第7巻第11号              1994/8/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 今年は暑い!信州の哀れな子どもたちもやっと遅い夏休みに入りました。全国の子どもたちが夏休みの始まりの夜をプロ野球のオールスターゲームで味わって、「平日なのに学校が休み」という夏休みの有難さを実感する初めての月曜日であった7月25日、その日は、体温に近い気温で長野市が日本全国で一番暑かった日でもありました。その7月25日月曜日、信州の子どもたちは36度の猛暑の中、まだ教室で勉強していたのです。
 その子どもたちも、ほぼ1週間遅れで今日、夏休みの有難みを味わっていることでしょう。でも、彼らの夏休みは、終わるのも早いのです。旧盆が明ける18日にはまだ残暑の残る教室でまた勉強が始まります。私が調べたところによると、このわずか3週間という夏休みは、北海道の子どもたちの夏休みよりも短く、日本一の短さです。(今回、全国の小中学校の夏休みの期間を調べようとして、文部省に電話をしてみましたが、驚いたことに、文部省では各県ごとの夏休みの期間を把握していないのでした。結局、各都道府県の教育委員会、といっても北海道と東北だけですが、に電話して長野県が日本一夏休みが短いとわかりました。)
 長野県の小中学校は、他の長期休暇も特に長いわけではなく、おそらく、年間の登校日数の多さでも日本一だろうと思います。さらに、学校に「拘束」される時間も長く、始業式・終業式の日も通常どおりに授業があります。私は長野県の子どもたちに不登校が日本一多いことの原因の一つが、こうした年間拘束時間の多さにあると考えています。            (守 一雄)

【これは絶対面白い】

松本侑子『植物性恋愛』

集英社文庫\340


 なんとも艶めかしい、さやえんどうのような豆の絵に魅かれて、手に取ってパラパラとめくると、「具が大きい」ではなかった「字が大きい」という理由で読んでみる気が起きた。そうなのだ。実は、恐れていたことが現実に私の身に起こり始めている。小さい字が読みづらいのである。これから先の私の読書人生において、本の選択基準に「活字の大きさ」が無視できなくなったことを改めて気づかされた。
 というわけで、表紙の絵と字の大きさだけから買って読み始めた本であるが、面白かった。読み終わってから、上野千鶴子さんの解説を読んで、著者の松本侑子さんが数年前にベストセラーとなった『巨食症の明けない夜明け』でデビューした作家であることも知った。  ことさらに美しい言葉を選び、詩的な表現が多用される文章で綴られる文体。一生懸命に文章の内容をイメージしようとしていると、突然に現れる性的な言葉にビックリさせられる。しかし、そうした言葉を含んでいても、淡々と書き進められる文章。内容だけでなく、文体もまた、表題にある「植物性」という表現がぴったりの感じである。
  小学生の頃に強姦された少女が、愛と性とを切り離してしか考えられなくなる。そして、繰り広げられる不思議な「植物性恋愛」の世界。男性読者には理解し難い女性心理の世界。ところが、解説の上野千鶴子さんは、同じ女性として、この小説の内容が共感的に理解できているようである。作者の松本侑子が見事な「嘘つき少女」で、どこまでが嘘で、どこが嘘でないかが見破れるらしい。しかし、私にはわからない。ただただ、女性の不思議さを再認識するのみである。        
 面白かったので、表紙カバーに紹介されていた他の2作『巨食症の明けない夜明け』と『偽りのマリリン・モンロー』(どちらも集英社文庫)も読んでみた。どちらも面白かった。しかし、この3作ともまったくのフィクションであるという。上野千鶴子さんが解説で述べるように、見事な嘘つき少女ぶりである。                              (守 一雄)


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