第9巻第5号              1996/2/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



 昨年1995年は、日本における「インターネット元年」と呼ばれました。私も、ちょうど1年ほど前に初めて「ネットサーフィン」を楽しみ、DOHCの95年3月号には、「近いうちにwwwサーバを用意するつもりです。(名前はzenkoji.shinshu-u.ac.jpを予定しています。)」と書きました。

 あれから1年、まだzenkoji.shinshu-u.ac.jpはオープンしていませんが、同じキャンパス内でテスト公開中の教育実践研究指導センター東原先生のサーバ(http://cert.shinshu-u.ac.jp/)にDOHCのホームページを置かせていただくことにしました。(自前のサーバであるzenkojiは4月公開の予定です。)味もそっけもないページばかりですが、いよいよ、DOHC月報もネット上で読めるようになりました。バックナンバーや読者からのコメントなども徐々に加えていきます。ぜひご覧下さい。URLは
http://cert.shinshu-u.ac.jp/facul/psycho/mori/dohc/
です。(守 一雄)

【これは絶対面白い】

村井純『インターネット』

岩波新書¥650


 インターネットに関する本は巷に溢れている。しかし、そうした中で「ミスター・インターネット」と呼ばれる村井純氏自らが書いた本だからという理由で読み始めたが、情熱の伝わってくるワクワクするような面白い本だった。第一人者の書いた本でありながら、初心者にもわかりやすく、それでいてインターネットの本質が見事に描き出されている。村井氏が日本における(というか世界全体にも影響を与えつつ)インターネットを作り上げてきたのも、コンピュータ科学者・技術者としての力の他に、大局的にものごとが判断できて、交渉ができる「政治家」的な能力、さらには国を越えて実利のために動く「実業家」としての能力、そしてこの本で発揮されているような「広報マン」としての能力などを兼ね備えていたからであることがよくわかった。
 科学技術の最先端であると思われているインターネットは、実はとても人間らしいものである。科学技術の発展によって、私たち人間個人は、そのときどきの最先端技術を駆使できる大きな組織に振り回され、人間らしさを奪われてきた。インターネットもまた世界的な組織であり、「やさしくなる」という宣伝文句とは裏腹にどんどん難しくなるパソコンと同じように、またまた新しい「人間疎外」がなされるのかと恐れていたが、実はまったくの逆であった。インターネットこそは、まさに「人間復権」のためのものである。
 インターネットは「いいかげんな」技術の集合体である、緩やかな基準だけを決めていて、「とりあえずできるところからやってみる」。しかし、そうしたいいかげんなものでも、たくさん集まれば互いに補い合って全体としては結構うまくいく。これって、人間の社会そのものではないでしょうか?「完璧な」人間はひとりもいない、皆それぞれが自分のできることをとりあえずやっている。しかし、社会は成り立っている。インターネットには全体を統括する人も組織もない、お互いの顔がわかる程度のグループの集合体(のそのまた集合体)である。これもまた、民主主義の社会とよく似ている。
 もう一つ、この本を読んでわかったことは、日本語で情報発信をしてもいいのだということである。これは、上の2つのことから必然的にわかることなのだが、改めて村井氏に明言してもらってハッキリわかった。「インターネットの言語は英語にする」と決めるような組織はないのだし、「とりあえずできることからやってみる」のだとすれば、ほとんどの日本人は日本語で始めるしかない。(英語で発信するにしても、「完璧な」英語である必要はない。とにかく発信してみることが大切なのである。)
 なお、この本そのものは誤植もなく、とりあえず出版してみたというような「いいかげんな」ものではないことを、念のため申し添える。(守 一雄)


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