第5巻第3号                    1991/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  早いもので1991年もあと1月になってしまいました。個人的には非常に忙しい年でした。この1年を6字以内で言うと、「色々あった。」(c1987清水義範)
 DOHC月報での面白い本紹介もマンネリ気味で、先月、先々月は新刊の文庫本の中から今まで読まなかったタイプの本を意識的に何冊か選んでみました。「大当り!」というのはありませんでしたが、「当り」が2つありましたので紹介します。どちらも予想外に面白く一気に読みました。 (守 一雄)

【これはかなり面白い】

高杉 良 『小説巨大(ガリバー)証券』

講談社文庫\580


 酒・タバコ・競馬・パチンコなどと並んで「株」というのも私にはまったく無縁の世界だったが、読みだしてみると、主人公が同年代だったりすることもあって面白く読めた。書名にある「ガリバー」というのは野村証券のことであるが、小説では「丸野証券」という名前になっている。その他、未公開株を政治家にバラまいた「コスモ」疑惑の「江口」社長とか、世界一の自動車メーカー「セントラル」自動車系列の自動車部品メーカーの「大糸」製作所の株を米国の「ヒギンズ」氏が大量に買い占めるとか、企業買収で名を成した「ニチベア」のオーナー社長だとか、こういった世界に無縁の私でもそれとわかる私企業・個人の名前が絶妙に言い替えられていて、この世界に詳しい人にはきっと何倍も面白いのだろうなと思いながら読んだ。そんな「謎とき」をしながら、日本の金融政策、証券会社の仕事内容、企業経営、などがストーリーを追いつつだんだんと分かってくるのが楽しい。「昭和」証券の「北村紘一」というクセのあるワンマン社長が物語の展開に大きく関わるのだが、最後まで誰がモデルなのかが分からず気になったので、西野武彦『THE野村:証券の巨人が世界経済を牛耳る日』(世界文化社\1,360)というノンフィクションも読んでしまった。おかげでこっちも面白く読めた。で、結論、「野村証券というのはスゴイ。」

【これはかなり面白い】

二谷友里恵『愛される理由』

朝日文庫\440


  これは去年ベストセラーになった本である。「天下の朝日新聞社がタレント本などを出版して」と少々バカにしていたのだが、授業の「感想ノート」で学生が推薦してくれた本でもあったので、「だまされたと思って」読んでみたら面白かった。解説の井上ひさし氏が述べているように、「娯楽小説の手本のような作品」である。とっても幸せな気分になれる。『小説巨大(ガリバー)証券』でも「日和」証券の日野一氏になりきって読んでいたが、この本でも私は「郷ひろみ」になりきって読んだ。『紐育日記』(朝日文庫)も読んでみよーっと。 (守 一雄)
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