第11巻第4号              1998/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



【これは絶対面白い】

日垣隆

『情報の技術』

朝日新聞社\2,500


 拝啓 日垣隆様

 新年あけましておめでとうございます。今年もDOHCをどうぞよろしくご愛読下さい。

 さて、昨年10月に出版された日垣さんのこの本を読んで、「新しい年の始まりにはこの本をDOHCで紹介しよう」と決めていました。普段は、紹介する本が決まれば書評を書くのは簡単なのですが、今回はちょっと手こずっています。(もう1月8日なのにまだ発行できないでいる。)どうやら、いつになく書きにくいことになっている原因は、著者ご本人がDOHC愛読者リストにも加わっていることがわかっているためと気づきました。そこで、変に本人を意識して書くよりも開き直って直接にご本人宛とすることにしました。

 この本のルポが数年前に朝日新聞社の月刊誌『Ronza(論座)』に連載されていた頃から注目していました。しかし、ウチの大学生協に『Ronza』が置いていないため、ついつい買いそびれ、「これだけのものだからそのうち1冊にまとまるだろう」と考えてつまみ食いだけで終えていました。今回、1冊にまとまったものを一気に読むことができて、待っていた甲斐があったと思いました。と同時に、やはり同時進行でも読んでおくべきだったと少し後悔もしました。「あとがき」にもあるとおり、「湾岸戦争」「阪神大震災」「オウム真理教事件」「ペルー日本大使館占拠事件」などが連載時にまさに起こっていたのですから・・・。

 それでもやはり一気に読めることもまた楽しいことです。それぞれがほぼ独立したテーマについてのルポだと思っていましたが、やはり全体としての関連がついているのですね。考えて見れば、連載中からも「情報の技術」とテーマは決められていたのですから、それも当然なのかもしれません。「情報の技術」という言葉からすぐに連想できるような「インターネット」や「データベース」だけでない「おやっ、こんなものまで」と思わせる題材が取り上げられていたので、すっかり術中にはまってしまっていたようです。

 毎回違った趣向で書かれていて、いろいろなルポの手法が味わえるようになっているのも楽しめます。もっとも、私のこのDOHCも毎月発行を続けていると同じ書き方では私自身がいやになってしまいますので、日垣さん自身もいろいろな形のルポを楽しんでいたのでしょう。そうはいっても、アマチュアが好きで書いているものとは違い、お金を払って買ってもらわなければならないプロのライターの仕事ですから、書けないで相当苦しんだこともしばしばだったことと思います。どのルポがそうした苦しみの産物なのかの詮索も試みましたが、残念ながら見破れませんでした。もしかしたら、全部がそうだったのかも知れません。それにしても、フリーのライターという職業は厳しいですね。これだけのルポを毎月1つずつ2年間以上にわたって書きつづけるパワーには驚くばかりです。プロとはいえ、やはり好きでないとやれないことだと思います。だから、実は全部「楽勝だった」というのが正解なのかも知れません。(いつか答を教えて下さい。)

 ウチの学生にはこの本の著者が信州大学教育学部のあるこの長野市に住んでいることも伝えたいと思います。「優れた情報の発信源は東京だ」とばかり思いこまされている私たち地方人には、作者が長野市在住だということだけでも何となく誇らしくウレシイものです。さらには、この本に書かれているような「情報の技術」によって「誰でも情報の発信源になれ、世界の中心となれること」にも気づかせたいと考えています。

 「専門書など2500円以上の本は地方では売れない」という話も聞きます。地方意識をぶっ飛ばすためにも、学生たちにはぜひこの本を買って読むように勧めるつもりです。新年号で紹介することにしたのも、最近の大学生はちゃっかりお年玉をもらっちゃったりしているでしょうから、懐があたたかい1月をねらったわけです。この号の発行が遅れて、もう使っちゃったと言われないようこのへんで失礼します。今後のご活躍を期待しています。

                            敬具

                                    守 一雄


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