第13巻第2号              1999/11/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 「臨界事故」という聞き慣れない言葉に、事故の重大さが隠蔽されてしまったまま、もう1ヶ月が過ぎました。9月30日に発生したこの事故は、同日深夜には相当深刻な状況になっていたようで、翌10月1日未明には、インターネットの某有名掲示板にも大量の書き込みがあり、ネット上では大騒ぎになっていました。

 その後、「決死隊」の活躍で暴走爆発はかろうじて食い止められたようですが、テレビや新聞で報道されなくなっただけで、1ヶ月経った今も、事故は終わったわけではないのです。そもそも、「問題そのもの」はまだ何も解決していないのです。その「問題」が解決されない限り、またどこかで同じような事故が起こるでしょう。「問題」とは、「原子力発電を続ける」ということそのものにあります。

 今回の事故で大量に、しかも長時間にわたって放出され続けた中性子線は、X線よりも通過力が強く、ほとんどどんなものでも突き通す力をもっているのですから、放射線被曝の被害を最小限にする一番良い方法は、できるだけ遠くへ逃げることでした。(被曝量は距離の2乗に反比例する。)しかし、避難する人が殺到すれば大パニックが起こることは必然で、このことのほうを恐れた政府は住民のほとんどを「自宅待避」させるという「対策」を取りました。テレビなどのマスコミでも逃げるほうがマシであることを報じたところはありませんでした。こうした「対策」の影響はこれから「長期的な影響」として現れてくるでしょう。今回の事故では、放射能事故の恐ろしさ以上に、政府やマスコミの恐ろしさを知ることになりました。                    (守 一雄)


【これは絶対面白い】

坂田静子

『聞いてください:反原子力発電へのメッセージ』


 著者の坂田静子さんは、長野市のすぐ隣の須坂市で20年以上にわたって、反原発運動を続けてきた。須坂で古くから続く薬局を継いで、家事や家業に明け暮れていた坂田さんが社会問題に目覚め反原発に関わるようになったきっかけは、イギリスに嫁いでいた娘さんからの手紙であった。「近くの原発の使用済み燃料の再処理工場によって周辺の大気も海も汚染され、海産物からは高濃度の放射線が検出されている。その上今度は、日本の原発から出た使用済み燃料の再処理を大量に引き受けるための拡張工事が始まり、反対運動が起きているが、日本では報道されているのか」という内容だったという。この娘さんの子ども、坂田さんのお孫さんも、重い障害をもって生まれ、数時間の短い命しかなかったのだ。坂田さんはこの手紙を読んですぐ、猛烈に原子力発電について勉強を始める。そして、原子力発電の危険性、始末に負えない放射性廃棄物の問題、国や電力会社ぐるみの隠蔽の構造などを知るのである。その後「長野で原子力を考える会」や「脱原発北信濃ネットワーク」を組織し、「市民エネルギー研究所長野資料室」を設置するとともに、『聞いて下さい[原子力発電について]』というミニコミ誌の発行を続けてきた。坂田さんは昨年10月にお亡くなりになったが、この本は、坂田さんが生前にこうしたミニコミ誌などにお書きになっていたものを、ご遺族が編集したものである。そのため、残念ながら市販はされていない。それでも、一人でも多くの人が、今回の事故の真相などを含め、原子力発電の問題点について、どんな本でもいいから、1冊でもいいから本を読んでくれたら、きっと坂田さんは喜んでくれると思う。さしあたっては、文庫ですぐに読める

広瀬隆『新版危険な話』新潮文庫440円

をぜひ読んでほしい。(守 一雄)


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