第5巻第12号                    1992/9/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  何歳になっても、夏休みが終わる8月31日というのは嫌なものです。夏休みの翻訳の宿題は終わらなかったし、9月10月は予定がいっぱい詰まっていて考えるのもイヤなのですが、とうとう9月になってしまいました。さて、このDOHC月報もついに今月で満5年分の発行を終えました。ご愛読ありがとうございました。最初の年には、「1年間続けられるかどうか・・・」を心配していたことを思うとウソのようです。その5周年記念に紹介する本は、このために半年前からとっておいたものです。3,800円とちょっと値がはりますが、これはおススメです。(この本は、もともとは2月に教育心理学科の学生後藤さんが私に紹介してくれたものです。)                          (守 一雄)

【これは絶対面白い】

A・ディキシット/B・ネイルバフ
『戦略的思考とは何か』

エール大学式「ゲーム理論」の発想法

菅野隆/嶋津祐一訳

TBSブリタニカ(\3,800税込)


 この本は、私が近頃凝っている「ゲーム理論」の本である。「戦略的思考」というのは、「相手がこちらを出し抜こうとしているのを承知したうえで、さらにその上をいく技である」という。「そんなエゲツナイわざをみがく必要はないワイ」と思う人もいるかも知れないが、「職場や家庭で、この戦略的思考を活用する機会は実に多い」のである。「戦略的思考」というと大げさだが、結局は「賢く生きるためのチエ」のことである。
 さて、そうしたチエがこの本で学べるのである。何といっても楽しいのは、たくさんの身近な例が用いられていることだ。それに加えて、各章の最後には、「ケース・スタディ」という練習問題がついている。その章で学んだことを基に、自分なりに答えを考えてみると、「ケース・ディスカッション」として著者の解答が示されている。このケース・スタディの例題も楽しい。著者のまえがきによれば、こうしたケース・スタディを示して少人数でディスカッションをするというのが、アメリカのビジネススクール(経営学大学院)のやり方らしい。これは面白い授業になることだろう、私も授業に取り入れよう。
 全体の導入部となる第1章の後、第2章から第12章までの11章で、徐々に内容を深めながら、戦略的思考に関わる種々の法則について説明がなされていく。そして、最後の第13章は、章全体が各種の面白いケース・スタディに充てられている。本当に幅広い範囲から、いろいろな題材がとられている。
 著者たちのユーモア精神は本書の随所に見られるが、その中からひとつを引用する。「この本を読み終えるまでには、読者は経営者あるいはスポーツ選手、政治家、親として以前より優れた戦略家になっているに違いない。最後に忠告を一つ。・・・・・もし読者がフェアプレーを望むなら、ライバルにもこの本を薦めてはいかがであろうか。」                               (守 一雄)
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