第8巻第8号              1995/5/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



 風薫る五月になりました。田園風景のまだ残る長野電鉄線「附属中学前」駅徒 歩3分のところに自宅を構えました。新住所は381長野市小島xxx-xです。電話番 号は0262-zz-yyyyのまま変わりません。長野に腰を落ちつけて、これからも地方 からの情報発信を続けて行くつもりです。よろしくお願いします。
 さて、世の中はオウム真理教いじめ一色ですが、「猛毒サリンよりも巨大権力 (マスコミや警察)の方が恐ろしいこと」にどれだけの人が気づいているでしょ うか。オウム真理教をめぐる一連の警察の行動、マスコミの報道、それを見て楽 しむ全国の視聴者という構図は、忌まわしい「いじめ」の構図そのものです。い じめっ子(=警察)がいて、それを囃し立てる子(=マスコミ)がいて、さらに それを見て喜んだり黙殺したりする観衆(=全国の視聴者)がいる。いじめっ子 (=警察)は、担任の先生(=国、裁判所)の後ろ盾があるのでやりたい放題で す。「いじめられる子(=オウム真理教)の方にも問題があるのだから仕方ない」 と「善意の」観衆が考えているところまでソックリです。
 「おまえはオウムの肩を持つのか。サリンで被害にあった人のことも考えてみ ろ」ですって?私は別に「オウムが悪くない」と言っているわけではありません。 しかし、「サリン事件の犯人がオウム真理教だ」とも決めつけるべきではありま せん。私たちは松本サリン事件の直後には、あの河野さんを犯人に仕立て上げて しまった苦い経験をしているではありませんか。どんなに疑わしいとしても「容 疑者はあくまでも容疑者であって犯人ではありません。」マスコミに裁判所の代 わりをさせてしまってはいけません。
 あなたは濡れ衣を着せられた経験がありますか?身に覚えのないことで嫌疑を かけられ、みんなから囃し立てられたり白い目で見られたりしたことがあります か?そんな理不尽な災難がいつ襲ってくるかも知れないのです。それどころか、 大災害で被災したり、大事故で不幸が起こったりしたときでさえ、日本全国の観 衆はそれを見て喜んだり黙殺したりするのです。こうしたことの方が本当はずっ と恐ろしいのだということがこの本を読むとよくわかります。「宅八郎」という 名前だけから毛嫌いして読むのをやめたりしないように。宅氏の言っていること はテレビのコメンテイターよりもよっぽどまともです。(守 一雄)

【これは絶対面白い】

宅 八郎『処刑宣言』

太田出版 \1,300


 自称「おたく評論家」の宅八郎氏がマスコミからのイジメに遭い、その報復と して大手出版社の編集者に「いやがらせ」----といっても当の編集者がマスコミ の一員として、日常的にやっていることを同じように「目には目を」でやっただ けのこと----をしたことから、些細なことで別件逮捕されるという一連の事件を 詳しく報告したもの。当事者の一方の書いたものだけから判断をしてはいけない が、最近のマスコミや警察のやり方を見ていると、宅氏の主張には納得がいく。 オウムの幹部とされる人たちもそうだったが、道路交通法違反のしかも相当な軽 微なものであっても、警察は「その気になれば」逮捕して、マスコミのさらし者 にすることができるのである。友だちの自転車をちょっと借りて、後で「借りた よ」と言うつもりだったとしても、窃盗罪で逮捕されてしまう。そんな世の中の 方がよっぽど恐ろしい。
 ニュース番組がまじめな報道を装った娯楽番組になってしまったのはいつ頃か らだっただろうか?マスコミの「報道犯罪」「報道・言論の自由」「人権尊重・ プライバシー保護」という現代の重大問題に鋭く切り込んだ宅八郎渾身の一冊。 対マスコミ版『いじめ撃退マニュアル』としても読める。宅流の毒も効いていて おもしろいヨ。    (守 一雄)


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