第2巻第2号                    1988/11/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY


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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]



 先月読んだ本の中で面白かった2冊は、たまたまどちらも「論争」に関するものでした。1975年にE.O.ウィルソンという生物学者が『社会生物学』(思索社より5冊組で訳が出ている)という本を公刊して、動物だけでなく、人間の社会的行動も生物学的に説明できるという考えを提示しました。生理学の基礎に生化学、化学の基礎に物理学があるように、政治学・経済学・社会学などの社会科学の基礎として、社会生物学があるのだという主張や、文化的要因に比べ遺伝的要因を相対的に重視する主張が、ややセンセーショナルに取り上げられたこともあって、アメリカ・ヨーロッパでは論争を引き起こし、いまだに論争が続けられています。
 『社会生物学論争』という本は、こうした論争を踏まえた上で、あらためて「生物学が人間をどこまで説明できるか」論じたものです。原書は1981年に出たものですので、論争は現在もっと進んでいることとは思いますが、社会生物学論争の第1期を知るには十分ですし、よくまとめられています。訳文も丁寧で読みやすく、読むのが苦になりません。
 訳者も指摘していることですが、こんなにも大事なことが、日本では大した論争にもならず、いつのまにか生物学の主流になってしまっていることに大いなる不満を感じます。(私自身は、社会生物学的な見方が大好きですが...)。どうも日本では、まともな論争が行なわれにくいようです。学会に参加しても簡単な質疑応答があるだけで、論争になることはめったにないのです。
 そうした中で、次元は低いものの、論争になっているウレシイものに、「アグネス論争」があります。もとはと言えば、アグネス(本学非常勤講師)の単なるわがままに始まったことだけれど、論争のタネを提供したという点で、大殊勲でした。論争によって、今まで見えなかった視点が見えるようになり、理解が深まって行くのがよく判ります。もっともっといろいろなことについて、どんどん論争しようヨ。 (守 一雄)

【これは絶対面白い】  

G.ブロイアー『社会生物学論争』

(垂水雄二訳:どうぶつ社、\2,800)


「アグネス論争」を愉しむ会編『「アグネス論争」を読む』

(JICC出版局、\350)


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html化1996.8.27