第8巻第3号 1994/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY
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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)
【これは絶対面白い】
小寺やす子
(文)
・野口よしみ
(マンガ)
『いじめ撃退マニュアル』
だれも書かなかった<学校交渉法>
情報 センター出版局 \1,400
これはスゴイ本である。一言で言うならば、これは「学校という組織との賢いケ ンカの仕方」を書いた本である。過激である。毒がある。しかし、真実を突いてい る。そして明るい。だから、読んでいて楽しい。
「いじめ」「登校拒否」「学校不適応」などに関する本は、「学者先生」の当り 障りのない、それゆえ役に立たない「高説」か、「学校に行けない子どもの方が感 性が優れている」式の慰めか、安易な「学校否定論」かなどが多かった。実を言え ば、私もほとんど同類であった。学校の現状を批判しつつも、個々のケースにはど う対応すべきか、ハッキリとした対策を立てられずにいた。現代社会の中の歪みか ら生じてくる種々のこうした問題は、複雑な要因が絡み合い、簡単な解決策は望め ないのではないかと、なかば諦めていたのだ。
しかし、解決策はあるのだった。それは、まさに「正攻法」をとることであった。 いじめにしろ、登校拒否にしろ、すべての問題には「正面から腹をくくって」立ち 向かえばいいのである。「いじめ問題は、学校で絶対的な権力を持ち、教育のプロ である教師が本気で立ち向かえば解決するはずだ」というのがこの本の第一の主張 である。もちろん、教師が本気で取り組んでも解決できないようなケースもあるだ ろう。しかし、そんな解決困難なケースばかりが日本中に蔓延しているとはとうて い思えない。やはり、教師の本気になり方が足りないのである。
いじめが起これば、一番困るのはいじめられる子ども自身である。子どもは、も ちろん一生懸命に問題に立ち向かう。しかし、教師は所詮他人である。自殺でもさ れない限りは、なかなか腹をくくって取り組むことにはならない。ある意味では、 親でさえ、子ども本人の「痛み」はわからないものである。(この本によれば、特 に父親はそうであるという。)そこで、この本の主張は、ズバリ「親も教師も腹を くくれ」である。親は、それでも事の重大さにいずれ気づかざるをえない。そこで 後は、いかにして「教師にも腹をくくらせるか」である。そして、この本はそのた めの戦略を書いた本なのである。
ここに紹介された<交渉法>は、学校に対してだけでなく、警察・病院・役所・ 大会社など、庶民にとってなかなか交渉の難しい相手との交渉すべてに役立つ。そ の要点をまとめれば、(1)証拠を残す(メモをとる・記録をとる)と(2)具体 的に要求する、の2点になるだろう。
すべての親がこの本を手にして交渉術を身につけたら、これは手ごわい。教師の 側にもマニュアルが欲しくなる。しかし、心配は無用である。教師のためのマニュ アルもちゃんと1章分を用意してくれている。
文章は歯切れがよく、読んでいて気持ちがいい。実際に問題を抱えた親が読めば、 勇気づけられて元気も出てくるにちがいない。随所に挿入された、野口よしみさん のマンガも的を突いていて、しかも面白い。これはオススメである。 (守 一雄)
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