第6巻第3号                   1992/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



 私は「非スポーツ人間」です。長野に住んでいながら、もう何年もスキーもスケートもしたことがありません。5、6年前(いや7、8年前か)にはときどきテニスをしたりもしましたが、今はまったくしません。数年前までは、夏にプールで1日に1000mを泳いだりもしましたが、今年の夏はせいぜい50mでした。学内のスポーツ大会や親睦ソフトボール大会などにも出たことがありません。スポーツをする暇があったら、本を読んでいる方が楽しいからです。
 こうした自他ともに認める「書斎派」人間の私も、心の片隅には「健康のためにもっとスポーツをしなければ」という思いがあり、さっそうとテニスにでかける同僚の先生などを見ると秘かにコンプレックスを感じたりしていたのですが、そんな悩みを吹き飛ばすウレシイ本がありました。書店でこの本を見つけたとき、普段から何となく考えていたことをそのままズバリ言い切ったこの書名だけで、迷わず買うことに決めました。                    (守 一雄)

【これは絶対面白い】

加藤邦彦『スポーツは体にわるい』

カッパ・サイエンス\790


 本書の結論は書名のとおり明解である。その論拠は、(1)スポーツが生物学的、医学的にみて、有害な働き(ストレス)をしたり、有害な物質(活性酸素)を体内に作ったりすることがわかったこと、(2)現に、スポーツ選手は病気に患かりやすく、短命であること、である。「それは、過度の運動をした場合だろう。適度のスポーツは、心身をリラックスさせ、健康に有益なはずだ」と反論したくなるが、著者によれば、「健康によい適度の運動」というのは、「うっすらと汗をかく程度に歩く」こと程度だという。この程度の運動なら、スポーツをしなくても、自分の部屋を掃除したり、手の込んだ料理を作ったりすればいいのだそうだ。さらには、「スポーツの後の爽快感」というのも、スポーツに伴う苦痛を和らげるために脳の中に麻薬物質が作られるからであって、むしろそうした麻薬を自分の体内に作ってまで対処すべき「問題」が体内に生じたことの証拠なのだという。
 では、スポーツは止めるべきなのか。そんなことはない。著者の答えは、「健康のため」にスポーツをやるのはバカげているというのである。スポーツが楽しい人はどんどんやれば良い。(たとえ、多少害になったとしても、楽しくてやる分には構わないではないか。)では、健康のためにはどうすればいいのか。スポーツに健康法を求めずに、生体リズムにあった生活と節度ある食生活を送り、散歩程度の運動をするのがいいのだという。(やってる、やってる、とウレシクなる。)
 繰り返しになるが、この本は、スポーツを禁止しようというのではない。スポーツと健康を無批判に結びつけてかえって体を壊すことのないようにという警告をしているのである。ふだんスポーツをしている人にもぜひお勧めしたい。 
 というわけで、またスポーツから遠ざかることになる私であった。(でも、たとえ、私が早死にすることがあったとしても、それは運動不足のせいではないゾ。だって、「読書だってきっと体に悪い」に決まっているのだから。)(守 一雄)
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