第8巻第12号              1995/9/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



  毎年書くことですが、夏休みが終わるのって憂鬱ですね。でもグチを言ってい ても仕方ありません。さっさと頭を切り替えましょう。夏休みが終われば仕事、 遊びの要素を廃し、「分を知って実用に徹する」ことを教えてくれるこの2冊を 今月は推薦します。                     (守 一雄)

【これは絶対面白い】

杉原厚吉『理科系のための英文作法』

中公新書¥680


 初心者は安全な道の真ん中を歩く。
 「初心者が外国語で文章を書くのは、慣れない人が新雪の道を歩くようなもので ある。どこまでが正しい文章でどこからが間違った文章かは、雪で隠された道路 の端と同じように、よくわからない。あまり端に近づきすぎると、あやまって足 を踏みはずす。そこで、うまい表現であっても、道の端に近いと思われるものは すべて無視する。道の中央を歩く方法を「原則」として示し、なるべくそれから はずれない歩き方に注意を集中する。「安全第一」でいこうというわけである。 (p.11)」
  著者によれば、初心者といっても「中学・高校の英語は勉強してきたが、まだ 英語で論文を書いたことのない人、あるいは、ぎこちない英文しか書けないと感 じている人」を対象としているという。実は、私は何度も英語で論文を書いてい るし、周りからも英語で論文が書ける人とみなされていて添削を頼まれたりもす るが、私も初心者である。結局、最終的にはネイティブの人に見てもらわないと 投稿できない。それでも英語の論文が書けるのは、とにもかくにも伝えたいこと を伝えられるからである。ネイティブの人に見てもらって英文を直してもらおう にも、何を言いたいのかが伝わらなければネイティブの人も直しようがない。
 この本を読めば、何とか伝わる英語が書けるようになる。内容さえ伝えること ができれば、あとはネイティブに頼んでより適切な英文に直してもらえばよい。 この本で示される法則は4つ。1.話の道筋にたくさん「道標」をつけよう。2. 段落・文・節などの構造を、意味内容と一致させよう。3.くどくなってもいい から文と文の情報の受け渡しをはっきりさせよう。4.単調な文章になってもい いから視点を固定して書こう。どれもなるほどと納得するものばかりである。そ して、全部に共通する考え方は、「例外に煩わされずにルールに則って書こう= 道の真ん中を歩こう」ということなのである。

諏訪邦夫『パソコンをどう使うか』

中公新書¥680


  世の中はインターネットやウィンドウズ95に代表されるマルチメディアの話題 で花盛りである。マルチメディアとは、従来の文字情報の他に、絵(静止画や動 画)そして音が加わったものである。そして、絵や音が出せるパソコンの代名詞 がマッキントッシュでありウィンドウズであった。この本は、そうした中で基本 的に「ウィンドウズには手を出すな」という立場で書かれている。いうなれば反 マルチメディア的である。この本で重視されているのは、文字情報であり、それ を打ち込むためのキーボード・それを管理するためのハードディスクである。さ らに軽快に持ち運ぶためにノート型がいいと薦める。
 マルチメディア花盛りの時代にあえてこうしたスタンスで本を書くのは勇気が いることであるが、確かに「仕事本位」で考えれば、著者の言うとおりである。 私も、ついつい浮かれてマックもウィンドウズもと手を出してみたが、結局仕事 に使うのは文字情報である。マルチメディア関係の本がたくさん出版されている 中で、この本がベストセラーの上位にいるのも地味ではあるが「実質本意」の良 さが評価されているのだろう。
              (守 一雄)
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