第7巻第6号              1994/3/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


【これは絶対面白い】

井上ひさし『コメの話』

新潮文庫 \400


 新潮文庫目録の解説に曰く「コメの関税化・自由化に妥協すると、われわれの生活は根本からくずれて、日本の国土も危うくなる。作家井上ひさし渾身の警鐘!」
 井上ひさしは、私の尊敬する作家であるが、4年半のDOHC Monthly に一度も登場しなかった。3月初めにこの本が出たことを知り、読む前から「4月号はこれで行こう」と決めていた。読んでみて期待通りの面白さだった。これは絶対のオススメである。読んでみて面白くなかったら、私が400円で買い取る。
 政府自民党は、「コメは一粒たりとも日本に入れない」と言い続けてきているが、国民の多くは、いずれ自由化になるに違いないと醒めた目で見ている。「自由化に反対しているのは、コメ作りをしている農民たちのエゴだ」というしたり顔の評論家たちの話をすっかり信じてしまっている。しかし、この本を読むと、コメ輸入自由化の問題点や、コメ作りが日本国民すべてにとって大切であることが、よくわかる。いや、日本だけでなく、東南アジア諸国をはじめ、世界的な食糧問題を考える上でも、日本のコメ自給が極めて重要な問題であることがわかる。
 コメ問題をめぐって、作者が講演をしたり、いろいろな雑誌に書いたものを集めたものであるので、重複する部分も多く、初めの50ページほどを読めば論点は出尽くしてしまう。それでも最後まで読ませてしまうところが作家井上ひさしのスゴイところである。 (守 一雄)
=========================================================================  以上は2年前のDOHC第5巻第7号での紹介文であるが、その後、政権が替わったにもかかわらず、結局、コメは輸入されることになってしまった。もう今さら何を言ってもしょうがないと思っていたが、井上ひさしの新刊を読んでみて、また、あらためて感激した。コメの輸入がなされるようになったのは昨年のコメの不作も大きな原因であった。テレビのニュースによれば、各地で国内米の買占め騒動が起きているという。よほどの恵まれた環境にいる人でなければ、これから秋の新米が採れるまでの間に、なんらかの形で輸入米を食べることになる。こうした機会に、この本を読んで、もう一度日本の、いや世界の食糧事情について考えてみよう。

【これは絶対面白い】

井上ひさし『どうしてもコメの話』

新潮文庫 \440


  面白い本には2種類あって、目から鱗が落ちて頭の中がすっとするというタイプと、本に書いてあることを実行したくなったり、他人に話したくなったりするタイプがある。この本は、後者のタイプの本である。この本に書かれていることを実行してみたい。みんなに話して回りたい。コメは理想的な穀物で、栄養のバランスも良く、コメと大豆だけでも充分に栄養がとれること(我が家はみんな納豆ごはん大好き)、連作がきき、調理も簡単であること、そして、日本はそのコメ作りに最も適した風土であること、にもかかわらず、日本はコメ作りをやめていく方向に向かっていること、などなど、ああ話したい話したい。そして、この本を読んで、自分でも稲作をやろうかと真剣に考えた。(コラ笑うな。)    (守 一雄)


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