第2巻第9号                    1989/6/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]



 青年心理学の授業中に、性役割テストを行なってみると、給与・勤務条件などで最も男女差別の小さい職種である義務教育教員をめざす学生たちがいまだに「伝統的な」性役割観を持っていることにビックリさせられます。
 ところが、家事・育児に積極的に関与し、「伝統的な」性役割観は時代遅れだと考えているその私(今のところ配偶者は専業主婦ですが)でさえ、驚かされる本があります。あなたも是非驚いてみて下さい。

【これは絶対面白い】  

上野千鶴子『女遊び』

(学陽書房 \1,400)


 勤務先の女子短大の教壇でいわゆるわいせつ用語を多用し、「学界の黒木香」を自認する女性社会学者のエッセイ集である。百余りのショートエッセイ・コラム・書評を、テーマごとにまとめてあるが、基本的にはどこから読んでも良い。 どこから読んでも、過激な主張にうならされるが、出だしのエッセイ「おまんこがいっぱい」でまず度肝を抜かれる。また、表紙をはじめ、本文中に散りばめられているアートは、女性器をデフォルメしたものなのだ。まさに、「おまんこがいっぱい」である。(こんな本をカバーもせずに通勤のバスの中で立ち読みするボクもずいぶんオトナになったものだ。)
 内容は、基本的にはフェミニズム(女性解放)運動に関する話題が取り上げられているが、女性の問題は男性の問題と関わらざるをえず、また、女性として(または男性として)どう生きるかという生き方の問題や、老後の問題など、結局は、人生すべてに関わる問題が取り上げられていることにもなる。そうした意味で、男性にとっても女性にとっても「こんな考え方もできるのか」と目を開かされるところの多い本であるが、特に、結婚前の男女には絶対のオススメである。
 さて、この本を読み終わってから、最近出た

鹿嶋敬『男と女:変わる力学--家庭・企業・社会--』

(岩波新書 \490)

を読んでみた(著者は日本経済新聞の婦人欄を長年担当してきたベテラン男性記者)が、内容は基本的に同じである。ただし、面白さの違いは値段の違い以上にある。この『男と女』を読むことにしたのも、『女遊び』を読んでいたからであり、最初に岩波新書の方を手にしていたら、読む気にならなかったかも知れない。やはり、1,400円出しても『女遊び』の方を読むことをお奨めする。根強い「伝統的な」性役割観をぶち壊すためには、これくらいスゴイ本じゃないとダメなのだ。        (守 一雄)
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html化1996.8.26