第11巻第7号              1998/4/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 新入生の皆さんご入学おめでとうございます。DOHC(Dokusho One Hundred Club)は、11年前1987年の春に発足した読書クラブです。特別な活動は一切していませんが、「私もたくさん本を読もう」と思ったら、その時からあなたもDOHCの会員です。DOHCには会則はありませんが、「1週間に2冊、1単位につき2冊、本を読む」という「1212運動」を推し進めることを会員の活動としています。(1年は約50週ですから1週間に2冊で年100冊になります。また「1単位につき2冊」ならば、信州大学教育学部の学生はだいたい180-200単位取って卒業しますので、学生時代に約400冊、つまり年平均100冊読むことになります。)

 受験生時代にはなかなか本を読む機会がなかったことと思います。DNC試験をはじめ、大学入試には「誰にでも共通の知識」が必要とされます。そのためには、基本的にはどれも同じことが書いてある教科書や参考書を読んで、みんなと同じ知識を蓄えることが大事なことでした。しかし、「誰にでも共通の知識」なんて、人類全体の知のほんの一部でしかありません。しかも、そうした知識は試験では「正答」とされますが、そうした知識が本当に真実なのかは実はあやしいものなのです。物事にはいろいろな見方があり、人間の知の世界は無限に広がっています。

 日本だけでも数千万人の人々が同じテレビ番組を見て、同じ新聞を読んでいます。マンガ雑誌も数百万部が発行されています。こうした全国一律の情報しか流していないテレビや新聞や雑誌から得られる知識は、結局「誰でも知っていること」です。それに対し、本は数千部から数万部しか発行されませんが、そのかわり毎日150種類以上の新刊が発行されます。「少量多種生産」の本こそが、無限に広がる知の「宇宙」なのです。ぜひ、大学時代にたくさんの本を読んで下さい。

 この「DOHC Monthly」は、会員拡大のための宣伝を兼ねた書評ミニコミ紙です。本は読みたいけど何を読んだらいいかわからないという人のために、【これは絶対面白い】という本を毎月1回紹介してきています。「DOHC Monthly」は、授業で配布したり、学内に掲示したりするほか、パソコン通信を通して、全国の会員にも配布されています。研究室(教育学部北校舎N224室)前の箱からも自由にお持ち下さい。また、バックナンバーもインターネットで公開しています。(URLは表題の下にあります。)   (守 一雄)



【これは絶対面白い】

永井 均『子どものための哲学対話』

講談社\1000


 自分の頭で考えてみることを忘れてしまった大人のために、永井さんは『翔太と猫のインサイトの夏休み』(ナカニシヤ出版1995年)と『<子ども>のための哲学』(講談社現代新書1996年)という2冊の本を書いた。『翔太・・・』は、中学2年生の翔太と猫のインサイトの対話という設定で、まえがきにも「考えることの好きな中学生を念頭に置いて」書いたとなっているし、後者は書名そのものが「<子ども>のため」となっている。しかし、実際にはどちらも「大学生のための本」だと思う。確かに「考えることの好きな中学生」なら充分読める本なのだが、今は中学生でも勉強(=知識を憶えること)に忙しくて、考えている暇がないのだ。大学受験を控えた高校生はなおさらのことだ。最近は小学生だって塾通いで忙しい。その結果、考えることをしばらく忘れてしまった子どもたちは、大学生になってやっと考える時間が持てる。フランスでは高校で哲学が必修なのだそうだが、日本ではそんなわけにはいかない。せめて大学生になったら自分で考えることを始めよう。

 身体も使わないでいると鈍ってしまう。何年間も考えることをしなかった大学生には、これらの「子ども向け」に書いたつもりの本も難しく感じられるにちがいない。そこで、永井さんはもっとやさしい本を書いたのだ。マンガもイラストもたくさんあって、「小学生向け」の本のようだが、大学生もまずこの本から始めるといいと思う。そして上の2冊に読み進もう。おっと、大事なことを忘れていた。著者の永井均さんは信州大学人文学部教授だ。信州大学生の君たちはぜひ講義にも出てみよう。       (守 一雄)


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