第6巻第10号                   1993/7/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



 信州大学教育学部をホスト局とする新しいローカル・ネットSNOWnetが誕生しました。教育学部キャンパスの附属教育実践研究指導センター内にあって、教育学部と県内の小中高等学校との情報交換に役立てようという趣旨で始まったものです。その中に、無理を言って、「DOHCコーナー」というのを作って貰いました。DOHCコーナーには、第1巻第1号からのバックナンバーがすべて掲載され、いろいろな人のレスポンスが書き込めるようになっています。今までも、NIFTYとjunetで個人的にDOHC月報を配送していましたが、今度の形式では私が紹介した本に対する他の人の感想や評価も読めるようになります。ぜひご利用下さい。(回線番号0262-37-6125、通信制御手順N81XNです。入会手続きはオンラインでできます。入会しなくとも、 GUESTとして中を覗くことも可能です。「DOHCコーナー」へは、メインメニューから[3]電子会議ノート[9]信大ひろば[3]DOHCコーナー、と進んで下さい。)
  6月の終わりから信州大学教育学部は夏休みに突入しています。この7月号は講義中には配布できません。そこで、今回紹介する本はネットワークでの読者を想定したものになりました。

【これは絶対面白い】

市川伸一『ネットワークのソフィストたち』

「数学は語りうるか」を語る電子討論

日本評論社 \2,575


  「今の高校までの数学では、問題を解くことばかりやっているようだが、『逆関数とは何か』というような記述式の数学テストを一部導入したらどうか」という提案に対してネットワーク上で行われた討論(=電子討論)を本にまとめたものである。電子討論の利点は、市川氏もまとめているとおり、(1)物理的・社会的な距離に制約されない(遠く外国にいる人とでも、エラすぎてなかなか会えないような人とでも討論ができる)、(2)時間的に制約されない(ファクスや留守番電話のやりとりみたいなものだから、同じ時間に居合わせる必要がない。相手の意見を良く読んでから、良く考えて好きな時間に反論すれば良い)、(3)討論の記録が電子媒体に残せる(しゃべるのではなく、書き言葉での討論だから、「速記者付きの討論会」みたいなものである。そこで、発言内容を後から吟味することも可能だし、こうした本を作ることも比較的容易である。)ということである。この本では、こうした利点を活かして、約3カ月半に渡り、さまざまな立場の人が、「記述式の数学テストの是非」をめぐって論を闘わした様子がまとめられている。A5版の体裁で230頁あまり、400字詰めの原稿用紙600枚くらいの量であるが、これでも「全記録を3分の1に圧縮した」とあるから実際には2千枚近い量の議論がなされたことになる。
  実は私もこの市川氏らと激しい電子討論をした経験がある。好きなときに反論を書けばいいとは言っても、相手をそう長く待たせるわけにはいかないし、他の人の意見もどんどん出てくるので、反論を書くためにいきおい夜遅くまでキーボードに向かうことになる。というわけで、実は、電子討論は身体に良くない。それでも、日常の忙しさの中で、人とじっくり討論する機会の乏しい現代において、電子討論は、貴重な討論の場であり、Jリーグよりもエキサイティングで面白いのである。この本も、その面白さを充分に伝えている。この本を読むと、君もきっと電子討論会に参加したくなる。 (守 一雄)
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