第3巻第6号                    1990/3/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  エネルギー問題に関する本を読むと、八方塞がりの暗い話ばかりで、不安になるばかりなのですが、久しぶりに「明るい」光を見た気がしました。ここのところ我が家はコジェネの話でもちきりです。春だ。春だぞーっ。 (守 一雄)

【これは絶対面白い】  

エネルギー生協研究会『コジェネ電力革命』

(ダイヤモンド社、\1,300)


 「コジェネ」とは、Co-Generation(共発生)を略したもので、熱と電気を共に作り出し、両方を積極的に利用する発電形態を言う。電気を作り出すには、発電機を回してやる必要があるが、火力発電所や原子力発電所では水を沸騰させて、蒸気の力で発電機を回している。「火力」と「原子力」の差は、石油や石炭、天然ガスなどを燃やして水を沸騰させるか、核分裂の際に生じる熱で水を沸騰させるかの違いに過ぎない。つまり、これらの発電所では、電気エネルギーを作り出す前に、まず熱エネルギーを作りだしているのである。しかし、熱力学の法則からも、作りだした熱エネルギーのうちせいぜい40%程度が電気エネルギーに変換されるに過ぎない。そして、残りの60%は「廃熱」として捨てられている。(こうした発電所が都市のそばにあれば、こうした「廃熱」は、暖房や給湯に有効利用できるのだが、現実には発電所は都市から遠く、「お湯」をパイプで運ぼうとしても途中で冷めてしまって使えない。)なんとももったいない話である。 コジェネとは、この「廃熱」を捨てずに利用するということである。その結果、熱効率は80%を越え、単純に言ってコストは半減する。もちろん限りある貴重なエネルギーの節約につながる。こんな簡単なことに今までなぜ気づかなかったのか不思議なくらいである。
 「そうは言っても、そうウマクは行くものか」と思うかも知れないが、経済原理を優先する企業がこれを見逃すはずがなく、実は既に多くの工場やビルでコジェネが行なわれている。その結果、以前は電力需要の大半を占めていた産業用電力需要が、今では、全体の半分以下にまで下がってしまっているのだそうだ。
 今はまだ、家庭用の小さいコジェネ用発電機がないため、コジェネの活用は企業などの大口電力利用者に限られているが、現在の生協のような協同組合組織を作って、エネルギーの協同利用をすれば、家庭でもコジェネの恩恵を受けることは可能である。電気代は1/3になる。そして、最大の恩恵は、このようにして電力会社からの電力需要が減っていけば、早晩、電力会社は電力供給計画の見直しを迫られることになり、「原子力発電」から撤退せざるを得なくなるということである。
 この本は、コジェネが実際にどう使われているのか、電気料金はなぜ高いのか、どうすれば暮しにエネルギーを取り戻すことができるようになるか、などについて、エネルギー問題に関心を持つ「素人」の人たちが、1年余りにわたって研究してきた成果をまとめたものである。専門家でなくたって、やればできるんだという「勇気と希望」を与えてくれる本でもある。コジェネ万歳。(守 一雄)
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html化1996.5.18