の優勝予
想クジを作って売ることにすれ
ば儲かるということですね。

教授  ははは、そのとおりだが、
それは法律で禁止されている。
必ず儲かる胴元になれるのは
法律で認められた公的なところ
だけなのさ。宝くじも勝手に作っ
て売ったりしちゃいけないんだ。

学生  じゃ、ボクらにとって儲か
る道は残されてないんですね。

教授  ま、学生はギャンブルよ
りも勉強をすべきだね。この本
で確率と統計を勉強しなさい。
うまくやれば儲かるという秘訣
が書かれているかもしれない
ぞ。

学生  うーん、先生の言葉を信
じて読むべきか読まざるべきか、
これもギャンブルだなあ。  
 
          (守 一雄)