第2巻第3号                    1988/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]



 1988年もあと一月を残すだけとなりました。さて、年が明けるとすぐ卒業論文の締切です。そこで、今月号は「どう文章を書くか」に関する本を紹介した去年のDOHCを一部改訂して再録しました。  (守 一雄)

【論文の書き方・作文技術の本】  

***:ぜひ読むことを奬める、**:役に立つ、*:良書だが...


(a)木下是雄『理科系の作文技術』中公新書\560***
『理科系の』と銘打っているが、分かりやすい文を書くためには誰にでも役に立つことが満載されている。論文を書く前にぜひ読んでおくと良い。

(b)本多勝一『日本語の作文技術』朝日文庫\420***
多田道太郎の解説にあるとおり第1章から第4章までを読めば良い。(a)の第5章で取り上げられたことがこの本の第2章から第4章にみごとに説明されている。

(c)井上ひさし『自家製文章読本』新潮文庫\400***
(a)(b)のような職人技術を知った後でも、やはり作家はすごいと思わせる。卒論には直接役立たないかも知れないが、やはり必読。

(d)末武国弘『科学論文をどう書くか』講談社ブルーバックス\620**
論文を書くための技術よりも口頭発表の技術に多くのページが割かれている。授業の技術にも役立つ。

(e)清水幾太郎『論文の書き方』岩波新書\480**
古典的名著であるが、(a)(b)を読めば用が足りる。

(f)斉藤孝『学術論文の技法』日本エディタースクール出版部\1200*
主に文献研究による論文(いわゆる文科系の論文)を書く場合に参考になる。(a)(b)(c)に比べると鋭さに欠ける。

(g)板坂元『考える技術・書く技術』講談社現代新書\420**

(h)梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書\480*
古典的名著だがさすがに古い。それでも、カナタイプに関する章を、(i)西尾忠久『ワープロ書斎術』講談社現代新書\480**で置き換えれば、まだまだ読める。最近、(j)梅棹編『私の知的生産の技術』岩波新書\480**が出た。

【これは絶対面白い】  

橋本 治『桃尻語訳「枕草子」(上)』

河出書房新社\1200


 おなじみ『枕草子』を桃尻娘(現代娘)ことばに訳したもの。同世代でありながら、この橋本治という男はどうも好きになれず、この本が去年出版されたことは知っていたのだが、読む気にはなれないでいた。今年の秋から、この本を原作にしたテレビ番組がNHKで始まり、結構面白かったので原作を手にした次第である。もっとふざけたものかと思っていたが、読んでみると、「なるほど、これが本当の翻訳かも知れないな」と納得した。まだ上巻だけしか出版されていないが、初めて『枕草子』を楽しんで、読んだ。解説も分かりやすく、勉強にもなった。現代娘プラス平安時代という設定は、氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク』集英社文庫\340((3)まで出ている)とよく似ている。「枕草子は桃尻語で訳すべきだ」という主張や、翻訳の努力には、感服するが、話そのものは『なんて...』のほうが数段面白い。もっとも、これは橋本治のせいなのではなく、清少納言と氷室冴子の差であり、読者が現代男であることのためであろう。  (守 一雄)
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