数年前に中古住宅を購入して移り住んだ際に、一部が壊れていたブロック塀の修理を自分でしたことがありました。ホームセンターでセメントと砂を買ってきて適当に混ぜてブロックを2つほど積み直したのですが、余ったセメント(砂と水を混ぜてあるので「モルタル」というべきか)を捨てる場所もないので、あちこちの目地の欠けた部分に塗りつけました。モルタルは湿っているうちは粘土遊びのようにどこにでも簡単にくっついたのですが、乾いてみると不思議なことが起きました。同じモルタルのはずなのに、ちゃんと固まっているところと、強く触るとぼろぼろと崩れてしまうところがあったのです。幸い、本来の修理をした部分はちゃんと固まったようで、どうやら、余ったモルタルは、水を混ぜてから使うまでの時間が経っていたことや一度塗りつけてからまた触ったりしたことなどが原因でうまく固まらなかったのでしょう。水で溶かして固めるだけだと思っていたセメント工事も、実はかなり微妙なところがあるのだということを知りました。
素人の日曜大工ではこんなことがあっても、プロの仕事にはこんなことはないと思いこんでいましたが、この本を読むとプロの仕事にも信頼がおけないことがわかって愕然とします。なによりも、最近頻発しているトンネル内でのコンクリート崩落事故が、この本の正しさを証明しているようで本当に不安になります。天下の岩波新書ですし、今年の春に発売以来、ベストセラーの上位に常に登場してきている本なので、あえてここで紹介するまでもないかなとも思ったのですが、1900年代最後のDOHCに「1900年代の負の遺産」について記しておきたいと考え取り上げることにしました。マジで恐い本です。(守 一雄)

【これは絶対面白い】
小林一輔『コンクリートが危ない』