第4巻第12号                    1991/9/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  さあ9月だガンバローッ!!(と自分に元気づけをする。)あーあ9月ですね。休暇を取った時は涼しく、仕事をしようとすると暑くなるイジワルな夏が終わりました。DOHC月報は今月で満4年分の発行を終えることになります。ご愛読ありがとうございました。7月8月と例年以上に本が読めました。いろいろ雑多に読みましたが、面白いと思った本は評判にもなっていてここで紹介するまでもないでしょうから、いかにも売れてなさそうな次の本を紹介します。(話題の新興宗教家の書いた「できのわるいSF」は売れているのに!?)余談ですが、翻訳ものも「超訳」をすると売れる。学術書の翻訳も「超訳」にしたらどうだろう。(カゲの声:学術書を「超訳」すると訳書ではなく著書になる。)     (守 一雄)

【これは絶対面白い】

ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学』

HBJ出版局(\2,200+税)


 今年の6月号で紹介したドーキンスの『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店(\2800)の第12章の基になっている本である。12章を読んだ時に原本を読もうと思って文献表を見たら、なんと訳本が出ているではないか。原書は1984年、訳書は1987年2月の出版であるから、かなりスバヤイ。(HBJ出版局というのはアメリカの出版社Harcourt Brace Javanovich の日本支社らしい。)
 ゲーム理論とコンピュータシミュレーションによる協調関係の進化を論じた本である(原題は『協調の進化』)。邦題は本書の内容をうまく言い表わした適切なものであるが、同じような名前でちっとも科学的でない単なる「横町のおじさんの人生論」みたいな本がたくさん出ているために、学術書とは思われずに損をしたように思う。いっそのこと「横町のおじさんの人生論」を期待する読者に売れてしまえばいいのだが、当然のことながら、そういう人はまずこの本は買わないだろう。
 全部で9章からなり、第1章でまず、2人のプレーヤーの「協調」と「裏切り」とで成り立つ「囚人のジレンマ」と呼ばれるゲームが紹介される。引き続く第2章と第3章では、専門の学者が作った種々のゲーム戦略のどれが一番強いかが「コンピュータ選手権」によって試される。その結果は、なんと「自分からは決して裏切らない」戦略が一番だったのである。第4章では、第1次大戦の塹壕戦での例が、第5章ではバクテリアから鳥類までの種々の生物の生きる戦略が、それぞれこの「自分からは決して裏切らない」戦略の有効性を示すものとして紹介される。そして、第6・7章では、以上の結果に基づいて「うまいつきあい方のためのアドバイス」がなされる。(これは実験データに基づくだけに説得力がある。)最後の2つの章では、結論としてまとめがなされる他、種々の状況への応用が吟味されている。
 訳文も分かりやすく読みやすい。絶対のおススメである。                          (守 一雄)
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