第4巻第4号                    1991/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  あけましておめでとうございます。本年もどうぞDOHCをご愛読下さい。さて、昨年読んだ110冊の本のBEST1を紹介します。すでにベストセラーとしてマスコミにも取り上げられていますので、あえてミニコミ誌で紹介するまでもないのですが、それでもこの本をBEST1に推します。 (守 一雄)

【1990年の1冊】  

立花 隆・利根川進『精神と物質』 

分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 

文芸春秋、\1700 


  二人の共著となっているが、利根川進氏にインタビューをして、立花隆氏が書いたもの。テレビでみる立花氏のあの目付きとクチャクチャとした喋り方は好きになれないが、書かれたものはどれも素晴らしい。「利根川進さんというスゴイ人がスゴイ研究をしてノーベル賞をとった」ということはわかっても、その内容はわからない。研究者のハシクレとして、同じ知的興奮に接してみたいと思っても、どうせ難しくて理解できないのではないかと諦めていたのだが、「高等学校「生物」の入門コース程度の予備知識があればわかる程度に書いていくことにする。」という第1章の言葉を信じて読んでいったら、本当にそうだった。分子生物学の最先端と利根川氏の研究がよくわかった。ウレシイ。こんなに親切にわかりやすく書いてくれるんだったら、『精神と物質』なんてガチガチのいかにも難しそうな書名をつけないでくれればいいのに。                (守 一雄)
 筑波大学心理学系海保博之先生:立花隆・利根川進『精神と物質』がおもしろい。シェルダンの小説以来、久し振りに熱中して読んだ。内幕もの的なおもしろさ、話の構成・解説の妙、両者の知的な水準の高さ、利根川氏の庶民性と語り口の的確さ、そしてなにより、生命の根幹の研究の現状がわかるおもしろさなどなど、読者を引きつける仕掛に事かかない。研究者として耳の痛いことも、身につまされる話もある。また、本作りにも参考になる趣向が随所に見られる。(NEWSLETTER ON COGNIーTION & COMPUTER No.346 より無断転載)
 静岡大学教育学部村越真先生:ここでは、利根川の科学者としての素晴らしさもさることながら、それを余すところなく引出し、また味付けをして見事に展開してみせた立花の力を評価すべきだろう。もちろんここに書かれていることは利根川の主張であり業績なのだろうが、ふと、立花が利根川の口を借りているのではないかと思ってしまう。「基礎訓練に欠ける日本の大学院」や「時代の要求に応えない日本の大学」から「いかにして自分をコンヴィンスさせるか」「ノーボディからサムボディへ」など、日頃の研究活動への反省材料から、ヒントまで満載されているのも研究者としての自分には嬉しい。(氏の「読書日記」より無断転載)
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