第12巻第3号              1998/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



  新聞等でも報道されているように、信州大学教育学部は来年度、学生定員20人減を含む大幅な改組がなされます。改組のポイントは、従来「小学校教員課程」と「中学校教員課程」に分かれていた2つの課程が「学校教育教員養成課程」に統合されることと、「幼稚園教員養成課程」がなくなって、新しく「教育カウンセリング課程」ができることです。これは「教員養成学部の学生定員を3年間で5千人削減する」という文部省の方針による全国的な国立大学教員養成学部改組の流れの中で行われるものです。

 新設される「教育カウンセリング課程」は、学生定員20人、従来の「小学校教員養成課程心理臨床専攻」の代わりに作られることになりますので、私もここの担当になります。私の専門をよく知っている人からは、「えーっ、守がカウンセリングの担当?」と言われそうですが、なんとか「にわか勉強」をしてでも新しい組織の中で役割を果たしていきたいと考えています。新しい「教育カウンセリング課程」をどうぞよろしくお願いします。


【これは絶対面白い】

鶴見済『人格改造マニュアル』

太田出版\1200

 鶴見済氏が以前に書いた『完全自殺マニュアル』(太田出版)は、実際にこの本に書かれているような方法で自殺をする人が出てきたため、「悪書」という非難を受けた。いろいろな問題に悩み「死んでしまいたい」と思う人に自殺する方法を教えてしまうことになった前著に対し、この本では、「自殺なんかしないで、人格を変えてラクに生きていこうよ」と教えることにした。「自殺のススメ」につながりかねない前著に比べれば、「人格改造のススメ」につながりかねない本著は、かなりマシであるが、それでもアブナイ本であることにちがいはない。覚醒剤まで薦められている。

 「自殺のススメ」になりかねないという批判はともかくとして、『完全自殺マニュアル』は途中で生理的嫌悪感を感じて最後まで読めない本だった。だから、2年前に、同じ著者がこの本を出版したことを知っても、読んでみる気になれなかった。しかし、上記のような事情から、臨床心理学やカウンセリングなどに関する本をいろいろ読んでいく中でこの本に出会い、読んでみることになった。そして、この本が一番わかりやすく面白いということを発見した。もっと早く読めば良かった。

 覚醒剤・催眠療法・自己開発セミナーなどの具体的詳細がわかりやすく書かれていて、本当に誰でも簡単に人格改造ができそうである。自律訓練法や認知療法など学術的にも認められている方法もわかりやすく紹介されていて、こうした部分の記述から判断するかぎり、私がほとんど知らない部分についての記述にも大きな間違いはないものと思われる。

 臨床心理学やカウンセリングの本では具体的な方法や技法は示されず、その「奥義」は、誰か専門家に個別指導(スーパーバイズ)を受けないと教えてもらえないようになっているのに対し、この本では、具体的方法・技法がアッケラカンとすべて書かれている。だからわかりやすいのだが、「こんなに簡単に人格改造ができることをこんなにわかりやすく書いちゃっていいんだろうか」と少し心配になる。

 恐らく「安易な人格改造のススメにつながりかねない」という批判がこの本に対してもなされるであろう。そうした批判の可能性がある本を、ここで「面白い」と紹介してしまうと、「心理学者によるお墨付き」を与えたことになってしまうかもしれない。それでも、もともと本は少しアブナイくらいじゃなくちゃ面白くないわけだし、何よりも、他の心理学者、特に臨床心理学の専門家たちがこの本をどう評価するのかを知りたいので、やっぱり紹介しちゃうことにする。(「こら、オマエのそんな人格こそ改造しろ」だって!? いーや、私は人格改造なんかしませんよー。)           (守 一雄)


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