第5巻第9号                    1992/6/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  「新幹線にもオリンピックにも反対してきた私にとって、絶望の6月となってしまいました。」と書いた失意の昨年6月から、早くも丸一年が過ぎようとしています。そんな折り、イギリスのジャーナリストが書いたIOC批判の本の翻訳本(V・シムソン/A・ジェニングズ『黒い輪』光文社\1800)が出版されました。
 「ここには、現代オリンピックに関する重要な秘密が記録され、従来のオリンピック関係書には見られない資料が豊富に蓄積されている。金銭を動かすオリンピックの影の人物と組織が、たたみかけるように次々と登場し、純真な人々が決して読んではいけない物語が展開する。」と監訳者のまえがきにもあるとおり、IOCやサマランチ会長の金権まみれの実態が暴露されています。
 「チクショウ、なるほど、こういうことだったのか」と思いながら読みました。オリンピックの金権構造、スポーツの欺瞞、国際組織のからくりなどまったく呆れたことばかりです。「今のオリンピックには訣別を告げる潮時である。それでスポーツが失うものは何もない。子供たちは相変わらず公園でボール蹴りに興じ、かけっこをやめることもあるまい。だが、いかがわしい集団と、かつてファランヘ[スペイン・ファシスト]党員だった指導者[サマランチIOC会長]と、そしてテレビ視聴率を押し上げるためにいいように利用されるスポーツしか大人が提供できなければ、子供たちは危険にさらされるだろう。」という著者らの主張にも同意できます。それでも、思ったよりインパクトが足りない感じでした。恐らく、同じことを昨年紹介した『反オリンピック宣言』の中で既に読んでいたからかも知れません。そこで、以下にはこちらを再録しました。でも、どっちも面白いよ。

【これは絶対面白い】 (再録)

影山健・岡崎勝・水田洋

『反オリンピック宣言:その神話と犯罪性をつく』

風媒社(\1133)
[10年前の本なので、書店で注文して下さい。風媒社052-331-0008]


  「この本の特徴は、体育の理論と実践にたずさわるスポーツ専門家が、オリンピックに反対する理由をあきらかにしたということにある。」(「まえがき」より)
 無条件に誰もが賞賛するオリンピックやスポーツそのものにも多くの問題が隠されていることを改めて知らされた。近代オリンピックは、貴族主義IOCによって経営される多国籍企業活動であり、出場選手はもちろん、オリンピック規定種目それ自体が、庶民とは切り離された特権的エリートのものである。オリンピックが国民(県民)のスポーツ振興に役立つなどというのは嘘っぱちで、オリンピックは国民から「自分が楽しむための」スポーツの機会を奪う。市民のスポーツに使われるべき金が、ほとんど競技人口のいないボブスレーやリュージュの選手強化育成費に使われてしまう。私たちの税金をつぎ込んで作る立派な競技施設も、それを使うのはスポーツ・エリートばかりで、しかも、その施設の維持管理費に社会福祉・文教予算が喰われてしまう。まったく踏んだり蹴ったりである。 (守 一雄)
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