第5巻第4号                    1992/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  あけましておめでとうございます。1992年もどうぞよろしくご愛読下さい。
 1992年と言えば、DOHC1990年5月号で紹介した、太田哲二『ゴミ恐慌1992年』(八重岳書房)では、「東京を含む首都圏のゴミ処理は1992年には限界に達し、その後のメドが全くたっていない」ことが述べられていました。ゴミ問題は必ずや今年のキーワードとなるでしょう。ゴミをゴミとしないで資源としてリサイクルするという考え方は、ここ数年で確実に根付いてきたと思われますが、何がゴミで何が資源なのかを統一的に理論づける概念は「エントロピー」であることがわかりました。ぜひご覧下さい。要注意:かなりのショックを受けます。 (守 一雄)

【これは絶対面白い】

槌田 敦『エントロピーとエコロジー』

ダイヤモンド社\1400


  「資源物理学」の提唱者による資源物理学の入門書である。8つの章と1つの付章のタイトルと小見出しをいくつか拾い上げて並べると本書の内容が良く分かるであろう。第1章「エントロピーとは何か」エントロピーとは物と熱の「汚れ」、第2章「資源物理学の考え方」エントロピーを捨てることの大切さ・廃物から資源への回復(循環)の必要性、第3章「生命とエントロピー」生命はエントロピーを捨てる、第4章「生きている地球:エコロジーの基礎」生物循環を支える土、第5章「循環を破壊する石油文明」石油文明国日本の汚染、第6章「科学技術の幻想:原子力発電」対策のない核のゴミ・石油で成り立つ科学技術、第7章「人間を含めたこれからの自然」江戸文明を再評価する・土と水を育てる、第8章「価値観の転換のために」文明を放棄する・権力に余剰食糧を供出しない、付章「エントロピーと原子力発電」、というわけである。
 ゴミというのはエントロピーの目に見える形だったのである。我々は、資源やエネルギーを大切にすることを教えられてきた。あるいは「その大切さを忘れた」という嘆きをよく耳にするようになった。しかし、本当に大切なのは資源やエネルギーではなく、その廃物であるエントロピーを捨てることだったのである。(分かりやすいたとえで言えば、食べ物を食べることよりもウンコをすることの方が大切なのである。)いま私たちが直面している危機は、石油などの資源が枯渇することではなく、「エントロピーを捨てることができなくなってきている」ということなのである。牛乳パックの回収や再生紙の利用程度のことでは何も解決しないのだ。著者が提示する解決策は「江戸時代の生活に戻ること」である。つまり、自然の循環によって元に戻ること以外はしてはいけないということである。ウーン、ゴミ問題の根はここまで深かった。私はショックでしばらく欝になりそうである。(守 一雄)

室田 武『君はエントロピーを見たか?』

朝日文庫\430


  『エントロピーとエコロジー』はやさしく書かれてはいるが、それでもエントロピーの概念そのものが難しいために、やや難解に感じられる。そこで、まずはじめにこちらを読むことを薦める。私もこっちを先に読んだ。(守 一雄)
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